A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【バンドブーム30周年】聴いてるだけじゃ我慢できない。『バンドやろうぜ!』特選グッズ

2014年11月18日 00時15分15秒 | 音楽ちょっといい話


『バンドブーム30周年』を来年に控え、当ブログ内限定でブレイク寸前の『バンド聴こうぜ!』キャンペーンだが、多数の読者が「聴くだけじゃなく、やってみたい!」という励ましのお便りを心の中で認(したた)めているものと想像する。
そこで、『バンド聴こうぜ!』キャンペーン番外編として『バンドやろうぜ!』実践編、これで貴女・貴方も即ヤレる<バンやろ特選グッズ>をご紹介しよう。

●ドラマー編

KORGの「CLIPHIT」があればどこでもドラムセット、トツツトツツズドドドドできるぞ





筋肉ピクッでドラムを鳴らせ! 歪みねぇガチムチシーケンサーが話題




●ギタリスト編

ギターを弾けばミクが歌う、KORGからギターエフェクター「MIKU STOMP」が呉越同舟すぎる





PikCARD JAPANから、オリジナルカードも製作可能な【ピックカード】が日本上陸!


●キーボード編

初音ミクのみっくみくカラーの電子ピアノ、ファミマから発売




●電子楽器篇

初音ミクの「あの楽器」ついに完成? VOCALOID搭載で弾いて歌える!




●パーカッション編

路上で超絶パーカッションを披露する“スプーンおじさん”がクールすぎる





歌や楽器は出来ないけど、バンドの近くにいたいアナタにおススメ
●応援編

バンドマンの彼氏のライブにお客さんを集めてあげよう バンドマン育成アプリ「私のバンドマン」


●実践編

生後9カ月にして既にロックスター? 1人5役の赤ちゃんバンドがかわいい




あれベース?
ねえベーシストは?
ねえねえねえ...(涙)

【参考】バンド内楽器別モテ度


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【えいたそ進化論】試論~でんぱ組.incに学ぶ『マキシマリズム(最大主義)』<現代キーワード解説>

2014年11月17日 00時25分30秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


【解説】マキシマリズム MAXIMALISM(最大主義)とは?
マキシマリズムとは、文学、美術、マルチメディアならびにグラフィック・デザイン、および音楽で、表現主義のような多目的・包括的な条件の下で、すべての要素を網羅することによる運動を説明するために使われる用語である。


【実証】加速するアイドル「でんぱ組.inc」直近の活動
2014年10月20日(月)
『でんぱジャック~World Wide Akihabara~』放映開始


2014年10月20日スタートしたでんぱ組初の地上波レギュラー番組。メンバーが、日本を代表するアニメ、マンガ、ゲーム、アイドル、コスプレ、フィギュア、同人誌などのオタクカルチャーを「秋葉原」から世界へと正しく発信する番組。「ヲタ芸博覧会(担当:最上・藤咲)」「メイド数珠繋ぎ(担当:相沢・夢眠)」「擬人化クイズ(担当:古川・他メンバー全員)」「妄想バーチャルデート(担当:各メンバー持ち回り)」「明日つかえるヲタク語講座(担当:夢眠・成瀬)」「でんぱ激アツ同人誌(担当:成瀬・藤咲)」「未鈴名人の”ゲーマーアイドル”への道!(担当:古川・最上・藤咲)」「お悩み相談室アキバの園(担当:最上・他メンバー全員)」といったコーナーが混在し、まさしくアキバストリートを歩くと目に飛び込んでくる刺激をテレビ番組化。余りの情報量の濃さに、深夜帯に有るまじき睡眠妨害・覚醒番組と絶賛中。
でんぱジャック~World Wide Akihabara~番組公式サイト
でんぱ組.inc au特命宣伝部長に就任!


2014年10月25日(土)
タイ・バンコク 日本カルチャーの祭典『Anime Idol Asia』出演

でんぱ組.inc、海外活動から原点まで――今の心境とは!?(Oricon Style)


2014年10月30日(木)
でんぱ組.inc『バリ3共和国』PV公開





2014年10月31日(金)
『でんぱ組.incの元気が出るボイス』ドワンゴジェイピーで配信開始



でんぱ組.inc が憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる!元気が出るボイスをドワンゴジェイピーで独占配信


2014年11月8日(土)
台北ファッションウィーク「PRO1.TRADE SHOW TAIPEI」出演

装苑ONLINE × でんぱ組.inc スペシャルインタビュー「アイドルにとってのファッション。衣装の力とは?」


2014年11月9日(日)
『ミュージックドラゴンLive2014in横浜アリーナ』出演



2014年11月12日(水)
でんぱ組.inc × gdgd妖精s『愛があるから!!』リリース


アニメ「gdgd妖精s」の劇場版主題歌。森に住む妖精たちの活躍を描くフルCGアニメ「gdgd妖精s」は、2011年からテレビで放送され、今年9月に劇場版アニメ「gdgd妖精sっていう映画はどうかな…?」が公開された。でんぱ組.incのメンバーはキャラクターとして劇中にも登場する。作詞と作曲を担当したのは、「gdgd妖精s」のキャラクターソングを手がける井上純一。編曲を、でんぱ組.incの多くの楽曲制作に携わっている玉屋2060%が手がけた。目まぐるしく曲が展開する、これまでのでんぱ組.incの楽曲を踏襲した仕上がりになっている。
『ファントム オブ キル』でんぱ組.incスペシャルインタビュー! コスプレ衣装もふたたび!


2014年11月14日(金)
『でんぱ組.incスペシャルライブ 東アジア文化都市2014横浜パートナー事業』開催


昨年冬から活動してきた広報親善大使としての締めとなるスペシャルライブ。管楽器/弦楽器のダブルカルテット+でんでんバンドによる分厚いサウンド、ゲストに迎えた二胡とクラシックギター、そして新曲「でんでんぱーりーナイト」お披露目。目眩がする程盛り込んだ萌えきゅんエキスは、港湾未来派大ホールを、色とりどり光の乱舞で染めた。


2014年11月14日(金)
でんぱ組.inc『でんぱーりーナイト』PV公開





【論考】現代社会に於けるマキシマリズム


元々マキシマリズムとは、1960年代のアメリカの美術・建築・音楽などの分野に登場し主流を占めた、形態や色彩を最小限度まで突き詰めようとする『最小限主義、ミニマリズム(英: minimalism)』の反対の概念だった。形態や色彩を最大限に吸収する訳だが、それをそのまま表現に活かそうとした90年代的折衷主義所謂ミクスチャー mixture は21世紀の訪れと共に崩壊した。流入する情報量と、外部へ表出する表現能力のエントロピーのバランスに歪みが生じ、思考・行動主体が耐え切れなくなった為である。量対量の鬩ぎあいは必ず限界に至ることが明らかになった今、現代文化に於ける最大主義(マキシマリズム)は、ロディオン・シチェドリンがギヤ・カンチェリを評した「マキシマリストの気質を備えた禁欲主義/控えめのヴェスヴィオ(ポンペイを滅ぼしたイタリアの火山)」へと向かうべきである。

特に音楽表現に於いては、米国コピュータ音楽の第一人者デイヴィッド・A・ジャッフェの言葉を引けば、「(マキシマリズムとは)異質性を包含し、すべての外部の影響を潜在的原料と看做す並置・衝突の複雑なシステムを可能にする」姿勢に他ならない。ニューヨーク・ブルックリンのハードコア・ジャズ新世代、例えば24歳の精鋭クリス・ピッツイオコス、ウィーゼル・ウォルター、ロン・アンダーソンによるCDアルバム『MAXIMALISM』は、最大限の情報を演奏主体それぞれ個体及び集合体の内的システムで咀嚼・止揚・昇華したうえで、最小限の音楽言語を用いて饒舌に語り合う、という一見矛盾したスタイルを採用することにより、90年代末に失速した「即興音楽 improvisation」という手法に無限の希望を与え、新しい生命を吹き込んだ。
【DiscReview】Chris Pitsiokos, Weasel Walter, Ron Anderson/MAXIMALISM

