最近のニュースを聞くと不思議な言葉がある。経済学者や証券や金融のプロが、最近のサブプライムローン問題などに関連して、これからの景気の予測に使う言葉である。いわく、「今後の景気回復は減速するでしょう」、あるいは、「戦後最長の景気回復は続かないでしょう」、などである。
「景気回復」とは何か。過去の常識から言えば不景気に対する「好景気」のことである。戦後最長の景気回復とは何か。戦後最も長く続いた好景気は「いざなぎ景気」である。これよりも長く続いた好景気のことを、戦後最長の景気回復と言っているのである。
なぜ素直に好景気と言わないのか。今から考えてみれば、戦後最長の好景気に突入した時期にも何年かの間、経済の専門家は、長引く不況といい続けた。判断を誤ったのである。好況なのに不況といい続けたのである。その結果、経済の専門家は好景気という言葉はタブーとなった。
そこで好景気を景気回復と置き換えたのである。これは日本陸軍が米軍に負けて退却するのを、転進とごまかしたのに似ている。日本軍のことを馬鹿にしたくせに、やっていることは同じである。景気回復という言葉は明らかにおかしいではないか。現状が悪いから回復というのである。
現在良い状態にある時に使う言葉ではない。健康回復と言えば、悪い状態を脱して普通の状態になることである。健康回復しても、それは普通の状態になるに過ぎない。かくまで経済人はおろかである。バブルがはじけたときも、好景気の維持の対策が必要といい続けた。
彼らは、今現在を振り返って、将来平成20年は不況であったと、将来いいかねないのである。戦後最長の好景気なら、いつ好景気がだめになってもおかしくはない。しかしそんな単純なことすら言わない。経済の専門家の景気予測があたったためしはない。あたることのない予測を平気で続けるのは、耐震偽装と同じで、故意にするインチキである。