それ行け 鰺tation
茨の道を踏み越えて
私はここへやってきた
孤独を愛する ひとりの少年が
ビルの上から ひらりと身を投げる
あなたを救う 四人の戦士 それ行け 鰺tation
迫る嵐を切り裂いて
私はここへやってきた
世界制覇を企む 悪の音楽(フュージョン)は
街中にあふれて 人の心を惑わす
あなたを救う 四人の戦士 それ行け 鰺tation
沈む夕日を背に受けて
私はここに立っている
時間は息を切らして 全力で駆け抜ける
今しか出来ない 今しか歌えない
あなたを救う 四人の戦士 それ行け 鰺tation ×3
平和を願う 四人の戦士 それ行け 鰺tation
1年の浪人生活の結果、無事に大学に合格した筆者の胸は、夢に見た音楽生活への期待でWKTK(ワクテカ)していた。第1は大久保の中古楽器屋で手に入れた年願のアルト・サックスを思いきり自由に吹きまくること。第2は愛用のグレコのファイアーバード・ギターでカッコいいパンクバンドをやること。
第1の夢は、大学の軽音研に入り、好きなアーティストはオーネット・コールマンと言ったら鼻で笑われたことをきっかけに瓦解。大学とは関係なく吉祥寺の地下のライヴハウスにて追求することととなる。
第2の夢は、大学内で叶えようとする。いくつかある音楽サークルの中で、3番目の規模のサークルに入る。女子ボーカルのフォーピース・バンドを結成、レジロスやギャング・オブ・フォーのようなシャープなパンク&ロケンローを目指す。ところが、サークルの主流は圧倒的にインスト/ギターメイン/POPEYEファッションの所謂フュージョン。歌ものだとオフ・コースや山下達郎。間違いなくアウェーな立場に身を置くことと成った。もっとロック寄りのサークル、例えばフォーク研と名乗るヘヴィメタ倶楽部や、G-シュミットを産んだブリ研ことブリティッシュロック研究会に入れば居心地よかったかもしれない。しかし筆者は敢て異質音楽群に留まった。決して一人粋がって反抗した訳ではないが、何一つ不自由のない大学生活には仮想敵が必要で、軟派野郎のフュージョンこそ格好の標的だった。ヤマハSGを腹の上でセコく弾く連中に心の中で中指立てながら、アルチュール・ランボーに憧れて、大き過ぎる古着スーツや真っ黒な烏コートを着て、石鹸の泡で髪を立てて(整髪料は高いし匂いが嫌いだった)、ギターの位置は腰の下、マス掻きの要領で右手を大きく上下させて、パワーコードをエイトビートで刻んだ。オリジナル曲では「悪の音楽」に「フュージョン」とルビを振った。
それから30年が過ぎて、かつて倒し甲斐のある強敵だったフュージョンは、ジャンル自体すっかり廃れてしまった。ロックやパンクの方が圧倒的にメジャーになった今こそ、逆に16ビートの爽やかなドライヴィング・ミュージック(=フュージョン)を聴きながらサクサク仕事を片付けよう。作業用BGMとして大変重宝している、という心温まるお話。
●ラリー・カールトン「ルーム335」
●リー・リトナー「キャプテン・フィンガーズ」
●リターン・トゥ・フォーエヴァー「スペイン」
●カシオペア「朝焼け」
●高中正義「Blue Lagoon」
●渡辺貞夫「オレンジ・エキスプレス」
●シャカタク「ナイト・バーズ」
フュージョンと
コンフュージョンは
お友達
▼Confusion Will Be My Epitaph(我が墓碑銘に現れし言葉は混迷)