日本に於いては、21世紀最初のディケイドが過ぎた時点で音楽だけではなく社会全体を覆った「カオス(混沌)」の黒雲が、一昨年頃から目立ってきた新たなブラウン運動による離散集合を繰り返した結果、輝かしき「多様化の時代」が訪れた。今や多様性 variety を制することが、表現者の存在意義であり、やがて来るポストカオス新時代への魁(さきがけ)足りうる資質である。上記で俯瞰した通り、活動のスピードもさることながら、これ以上速くなれないと思われた「ちゅるりちゅるりら」を軽く凌駕する表現の速さと鋭さを備えた「バリ3共和国(リパブリック)」と「でんぱーりーナイト」の二つの新曲こそは、でんぱ組.incが日本カルチャー最先端の「マキシマリスト(最大主義者)」であることの証明である。そして正規シングルの陰に隠れて見過ごされがちな「愛があるから!!」に於いて、「愛(LOVE)」という人類永遠の命題に真正面から挑んだことは、でんぱ組が攻撃性だけではなく、大きな慈愛で人類を照らす神神であることを改めて明確にしたといえる。


【えいたそ進化論】試論


ここで想起すべきは、以前我々が何度も注意深く検証し思考能力の限りを尽くして導きだした『えいたそ文化論』の驚くべき結論との、完全なる一致である。即ち、「マキシマム」の称号を持つえいたそ☆成瀬瑛美こそ、現代日本の「マキシマリズム」の頂点であり、それはえいたそをアマテラス(天照大神)と断じる研究結果に準拠している。また太陽神=サン・ラの血を継ぐことも99.9%間違いないであろう。
【えいたそ文化論】最終章『えいたそ☆成瀬瑛美とは?』






さらに驚愕すべきは、えいたそがもうひとりの菩薩『千手観音』でもあることである。



千手観音(せんじゅかんのん)、梵名サハスラブジャ・アーリア・アヴァローキテーシュヴァラ(सहस्रभुजआर्यावलोकितेश्वर [sahasrabhuja ārya avalokitezvara])は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。「サハスラブジャ」とは文字通り「千の手」の意味である。千本の手は、どのような衆生をも漏らさず救済しようとする、観音の慈悲と力の広大さを表している。

無限の慈悲と優しさが、トキメキ界のカリスマえいたそのポジティヴメッセージに凝縮されてることは、万人の認めるところであろう。
「毎度の事ながら軽いのからグンと重いのまで諸々覚悟があるけど楽しませるねwelcomeいつでもどこでも絶対に笑っとくからねっていうのが今回濃く強く導け出せたアンサー系のひとつかな(*´∀`*)!」



一方で数多くの有名ロックバンドに在籍し「ドラムスティックを持った渡り鳥」として知られるドラマー故コージー・パウエルとの類似は、芸の多彩さとともに、土台を固める屋台骨としてのえいたその未知なる才能を示しているのかもしれない。





【ヲタク語講座応用編】 ぐうたそ:「ぐうの音も出ないほどのえいたそ」の略。でんぱ激アツ同人誌で見せる、文句なしの素のえいたそさんを指す言葉。

えいたそは
最大ばびゅん
トキメキ主義

えいたそ☆成瀬瑛美の口ギターソロが聴ける『愛があるから』は最新シングルにも拘らずパシフィコ横浜では披露されなかった。映画主題歌なのでPVも製作されていない模様。しかし、筆者が浪人時代に制作したインダストリアル音響に『愛があれば』という曲がある。せめてもの慰みに33年の時を隔てたシンクロニシティと言えるこの楽曲のでんぱ組コラボ動画を作成したのでご覧戴ければ幸いである。えいたそに口ギターをダビングして欲しいものである。



[11/17 13:33追加]
▼でんぱ組.inc(神神)と妄想デート!?






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【DiscReview】Chris Pitsiokos, Weasel Walter, Ron Anderson/MAXIMALISM ★★★★☆

2014年11月16日 00時44分30秒 | 素晴らしき変態音楽


Chris Pitsiokos, Weasel Walter, Ron Anderson / "MAXIMALISM"

text by Takeshi Goda
translated by Alex Murphy

Eleatic Recsords ELEA001 (2013)

Chris Pitsiokos (as, syn)
Weasel Walter (ds, perc)
Ron Anderson (g)

1 Untitled
2 Untitled
3 Untitled
4 Untitled
5 Untitled
6 Untitled
7 Untitled

Tracks 1,2, and 7 were recorded May 21, 2013 and mixed by Chris Pitsiokos

Tracks 3-6 are recordings made by Weasel Walter of a live performance at the Freedom Garden on January 19, 2013

All tracks mastered by Weasel Walter


HARDCORE JAZZ SHOOTING PLANETS APPEARED FROM RE-ACTIVATED NEW YORK IMPROVISATION SCENE

I feel I should make a confession right off the bat. Your author is a ‘jazz drop-out’. In my first year of university I enrolled in Jazz studies (under the institutional heading of ‘light music’ in Japan), but quickly resigned, generally disgusted with the jock-mentality of the scene, in which any mention of free jazz was invariably preceded by a sermon on Charlie Parker, or else turned into a cheap punchline at a party.

From then on, I kept up with the sax as I saw fit, without any regard for jazz theory. I was more interested in finding a release for those hard-to-reach feelings, the ones coiled up in the recesses of the mind. Even now, having since retired from performing, I am still captivated by any performance that eschews flattery and praise and instead drives relentlessly forward in pursuit of a unique, personal voice. The musicians and expressionists that I like are, all of them, self-reliant.

I ‘discovered’ this album by searching videos on Youtube related to bespectacled female guitarist Mary Halvorson and twisted drummer Kevin Shea, whose album “People” I reviewed in the last issue. And by the standard of New York’s cutting-edge artists, this is a work of self-reliance of the highest order.

Drummer Weasel Walter runs the independent label ‘ugEXPLODE,’ and has been a central fixture in the New York improvisation scene as of late. Multi-instrumentalist Ron Anderson has been an active member of the avant-garde music scene since the 1980s, and most recently, the leader of the avant-rock band PAK, with a recent release on John Zorn’s Tzadik label.

However, the unmistakable protagonist of the album is the young saxophonist Chris Pitsiokos, who holds his own in front of two veterans of the avant-garde. Chris, who was born in New York in 1990 and studied at Columbia under George Lewis and Arthur Kampela, relocated to Brooklyn in 2012 and launched headlong into his career as a performer. In 2012, his duo LP with Weasel Walter ‘Unplanned Obsolescence’ was released as a limited run of 100 pressings for ugEXPLODE. In turn, ‘Maximalism’ became the inaugural release for his own ‘Eleatic Records’ in 2013.

The 7 tracks offered here are all one-off, improvised performances recorded live in Brooklyn in January and May, 2013. Razor-sharp sax, guitar, and drums are entwined in a 3-way bout, and from the opening until the lengthy, 20-minute ending, the performance hurdles brilliantly forward without so much as taking a breath.

The sax’s breathless, rapid-fire tonguing, jackhammer barrage of the drums, and angular guitar noise offer, with each wave of attack, a consistently thrilling stimulus. This is that sensation of awakening that triggers the secretion of dopamine in the brain, activates the nerve synapses, and makes the pupils dilate; this is more exciting music than any I’ve experienced since the turn of the 21st century. The sheer intensity notwithstanding, abrupt moments of silence and stillness are dutifully exploited, preventing interest from flagging. Throughout the recording, the strange electronic sound of Chris’ synthesizer brings new dimensions of sonic experience to the otherwise entirely acoustic performance.

Upon first listen, what jumped immediately to mind was the Evan Parker/Derek Bailey/Hal Bennink 1970 INCUS label release ‘The Topography of the Lungs.’ It being one of the foundational works in the birth of the European improvisation scene and also one of my absolutely favorite records, it also features the same instrumentation, which would naturally explain my association. And yet, ‘Maximalism,’ (J. Saidai Shugi), in the terms of its sheer density, is overwhelmingly different from the stripped-bare approach of its 43-year old predecessor; The robust musical elements that saturate their pristine audio channels make this an unmistakable work of radical 21st century music.

As long as one lives in modern society, some things cannot be avoided. Take, for example, the enormous traffic of information on the internet. Rather than casting it aside, one is forced to take it in wholesale, internalize it, and find expression in its release. Is this not essentially the case for artists in the 21st century? Like competing Twitter trends, expressions are engaged in constant struggle as the three parties vy to overtake one another; this combative, clashing rapport seems to be the ideal form for the modern improvisers who have turned their attention toward ‘maximalism.’

Chris Pitsiokos’ next release is a duo album with Philip White, an electronic musician known for his noise performances featuring self-made electronics. At only 24 years old, his trajectory toward self-reliance has recently found him moving toward the possibilities of noise. A video of his performance in May of this year at the Brooklyn noise/experimental ‘Ende Tymes’ festival can affirm this.



Artists like Mary Halvorson, Kevin Shea, Weasel Walter, as well as Chris Pitsiokos, who has seems to have appeared like a new planet, are only a few of a wealth of independent musicians currently putting out experimental, path-breaking music in New York. It is not without hesitation that this ‘dropout’ author attempts to label any of this ‘jazz;’ rather, in that it has certainly inherited the spirit of the traditional underground, avant-garde, and extreme music of New York, one might dare to call it ‘Hardcore Jazz.’ Still, in the humble words of this ‘dropout’ author, I might offer forth a category more akin to something like ‘No Jazz.’ In other words, I would submit that what we are seeing in New York right now may be something similar to the radical New York rock scene of the late 70s that Brian Eno cut to wax on the 1978 ‘No New York’ compilation.




活性化するニューヨーク即興シーンから登場したハードコア・ジャズ遊星群

今更ながら告白したい。筆者はジャズの落ちこぼれ(DROP OUT)である。大学入学と同時にジャズ研(軽音研)に入ったが、フリージャズ云々口にする前にチャーリー・パーカーを聴けと説教され、さらに飲み会で一発芸を強要される体育会気質に嫌気がさして早々に退部した。

それ以来、ジャズ理論など関係なく、我流で好き勝手にサックスを吹き続けた。心の中に蟠(わだかま)る出口のない感情を解放したかったのだ。演奏を辞めた今も、他人に迎合せずに自分自身の音を容赦なく突きつける演奏に心を惹かれる。筆者が好きな音楽家・表現者は皆、独立独歩である。

本作は前号でレビューした「PEOPLE」のメガネ女子ギタリスト、Mary Halvorson(メアリー・ハルヴァーソン)と変態ドラマー、Kevin Shea(ケヴィン・シェア)の関連動画をYouTubeでググっていて「発見」した、ニューヨークの最先端アーティストによる最高に独立独歩な作品である。

ドラマーのWeasel Walter(ウィーゼル・ウォルター)は、自主レーベル「ugEXPLODE」を主宰する、現代ニューヨーク即興シーンの中心的存在。Ron Anderson(ロン・アンダーソン)は80年代から前衛音楽シーンで活躍するマルチ弦楽器奏者で、ジョン・ゾーンのTzadikからCDをリリースしたアヴァン・ロック・バンド「PAK」のリーダーでもある。

しかし本作の主人公は、この前衛音楽のベテランふたりと真っ向から対峙する若きサックス奏者Chris Pitsiokos(クリス・ピッツイオコス)に違いない。1990年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学でジョージ・ラッセルとアーサー・カンペラに師事したクリスは、2012年にブルックリンに移り本格的に演奏活動を始めた。2012年にウィーゼル・ウォルターとのデュオLP『Unplanned Obsolescence』をugEXPLODEから100枚限定でリリース。続いて2013年に自己のレーベル「Eleatic Records」の第一弾としてリリースしたのが本作である。

収められた7つのトラックはすべて一発勝負の即興演奏。2013年1月と5月にブルックリンのライヴハウスで録音された。切れ味鋭いサックス、ギター、ドラムが三つ巴で絡み合うオープニングから、20分に亘る長尺のエンディングまで、息つく間を与えない鮮烈な演奏が繰り広げられる。サックスのノンブレス奏法による高速タンギングと、地面を掘るドリルのようなドラムの連打、鋭角的なギター・ノイズの波状攻撃は、途切れることなくスリリングな刺激を与えてくれる。脳内にドーパミンが分泌され、神経シナプスが活性化し、瞳孔が開きっ放しになるような覚醒感は、21世紀に入って以来筆者が体験したどんな音楽よりもエキサイティング。激しさだけではなく、隙間を活かした静寂の瞬間(とき)も訪れるので飽きることがない。随所でクリスが弾くシンセサイザーのストレンジな電子音が、単なるアコースティック演奏に留まらない新感覚の聴取体験をもたらす。

一聴して最初に頭に浮かんだのは、INCUSレーベルの第一弾、Evan Parker / Derek Bailey / Han Bennink『The Topography Of The Lungs』(70)だった。ヨーロッパ即興音楽の誕生を告げたこの記念碑的作品は、筆者が即興音楽で最も好きな作品のひとつであり、楽器編成も同じなので、想起されて当然であろう。しかし、『Maximalism(最大主義)』と題された本作は、無駄を削ぎ落として演奏行為の骨格を露にした43年前の作品とは、含有する情報量に圧倒的な違いがある。キレキレの音像に滲み出る芳醇な音楽要素が、本作を紛れもなく21世紀音楽の先鋭足らしめている。

現代社会に生きる限り避けて通れない、例えばインターネットを往来する膨大な情報を、捨て去るのではなく、逆に最大限に取り込み、自らの血肉と化して放出=表現する。それこそが、21世紀の芸術家・表現者の在り方ではなかろうか。Twitterのトレンドのように、次々表情が入れ替わる三者の丁々発止の交感には、最大主義を標榜する現代の即興者の理想形を見る思いがする。

クリス・ピッツイオコスの次作は自作機器による電子雑音演奏で知られるエレクトロニクス奏者、Philip White(フィリップ・ホワイト)とのデュオ・アルバム。若干24歳で歩み始めた独立独歩の道は、今度はノイズに限りなく接近していく。その一端は今年5月ブルックリンで開催されたノイズ/実験音楽フェスティバル「Ende Tyme Festival」でのライヴ動画で確認できる。

メアリー・ハルヴァーソン、ケヴィン・シェア、ウィーゼル・ウォルター、そして遊星の如く現れたクリス・ピッツイオコスを始め、多数の個性的な演奏家が実験的・画期的な音楽を産み出す現代ニューヨーク。この状況を「ジャズ」と呼ぶことには、落ちこぼれの筆者としては抵抗がない訳ではないが、伝統的な地下(Underground)・前衛(Avantgarde)・極端(Extreme Music)音楽の精神を確実に受け継ぐ現代ニューヨーク・シーンを敢て「ハードコア・ジャズ(Hardcore Jazz)」と呼んでみたい。ただし、落ちこぼれの筆者の言葉だから、たぶんに「非ジャズ(No Jazz)」的な意味合いがある旨ご留意いただきたい。つまり、70年代末のニューヨークの先鋭ロック・シーンを切り取ったブライアン・イーノのプロデュースによる名コンピレーション・アルバム『No New York』(78)に似た状況が、今のニューヨークにあると言いいたい訳である。(剛田武)

Related Links
Chris Pitsiokos website
Downtown Music Gallery(Online Shop)

マキシマム
エキセントリック
イエロー太陽


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ケイス・ブルーム+工藤礼子+工藤冬里@渋谷WWW 2014.11.11(tue)

2014年11月15日 02時23分20秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


Sound Live Tokyo 
ケイス・ブルーム + 工藤礼子

出演:ケイス・ブルーム/工藤礼子/工藤冬里

歌を作って歌うことは人間に本来的に備わった能力

シンガー/ソングライターという活動形態は、シンプルですが、それだけにあらゆる人間的、社会的、自然的広がりと同じだけの広がりを持ち、たった一つの歌でその全てが露呈する恐るべきジャンルです。

「誰でも歌を作って歌うことができる」、かつ「誰もが歌を作って歌うことができるわけではない」と言うと矛盾して聞こえますが、今回が初来日になる伝説的シンガー/ソングライター、ケイス・ブルームと工藤礼子の歌を聴けばこの矛盾は矛盾でなくなり、必然性として、歓びのうちに感得されることでしょう。



『Sound Live Tokyo』(以下SLT)二番目の公演。ケイス・ブルームの名前は聞いたことはなかったが、工藤礼子と共演するなら間違いないとの確信があった。また、渋谷WWWは筆者にとって、個性的な女子アーティストとの出会いの場という印象がある。最初にWWWで観たのは灰野敬二と対バンした石橋英子(2011年4月24日)。ドラマーとして知っていた石橋のヴォーカルを初めて聴いた。Phew(高橋悠治と共演 2011年5月28日)、ジョセフィン・フィスター(2013年4月23日)、青葉市子(GEZANイベント 2013年8月20日)などここで観た女子の面影が甦る。だから、ケイス・ブルームという未知の女性シンガーへの期待にWKTK(ワクテカ)気分でスペイン坂の石段を駆け上がった。
マイケル・スノウ+恩田晃+アラン・リクト@渋谷WWW 2014.11.5(wed)& 6(thu)

●工藤礼子+工藤冬里

Photo: Hideto Maezawa

工藤冬里&大村礼子のユニットNOISEによる『天皇』(1981)というLPは、80年代初頭の地下音楽カオスに於いて、ユニット名やタイトルとは裏腹に、一点の曇りもない清浄なヴァージニティ(純血性)を発散していた。エンゼル(綴りはEngel)レコードというレーベル名は、天使というよりチョコボールのエンゼルマークを想起させた。その後、工藤冬里はソロもしくはマヘル・シャラル・ハシュ・バズなどの不定形ユニットで活動。大村礼子と結婚し、ニューヨークやイギリスでの生活を経て、現在も全く変わらず不定形且つ不可知な表現活動を続ける。陶芸家としても活動。SLTには昨年マヘル・シャラル・ハシュ・バズで参加した。
倉地久美夫/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ@東京キネマ倶楽部 2013.10.4(fri)


Photo: Hideto Maezawa

工藤礼子は年に数回マヘル・シャラル・ハシュ・バズに参加したり、吉祥寺マイナー所縁のアーティストと共演したりしつつ、ソロ名義で数枚のアルバムをリリースしている。いずれも冬里のピアノとギターを中心にした最小限のバッキングで、子供が気紛れに綴ったような無垢な詩をエンゼルヴォイスで歌う、心の中の最も繊細な場所に飾っておきたい小品集である。二人のデュオ演奏は、10年前に新宿ゴールデン街のバー「裏窓」の10人だけのプライベートな空間で観たきりだが、目を離すと消えてしまう泡(あぶく)のような存在感が印象に残っている。


Photo: Hideto Maezawa

ダークなロングドレスの礼子は、居心地悪そうにステージに立ち、ピアノの冬里と目配せで意思を通じあっている。ポロポロ零れるようなピアノの音の隙間を抜けて歌われる歌は、子供の頃にいつも夢見たエンゼルの歌声。WWWの暗いステージが、昭和40年代の小学校の講堂に思えてくる。一曲終わるごとにピアノの後ろで隠れるように水を飲む自信なさげな佇まいと、凛としてしなやかな歌声は、一見ミスマッチのようだが、礼子にとっては極々自然である。冬里のピアノは、伴奏であり自己主張であり気紛れであり強烈である。昨年のマヘルに感じた不可解さは、意図したものでは無く、礼子同様自然体のなせる業であった。最後の曲でケイス・ブルームが影のように現れリコーダーを吹いたのも余りに自然だった。



工藤礼子 Setlist
1. Fair and deep sea
2. しらさぎ
3. くも
4. やまばと
5. 爆報フライデー
6. This is my song
7. NGC3603
8. ひとりで夕日を


●ケイス・ブルーム

Photo: Hideto Maezawa

フォークに限らず、アメリカという広大な国には無数の「伝説的」で「幻」のアーティストが存在するのは事実。そんな中で20年以上経ってから「発見」され、「復活」が報じられることは、宝くじに当たるような幸運と言える。しかし彼らは決して墓場から蘇ったわけではない。生活者として生を営みつつ、表現・演奏活動も途切れることなく続けてきたのだ。その事実が彼らの生活圏を超えて報じられることがなかっただけである。だから「再発見」され「復活」したアーティストの演奏を聴いて「昔と変わっていない」「現役時代を髣髴させる」などと評価するのはお門違いであろう。


Photo: Hideto Maezawa

ケイス・ブルームもまさに生涯現役シンガーである。70~80年代前半に入手困難なレコードを数作発表したのち、コネチカット州の片田舎で演奏・教育者として音楽活動を続けてきた。公式サイトには「CLASSES(教室)」というページがあり、0~5歳児を対象とした音楽教室の案内が載っている。長年子育てや馬の養育に従事してきたから、ケイスの歌詞は身の回りの出来事への愛情に溢れた視点で描かれる。子供たちが飽きないようにと、明るい旋律と言葉遊びが散りばめられた歌は、時に豊富過ぎる抑揚が一風変わって聴こえるかもしれないが、「アシッドフォーク」より「子供の歌」と呼ぶほうが相応しい天真爛漫さに貫かれている。後半工藤冬里をスライドギターに、礼子をコーラスに迎えた演奏中に、何度も「Let's Sing Along(一緒に歌いましょう)」と呼びかけたことは、みんなで歌うことこそケイス・ブルームが目指す音楽の地平への道筋であることに他ならない。
「歌を作って歌うことは人間に本来的に備わった能力」
「カオティックで有害でもあり得る感情の痛みを、創造的なエネルギーに転化することで、子供や大人の人生は変容する」

Kath Bloom公式サイト



ケイス・ブルーム Setlist
1. Bubble Bath
2. Terror
3. Let The Music Come
4. Another Point Of View
5. Found Love
6. Oblivion
7. The Things That I Do To Forget About You
8. At Last
9. I Wanna Love You
10. Deeper Shadows
11. I'm Getting Close To You
12. Pass Through
アンコール1. Finally
アンコール2. Fall Again

満場の観客が受け取ったポジティヴなエナジーは、ケイス×礼子×冬里三人の心の交差点から発信された「骨の中に閉じ込められた燃える火」(エレミヤ書20:9)だったに違いない。



人類が
笑った時に
歌う歌




<SOUND LIVE TOKYO ライヴ・スケジュール>
SLT公式サイト
Photo by:Miro Kristel

11月17日 (月) 渋谷WWW
『裁かるゝジャンヌ』 ローレン・コナーズ + 灰野敬二

11月23日 (日) 六本木SUperDeluxe
東京都初耳区 (ライブ・パフォーマンス) ゲストアーティスト:MERZBOW×中村達也/MURASAKI

12月2日 (火),3日 (水),4日 (木) 六本木SuperDeluxe
東京都初耳区 (サウンド・インスタレーション)

12月27日 (土), 28日 (日) 六本木SuperDeluxe
Antigone Dead People/Small Wooden Shoe + dracom
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【バンドブーム30周年】『バンド聴こうぜ!』企画書・後編~マジ素晴らしい自画自賛企画満載!

2014年11月13日 00時33分21秒 | 妄想狂の独り言
だいじょうぶ。
みんながいるし仲間だもん
よっしゃ、
バンド、聴っくぞーーーっ!




『バンド聴こうぜ!』企画 
後編


展開コンセプト
80年代バンドブームのオリジネーターと現代の若手ロックバンド両者のロック魂のぶつかり合いにより、バンドって素晴らしい!という憧れを伝播する。ロック以上に若者が好む「お笑い」と「マンガ」とのリンクを図ることで、幅広いファン層にアピールする。
【バンドブーム30周年】盛上げ企画『バンド聴こうぜ!』企画書(前編)

企画内容
① 80年代バンドのカタログ再発
単なる再発ではなく、人気コミックとのタイアップにより、実在のバンドをマンガに登場させ、同時にCD/配信で発売する。マンガの数だけ企画が可能。もしくは各マンガに2~3バンド登場させる手もあり。

  

   


② 最新J-ROCKバンドによるカヴァー集
監修:やついちろう/エレキコミック(Yatusi Festival)、ダイノジ(Dainoji Rock Fes、エアギター世界チャンピオン)、カンニング竹山(竹山ロックンロール)
「ロック」でググると出てくる人気芸人の監修により、バンドとお笑いの接点を明らかにし、多くの若者に刺さる魅力的な作品に。それぞれの主催イベント・番組とのタイアップにも期待。


ありきたりなカヴァー集はこちらでチェック⇒タワーレコードオンラインがオススメする邦楽トリビュート


③ 谷口宗一(BAKU)の復活! 


バンドブームのあだ花にして象徴的存在『BAKU』のフロントマン谷口宗一が奇跡の復活。元メンバーの車谷浩司(ギター、現Laika Came Back)、加藤英幸 (ドラムス)とのコラボによるBAKUのヒット曲のセルフ・カヴァーを含む新作リリース。さらに90年代共演し、日本武道館公演を成功させたアイルランドのロックバンドPOWER OF DREAMSとの再会ライヴを実現する。(アイルランドではPOWER OF DREAMS復活企画を同時展開)




④ 伝説のバンド「ピンボール」の真実を探れ! 


1986年ポプコン優勝、バンドブーム界屈指の名曲『失恋ダイナマイト』でデビュー。原宿のライヴハウスで1週間連続ショーケースライヴを行い、地方ラジオ局でNo.1ヒットしたが、不遇のうちにフェイウドアウトした幻のバンド「ピンボール」の真実と今を探る企画。まずはメンバーを捜し出すことからスタートして、2015年内に再結成、大晦日に30周年年越しライヴ開催を目指す。




⑤ きゃりーぱみゅぱみゅとバンドやろうぜ!


代々木第一体育館ツアーファイナルのアンコールのMCは以下の通り:

「なぜ泣いているかというと、本当に本当に感動しました。18歳でデビューして3年、ソロのアーティストは不利で、一人で代々木(第一体育館)を2days埋められるのかすごく不安だった。嫌なことが続いていました。芸能界ってこんなに大変なんだって思った。外を歩くだけでプライベートのこと言われたりして、汚い世界だなと思った。辞めたいなと思ったりもしていたんですけど、これからも夢あるファンタジーを作り続けていきたいと思います」

スポーツ紙をはじめ殆どのメディアが後半の芸能界についての発言をゴシップに関連づけて報じたが、問題の本質が前半の「ソロは不利」「一人で不安」という発言にあることを見逃している、もしくは不当に無視している。つまり「嫌だな、辞めたいな」と思った時に、心から相談できる仲間がいなかったことが彼女の真の悩みなのである。たとえ家族やプロデューサーやスタッフがいるとしても、彼らは「きゃりーぱみゅぱみゅ」という表現者と同じではない。きゃりーに必要なのは「パフォーマー(表現主体)」として一体となれる『仲間』に違いない。冒頭のえいたそ☆成瀬瑛美の発言「だいじょうぶ。みんながいるし仲間だもん!」こそ、きゃりーのお悩み解決法に他ならない。そして非アイドル宣言したきゃりーにとっては、バンドをやることが『仲間」を得るベストな方法なのである。バンドならどんなスキャンダルやゴシップにも怯むことなく、心を割って話し合い頼り合うことが出来るのだから。



バンド名は「おっしゃLet's 世界征服ズ」で如何だろうか。今流行の長くて変なバンド名(例:ゲスの極み乙女。それでも世界が続くなら、忘れらんねえよ、コンテンポラリーな生活)にも即していていいだろう。

この企画
絶対当たる
気がするな

ギョーカイ関係者のパクリ歓迎!てかマジで「バンドブーム30周年」を音楽業界全体で盛上げませんか?

▼キャンペーンソングはこれをキボンヌ。



▼キャンペーンソングB面はこちらでヨロ



[11/13 12:30追記]
【特報】タイミングよく単体企画がスタート!THE BLUE HEARTS結成30周年プロジェクト始動
THE BLUE HEARTS 30周年 特設サイト
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【Disc Review】変態音楽今月の1枚~フランク・ロウ・カルテット『アウト・ラウド』

2014年11月12日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


『Frank Lowe Quartet / OUT LOUD』

(LP)Triple Point Records TPR 209 (2014)

Frank Lowe (ts,ss,fl,vo,perc,hca,etc.)
Joseph Bowie (tb,congas)
William Parker (b)
Steve Reid (ds)
Ahmed Abdullah(tp)on D1

Side A
1. untitled 1 [11:13]
2. Vivid Description [8:04]

Side B
1. Listen [2:33]
2. untitled 2 [12:25]
3. Logical Extensions [0:41]

Side C
1. Whew! [23:18]

Side D
1. untitled 3 [23:53]
2. closing announcement [1:00]

all compositions by Frank Lowe

LP I (Side A & B)
Recorded at Survival Studio
77 Greene Street, NYC
May 1, 1974
recording engineer-Rashied Ali

LP II (Side C & D)
Recorded at Studio Rivbea
24 Bond Street, NYC
exact date unknown, probably 1974
recording engineer-Scott Trusty



フリー・ジャズの闘士が残した渾身の未発表音源集。

メンフィスに生まれ、サンフランシスコで音楽を学んだテナー・サックス奏者フランク・ロウは、60年代半ばに「ニュー・シング」の嵐吹き荒れるニューヨークに飛び込んだ。アリス・コルトレーンのアルバムに参加し、ジョン・コルトレーン・バンドの最後のドラマー、ラシッド・アリとのデュオ作をリリースしたりしたので、ポスト・コルトレーン派の道を行く可能性もあったのかもしれない。しかし、王道を行かず、激烈なフリー・ジャズ戦線に飛び込んだ背景には、66-68年に太陽神、サン・ラと共に活動した体験があるのかもしれない。それがシカゴのアフリカ系アメリカ人音楽家による自助組織「AACM」から生まれたアート・アンサンブル・オブ・シカゴのメンバーであるジョセフ・ジャーマンとレス ター・ボウイ、レスターの弟ジョセフ・ボウイら、従来のジャズから逸脱する個性派ミュージシャンとの共闘に繋がったに違いない。

73年にジョセフ・ジャーマンを交えた『Black Beings』(ESP)でリーダー作デビューしたロウは、74年にニューヨークで新たなカルテットを結成した。メンバーは新進気鋭のベーシストで、チャールズ・タイラー、セシル・テイラーなどとプレイしていたウィリアム・パーカー、モータウンのセッション・ドラマーだったスティーヴ・リード(ds)、そしてジョセフ・ボウイ(tb)だった。ジョセフ・ボウイは当時セント・ルイスのBAG「The Black Artists Group」(チャールズ・ボボ・ショウが設立した、シカゴのAACMに匹敵する非営利の音楽団体。ジュリアス・ヘンフィル、オリヴァー・レイク、ハミット・ブルーイット、ルーサー・トーマスなどロフト・ジャズの立役者が多数参加)のメンバーだった。このユニークなカルテットの貴重な録音が存在することは、フランク・ロウにごく近い関係者の間だけで知られていた。レコーディングから40年経って、この知られざるカルテットの全貌が明らかにされた。

処女リーダー作『Black Beings』はESPレーベルらしいざらついた音で、泣き叫ぶように激しいフリークトーンに満ちたドキュメントだったが、ジョセフ・ボウイが参加した2nd『Fresh』(75)と3rd『The Flam』 (76)では、叫喚地獄から抜け出そうとする思索的なフレージングが目立つようになった。その間を埋める本作に於いては、しゃくり上げるようなフリーキーなプレイと、フルートやハーモニカ、さらに声を使ってのエスニック・サウンドの実験的試みを交えながら、ボウイのトロンボーンと共鳴して、アフリカン・アメリカンの誇りを歌い上げる説得力のあるブロウを響かせる。



1974年5月にラシッド・アリのスタジオSurvival Studioで録音されたLP I(Side A,B)は、パーカーのランニング・ベースが先導するタイトルのないハード・バップ・ナンバー(A1)でスタートする。冒頭で「テイク1」の声が聞こえるので、セッション全体の最初のテイクなのかもしれない。ここで聴かれるロウのテナーは、コルトレーン風の速いパッセージをメインに、時折怒涛のフリークトーンに変貌するESP時代を継承するプレイ。比較的ストレートアヘッドなボウイのトロンボーンとの相性は悪くない。A2「Vivid Description」は短いテーマから、四者入り乱れてのカオスなプレイが吹き荒れる「ジャズの十月革命」の香りが濃いナンバー。B1「Listen」は一転してロウのバラフォン(アフリカの木琴)やホイッスル、そして声によるエスニックな小品。そのアフリカ風味はタイトルのないB2に続く。一定のメロディーをリピートするベースの上に、ランダムなパーカッションとヴォイス、トロンボーンとソプラノ・サックスが交錯する世界は、あらゆる事象に霊魂があるとするアミニズム思想を感じさせ、灼熱の密林から幻想の世界へ迷い込むようなサイケデリックな音響である。ミニマルな酩酊感は、ロウの後の作品では余り見られない、このカルテットだけの特徴と言えよう。試行錯誤中のテーマの短い繰り返しB3で、Survival Studioセッションは幕を閉じる。

LP II(Side C,D)はStudio Rivbeaでのセッション。録音日付は不明だが、演奏を聴く限りでは、Survival Studioセッションよりも後の録音と判断してよかろう。試行錯誤を交えた5月のレコーディングに比べ、メンバー間の呼吸が格段にスムーズになっている。Side C「Whew!」は、リズム・セクションのトライバルなビートに乗ってテナーとトロンボーンが自由に泳ぎ回る、後の作品『Fresh』や『The Flam』に通じる演奏。流麗なブルーノート・スケールと号泣フリークトーンの間を行き来するロウのプレイはとにかくスリリング。ソプラノ・サックスと弓弾きベースが摩擦するように軋む後半も聴きどころ。同じく23分に亘る無題のD1は、LP IのB2を発展させたアミニズム感溢れる演奏。リズムはより複雑に絡み合い、ジャングルで正体不明の動物の鳴き声が呼び合うように繰り広げられるインタープレイは、時に熱を帯び、時に沈黙に回帰し、精神世界への旅路を誘発する。このトラックのみアーメッド・アブダラがトランペットで参加している。最後に拍手とロウによるメンバー紹介と翌日の夜10時に同じステージに立つとのアナウンスがあり、これがライヴ録音であることが明らかになる。

特典として74年Studio Rivbeaにおける40分のライヴ映像へのリンクコードが封入されている。当時としては良質な画質で、ロウがサックス以外にもハーモニカやパーカッションやヴォイスを用いて意欲的に新たなサウンドに取り組む様子が窺える。



フランク・ロウは1943年生まれ。同世代にファラオ・サンダース(1940年生)、ロスコー・ミッチェル(1940)、アーサー・ブライス(1940)、レスター・ボウイ(1941)、ペーター・ブロッツマン(1941)、アンソニー・ブラクストン(1944)、エヴァン・パーカー(1944)などがいる。いわばフリー・ジャズ熱血世代と呼べるが、フランク・ロウの知名度・評価が他に比べいまひとつ低い事実は否定出来ない。限定リリースとはいえ、本作に収められた進歩的な感性と意欲的な実験精神が明らかにされた今こそ、2003年に没するまでジャズ史の裏街道を歩んだこの不屈のアヴァンギャリストへの評価をアップデートする必要があるだろう。(2014年10月17日記)



500枚
限定だから
入手困難
ざんねーん





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きゃりーぱみゅぱみゅ@国立代々木第一体育館 2014.11.9(sun)

2014年11月11日 01時13分49秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


ピカピカふぁんたじんツアー
「きゃりーぱみゅぱみゅのからふるぱにっくTOY BOX」



ピカピカふぁんたじんツアーファイナル。来年2月の『でんぱ組.inc~でんぱーりーないとdeパーリー~代々木第一体育館2DAYS』の下見も兼ねてなんて不届きな下心もあったが、きゃりーの強(したた)かさは遥か上を行っていた。アリーナ前方を花道で堤防で隔離する戦略。閉込められた諫早湾のムツゴロウのように、干潟でパクパクすることはなかったが、堤防の外周からでは、Aブロックの模様は想像するしかない。

   

   

関東近郊で参戦したホールツアー程ではないが、子供連れの数は通常のJ-POPコンサートとは比較にならない。男女比は若干男子の勝ちのようだが、アイドル現場の噎せ返るヲタ臭の芳香は皆無に近く、寧ろ洋楽ライヴに近い憧れオーラが同時多発中。それはステージも同じで、開演前の着ぐるみの寸劇に始まり、ショーの細部に亘って、一瞬でも目を離すと、決定的チャンスを見逃してしまうに違いない、大量の情報バイパスに、五感が常に刺激され続ける。





初心に還ると以前から明言していたが、きゃりー本人の口から「ポップでサイケデリックでグロテスク」がテーマだと宣言された瞬間、自らのサイケデリック体験(名も知らぬ叔母との栗並木での落ち葉拾い、海水浴場で道も判らぬままの疾走、雨の日のひとつ傘の寄り添う影、品川のホテルでのブロッサム・トウズ・トリップなど)が走馬灯のように駆け巡り、最終的にYouTubeで観た「PONPONPON」に眩惑されて一目惚れした3年前の自分自身を深く追体験することとなった。





二番目のカラフルなぽんぽんがたくさん付いた衣装にピーター・ゲイブリエルの在りし日の姿を重ねてしまう癖がぶり返し、今回のきゃりーのおっしゃLet's Go Back To The Rootsは観客全員(幼い子供は除く)の心の奥の隠された生暖かい部分へのインナートリップ(内観旅程)を促すだろうとの予測を見事に的中の罠に絡めとった。







その直後に何の予告もなく衆人環視の中で、恥じらいもなく堂々と露呈された生着替えは、最初のシミーズ風下着ファッションにドッキリした途端、クレオパトラ金粉ショーに突入し、白煙と共にボンデージ系小悪魔チュチュに変化する、流石はにんじゃりばんばん、大したもんだと感心する一方で、今までになく露出された生足に惚れ惚れしてしまった。雲の上のHEAVEN'S GATEのガーターベルトはゴムが伸びて履けなくなった模様。下取りキボンヌ。





座席が堤防外一等地で、目の前の花道を何度か通るきゃりー&きゃりーキッヅに圧倒されていたが、「みみみ」と呪文を唱える間にきゃりーは蒸発。残されたキッヅと着ぐるみの煽りも虚しく、戦意喪失気味の空気感を、ゴゴゴ....という地響きが襲い、目の前の円形舞台がグリグリハングリーとのし上がる。キッヅたちが手にした蝋燭と苺を振り回して飛び上がり、中央にひと回り小さなお立ち台が競り上がると、丈夫中央が陥没したらしく(堤防より低い土地に住む貧民には見せるに忍びないとの心遣いであろう)、亀裂から飛び出したるは、頭蓋を覆うヘルメット状の赤いつぶつぶの上から、無残にも白濁したリキッドが零れ落ちるという、地獄の沙汰も金次第ではどうにも成らない辛い浮き世を忘れさせる、素敵なファンタジーが繰り広げられた。







先刻からステージにただならぬ妖気を感じつつも誰もが口に出すことさえ憚られたが、ケーキの上で展開するWKTK劇に我慢出来なくなったのか、諸悪の根源たる邪悪な熊が腕を広げ威嚇しはじめたところを狙って、手渡された蝋燭状銃砲をきゃりーが担ぎ、グリーンのレーザー光線で焼き払った光景は、本日の出し物のハイライトのひとつではあったのは確かだが、ひとつ年長者として苦言を呈することを赦して欲しい。きゃりーが撃つべき砲撃レーザーは、ドラびでお制作のレーザーギターでなければならない。そうすれば、凶悪な熊を退治すると同時に、観る者すべての目の奥にある、悪意と偏見を焼き払うことも可能であるから。来年度は是非とも予算化を陳述したい。





アンコール時に不覚にも涙が一筋頬を伝うことと成る小さなインシデントが起ったが、これについては様々なメディアで伝えられたので、賢明な読者に敢て筆者の口から語るような愚かなことはしないが、ご察しの通り、事件の裏に隠された真実を伝えることなしに、何がメディアだ、何がジャーナリズムだ、と憤りに近い気持ちを胸にしまったまま、筆を置くことにしよう。まことに結構な色キチ(カラフル)暴発行動(パニック)であった。



セットリスト
M1 もったいないとらんど
M2 きゃりーANAN
M3 チェリーボンボン
M4 スキすぎてキレそう
M5 jelly
M6 Super Scooter Happy
M7 キミに100パーセント
M8 PONPONPON
M9 Ring a Bell
M10 つけまつける
M11 おやすみ
M12 シリアスひとみ
M13 ファッションモンスター-
M14 にんじゃりばんばん
M15 インベーダーインベーダー
M16 み
M17 きらきらキラー
M18 みんなのうた
M19 トーキョーハイウェイ
M20 ファミリーパーティー
M21 エクスプローラー
M22 CANDY CANDY
M23 ちゃんちゃかちゃんちゃん

きゃりーさん
あなたの悩みは
わたしが解決
してあげる







Save Kyary Pamyu Pmayu Campaign
*詳細後日
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【バンドブーム30周年】盛上げ企画『バンド聴こうぜ!』企画書(前編)

2014年11月10日 00時22分14秒 | 妄想狂の独り言
アイドルやダンスミュージックに浮気してゴメンナサイ。
僕らはやっぱりバンドが大好きです!
今こそ”バンド聴こうぜ!”




『バンド聴こうぜ!』企画書

『昭和アイドル』『渋谷系』の再評価が進む今、次は『80年代バンドブーム』が来る!
というより「来させる」企画です。


<背景>
①来年2015年は『バンドブーム30周年』!!
NHK TV『インディーズの襲来~解き放たれたサウンド~』が放映され「インディーズブーム」が巻き起こった1985年を『バンドブーム元年』と定め、30周年を大々的に祝う。

●80/90年代バンドブーム時代の人気アーティストが現役で活躍中。
PERSONZ(30周年・日本武道館公演)、筋肉少女帯(25周年)、リンドバーグ(25周年・再結成)、ジュン・スカイ・ウォーカーズ(日本武道館公演)、ニューロティカ(30周年)、ユニコーン、ラフィン・ノーズ、SHOW-YA、少年ナイフ、ザ・クロマニヨンズ(ザ・ブルーハーツ)、布袋寅泰(BOOWY・新作ヒット)、The Birthday(ミッシェルガン・エレファント)、浅井健一(ブランキー・ジェット・シティ)、No Lie-Sense(有頂天)など。
【バンドブーム30周年】萌えキャラアニメ『SHOW BY ROCK』で二次元バンドやろうぜ!

②ダンス・HIP HOP、アイドルに飽き足らない若い世代の音楽ファンとメディアが、バンドに注目。
●映画『日々ロック』の公開でロックバンドへの憧れが全国に拡散される。





『日々ロック』公式サイト


③何と言っても、バンド自身が”バンド”をやりたがっている。
●忘れらんねえよ「バンドやろうぜ」


2008年東京にて結成。メンバーは高校の友人同士の柴田隆浩(vo, g)、梅津拓也(b)、酒田耕慈(ds)。バンドのテーマは「NO SEX NO CHILD」。ざけてんのか、と思ったら「この高鳴りをなんと呼ぶ」「僕らパンクロックで生きていくんだ」「空を見上げても空しかねえよ」と心は熱い。バンドやろうぜMVはバンド友達やファンの映像を募集して出来上がった労作。やっぱりバンドやると友達が増えるんだ。


忘れらんねえよ「バンドやろうぜ大作戦」公式サイト


●N'夙川BOYS「BANDがしたい」


2007年大阪で結成されたマーヤLOVE、リンダdada、シンノスケBoysからなるベースレス3ピーストリオ。明快にPOPなロケンローはバンドの楽しさを最大限に描き出す。11/26ニューアルバム「Do you like Rock’n Roll !?」リリース。


N'夙川BOYS公式サイト


バンドブーム
遠きに在りて
覚えてる

●go! go! vanillas『マジック』


牧 達弥(vo/g)、宮川 怜也(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなるロックンロール・バンド。宮川以外は九州出身。結成されたのは東京だが、熱いR&R魂には阿蘇や桜島の火山の香りも。2014年11月5日(水)にリリースしたばかりの、メジャー1stアルバム「Magic Number」より。音楽の魔法はバンドから始まるぜ!


go! go! vanillas公式サイト

To Be Continued/以下、続きは後編にて。。。。
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マイケル・スノウ+恩田晃+アラン・リクト@渋谷WWW 2014.11.5(wed)& 6(thu)

2014年11月09日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


Sound Live Tokyo

昨年、灰野敬二が出演した「東京初耳区」と倉地久美夫&マヘル・シャラル・ハシュ・バズ公演に参戦したシリーズ・イベント『サウンド・ライブ・トーキョー』(以下SLT)が今年もスタートした。昨年はテーマや全体像がイマイチ判りにくかったが、3年目となる今回は、会場が渋谷WWWと六本木スーパーデラックスの2ヶ所に固定され、出演者に焦点を絞った告知がなされたので「音と音楽に関わる表現の可能性を探求するフェスティバル」の意義が理解し易くなった。また、ネットで公開されたインタビューでは背景と思想が詳細に語られ興味深い。
屹立ロケンロー&屹立エグジスタンス(存在)そろい踏み~Drop's/灰野敬二 2013.9.29(sun)
倉地久美夫/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ@東京キネマ倶楽部 2013.10.4(fri)
音楽への愛情があるからこその批判精神『Sound Live Tokyo』インタビュー

 

マイケル・スノウ + 恩田晃 + アラン・リクト

史上最大の実験映画作家が率いる、最新最強の即興演奏トリオ

マイケル・スノウは、映画作家、美術家、音楽家として活動しながら、映画、美術、音楽の間に横のつながりをほとんど作らず、各ジャンルの潜在力を最大限に引き出している稀有なアーティストです。彼の「構造映画」や美術に比して音楽はまだあまり語られておらず、スノウ自身もそれほど言葉を費やしていないのは、音楽というジャンルの性質によるのかもしれませんが、彼が現代で最も重要なジャズ・ピアニスト/インプロヴァイザーの一人であることは間違いありません。今回は彼の最新のプロジェクトである恩田晃、アラン・リクトとのトリオに加え、スノウのピアノソロと恩田+リクトのデュオをお送りします。85歳、約25年ぶりの来日です。
snow_onda_licht公式サイト


Photo by Hideto Maezawa

SLT最初のプログラムはマイケル・スノウ、恩田晃、アラン・リクトのトリオの2Days公演。アラン・リクトは灰野敬二とデュオ・アルバム『Gery Miles』をリリースしているので知っていたが、恥ずかしながらマイケル・スノウのことは詳しく知らず、フライヤーの紹介文をチラ見して「音楽も出来る映画監督」というイメージを持っていたに過ぎない。だから初日11月5日冒頭のソロ演奏を観て、素晴らしくエッジの効いたピアノ・プレイに仰天してしまった。調べると元々プロのジャズ・ピアニストで、アルバート・アイラー/ドン・チェリー/ジョン・チカイ/ラズウェル・ラッド/ゲイリー・ピーコック/サニー・マレイ『ニューヨーク・アイ・アンド・イヤー・コントロール』(ESP 1966)のプロデューサーでもある。自分の音楽作品も数作リリースしており、会場で会った中原昌也は以前からのファンでアナログ盤も持っているという。そのピアノはジャズでもクラシックでもましてやロックンロールでもない、独特の指使いと不思議なフレージングのオンパレード。一音一音の肌理(きめ)がシャープで、まるで沢山のビー玉を鍵盤の上に撒いてその上を猫が二匹駆け回るかのよう、と意味不明な表現をするしかない。SLT繋がりだからという訳ではないが、昨年出演した工藤冬里のピアノに近いニュアンスを感じた。


Photo by Hideto Maezawa

続くスノウ+恩田+リクトのトリオで、スノウはCATシンセサイザーを演奏。フィールド・レコーディングによる具体音をエフェクト操作する恩田のプレイや、ギターを"弾かず"に擦ったり叩いたりして音を出すリクトの演奏は興味深かったが、総じて起伏のないドローン演奏は、会場の暖房が効き過ぎていたこともあり、眠気との闘いになってしまった感もある。勿論ドローンやアンビエント・ミュージックが好きな人も多いだろうが、個人的には苦手だと白状したい。


Photo by Hideto Maezawa

二日目は恩田+リクト・デュオでスタート。前日のドローン地獄の繰り返しだったらどうしよう、との不安は第一音で吹き飛んだ。恩田はテーブルの上に並べたカセットテープを次々入れ替え変化に富んだサウンドを産み出し、リクトはちゃんとギターを"弾き"、歪んだトーンでアブストラクトなメロディを奏でる。ソフト・マシーンのマイク・ラトリッジのファズ・オルガンやファウスト『ソー・ファー』のギターを思わせ、E-Bowを使ったロングトーンはフリップ&イーノを彷彿させる。恐らくかなりのプログレ好きと見た。


Photo by Hideto Maezawa

後半のトリオも初日とは打って変わって能動的なインプロヴィゼーション。スノウは前半ピアノ、後半シンセを演奏。恩田は客席に降りてきてカセット・ウォークマンで音を鳴らすフィールド・ワーカーならではのパフォーマンス。リクトは再び"弾かない"ギタープレイだが、アンビエンス(環境音)に陥らない堅固なプレゼンス(存在感)を発揮し、三者の音響の交歓を繰り広げた。アンコール的に演奏された短めのセッションを含め過激さや轟音抜きの静謐な衝撃に身震いする体験だった。


Photo by Hideto Maezawa

アンビエンスとプレゼンスの両面を(得手苦手は別にして)経験してこそ理解しうるのがマイケル・スノウの世界かもしれない。その意味では、同じメンバー・同じ会場での二日連続公演という或る意味無謀なブッキングこそ、最も理想的なスタイルだと言える。こんな英断を実現出来たことは、SLTスタッフの音楽へ愛情の証に違いない。



音響(SOUND)と
生演奏(LIVE)と
東京(TOKYO)と

<SOUND LIVE TOKYO ライヴ・スケジュール>
SLT公式サイト

11月11日 (火) 渋谷WWW
ケイス・ブルーム + 工藤礼子

11月17日 (月) 渋谷WWW
『裁かるゝジャンヌ』 ローレン・コナーズ + 灰野敬二

11月23日 (日) 六本木SUperDeluxe
東京都初耳区 (ライブ・パフォーマンス) ゲストアーティスト:MERZBOW×中村達也/MURASAKI

12月2日 (火),3日 (水),4日 (木) 六本木SuperDeluxe
東京都初耳区 (サウンド・インスタレーション)

12月27日 (土), 28日 (日) 六本木SuperDeluxe
Antigone Dead People/Small Wooden Shoe + dracom
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【ムーグでエレクト】"Dr. Acid Guru" Kudda's LOOK BACK IN PLEASURE #8(1994年冬)

2014年11月07日 00時25分54秒 | 素晴らしき変態音楽


Moog Synthesizerは現在は「モーグ・シンセサイザー」と表記されるが、2002年に長期の法廷闘争を経て、開発者ロバート・モーグが商標権を正式に取り戻し、公式な表記及び発音を正しく「モーグ」とするよう要請し、日本でも特許庁で商標権登録及び表記呼称が修正されるまでは「ムーグ」と呼ばれていた。BAFFALO DAUGHTERを結成した山本ムーグという人もいた。ちなみに英語表記はMoog Yamamotoだが、現在も「ムーグ」と名乗っている。

本記事にあるように、76年に冨田勲の『火の鳥』に魅了された多感な頃は、「ムーグ」は「シンセサイザー」と同義語以上だったので、今頃になって"ホントは「モーグ」でした"なんて言われてもピンとこない。これは「21世紀の精神異常者(スキッツォイド・マン)」や「ビル・ブラフォード(ブルーフォード)も同様である。『傾向賛美』は事情が異なるが、やはり『学習賛美』と言われてもエレクト(勃起)しない。勘違いや言い間違えには、人の歴史を左右する威力があると思うが如何だろうか。『In Praise Of Leaning』を「Learning」と読み間違えて翻訳したレコード会社担当者は、知らず知らずのうちに日本のプログレ史を変革してしまった訳だ。嘘をつくなら、これくらいでっかい嘘をつきたいが、意図して出来るものではないという実証でもある。






1.THE UNITED STATES OF AMERICA - The Garden of Earthly Delight




2. FIFTY FOOT HOSE - If Not This Time




3. SILVER APPLES - You and I




4. LOTHAR AND THE HAND PEOPLE - Today Is Only Yesterday's Tomorrow




5. WHITE NOISE - Love Without Sound




6. MARKS & LEBZELTER - Essence Of Its Own



エレクトロ
エレクトしたら
エレキテル

日曜日はだめよ




椎名へきる だめよ!だめよ!だめよ!!




AKB48 A1st キスはだめよ




丸出だめ夫




古い画像だが、この音源が「フィードバック・カンカン」

コメント (2)
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