A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

マイケル・スノウ+恩田晃+アラン・リクト@渋谷WWW 2014.11.5(wed)& 6(thu)

2014年11月09日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


Sound Live Tokyo

昨年、灰野敬二が出演した「東京初耳区」と倉地久美夫&マヘル・シャラル・ハシュ・バズ公演に参戦したシリーズ・イベント『サウンド・ライブ・トーキョー』(以下SLT)が今年もスタートした。昨年はテーマや全体像がイマイチ判りにくかったが、3年目となる今回は、会場が渋谷WWWと六本木スーパーデラックスの2ヶ所に固定され、出演者に焦点を絞った告知がなされたので「音と音楽に関わる表現の可能性を探求するフェスティバル」の意義が理解し易くなった。また、ネットで公開されたインタビューでは背景と思想が詳細に語られ興味深い。
屹立ロケンロー&屹立エグジスタンス(存在)そろい踏み~Drop's/灰野敬二 2013.9.29(sun)
倉地久美夫/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ@東京キネマ倶楽部 2013.10.4(fri)
音楽への愛情があるからこその批判精神『Sound Live Tokyo』インタビュー

 

マイケル・スノウ + 恩田晃 + アラン・リクト

史上最大の実験映画作家が率いる、最新最強の即興演奏トリオ

マイケル・スノウは、映画作家、美術家、音楽家として活動しながら、映画、美術、音楽の間に横のつながりをほとんど作らず、各ジャンルの潜在力を最大限に引き出している稀有なアーティストです。彼の「構造映画」や美術に比して音楽はまだあまり語られておらず、スノウ自身もそれほど言葉を費やしていないのは、音楽というジャンルの性質によるのかもしれませんが、彼が現代で最も重要なジャズ・ピアニスト/インプロヴァイザーの一人であることは間違いありません。今回は彼の最新のプロジェクトである恩田晃、アラン・リクトとのトリオに加え、スノウのピアノソロと恩田+リクトのデュオをお送りします。85歳、約25年ぶりの来日です。
snow_onda_licht公式サイト


Photo by Hideto Maezawa

SLT最初のプログラムはマイケル・スノウ、恩田晃、アラン・リクトのトリオの2Days公演。アラン・リクトは灰野敬二とデュオ・アルバム『Gery Miles』をリリースしているので知っていたが、恥ずかしながらマイケル・スノウのことは詳しく知らず、フライヤーの紹介文をチラ見して「音楽も出来る映画監督」というイメージを持っていたに過ぎない。だから初日11月5日冒頭のソロ演奏を観て、素晴らしくエッジの効いたピアノ・プレイに仰天してしまった。調べると元々プロのジャズ・ピアニストで、アルバート・アイラー/ドン・チェリー/ジョン・チカイ/ラズウェル・ラッド/ゲイリー・ピーコック/サニー・マレイ『ニューヨーク・アイ・アンド・イヤー・コントロール』(ESP 1966)のプロデューサーでもある。自分の音楽作品も数作リリースしており、会場で会った中原昌也は以前からのファンでアナログ盤も持っているという。そのピアノはジャズでもクラシックでもましてやロックンロールでもない、独特の指使いと不思議なフレージングのオンパレード。一音一音の肌理(きめ)がシャープで、まるで沢山のビー玉を鍵盤の上に撒いてその上を猫が二匹駆け回るかのよう、と意味不明な表現をするしかない。SLT繋がりだからという訳ではないが、昨年出演した工藤冬里のピアノに近いニュアンスを感じた。


Photo by Hideto Maezawa

続くスノウ+恩田+リクトのトリオで、スノウはCATシンセサイザーを演奏。フィールド・レコーディングによる具体音をエフェクト操作する恩田のプレイや、ギターを"弾かず"に擦ったり叩いたりして音を出すリクトの演奏は興味深かったが、総じて起伏のないドローン演奏は、会場の暖房が効き過ぎていたこともあり、眠気との闘いになってしまった感もある。勿論ドローンやアンビエント・ミュージックが好きな人も多いだろうが、個人的には苦手だと白状したい。


Photo by Hideto Maezawa

二日目は恩田+リクト・デュオでスタート。前日のドローン地獄の繰り返しだったらどうしよう、との不安は第一音で吹き飛んだ。恩田はテーブルの上に並べたカセットテープを次々入れ替え変化に富んだサウンドを産み出し、リクトはちゃんとギターを"弾き"、歪んだトーンでアブストラクトなメロディを奏でる。ソフト・マシーンのマイク・ラトリッジのファズ・オルガンやファウスト『ソー・ファー』のギターを思わせ、E-Bowを使ったロングトーンはフリップ&イーノを彷彿させる。恐らくかなりのプログレ好きと見た。


Photo by Hideto Maezawa

後半のトリオも初日とは打って変わって能動的なインプロヴィゼーション。スノウは前半ピアノ、後半シンセを演奏。恩田は客席に降りてきてカセット・ウォークマンで音を鳴らすフィールド・ワーカーならではのパフォーマンス。リクトは再び"弾かない"ギタープレイだが、アンビエンス(環境音)に陥らない堅固なプレゼンス(存在感)を発揮し、三者の音響の交歓を繰り広げた。アンコール的に演奏された短めのセッションを含め過激さや轟音抜きの静謐な衝撃に身震いする体験だった。


Photo by Hideto Maezawa

アンビエンスとプレゼンスの両面を(得手苦手は別にして)経験してこそ理解しうるのがマイケル・スノウの世界かもしれない。その意味では、同じメンバー・同じ会場での二日連続公演という或る意味無謀なブッキングこそ、最も理想的なスタイルだと言える。こんな英断を実現出来たことは、SLTスタッフの音楽へ愛情の証に違いない。



音響(SOUND)と
生演奏(LIVE)と
東京(TOKYO)と

<SOUND LIVE TOKYO ライヴ・スケジュール>
SLT公式サイト

11月11日 (火) 渋谷WWW
ケイス・ブルーム + 工藤礼子

11月17日 (月) 渋谷WWW
『裁かるゝジャンヌ』 ローレン・コナーズ + 灰野敬二

11月23日 (日) 六本木SUperDeluxe
東京都初耳区 (ライブ・パフォーマンス) ゲストアーティスト:MERZBOW×中村達也/MURASAKI

12月2日 (火),3日 (水),4日 (木) 六本木SuperDeluxe
東京都初耳区 (サウンド・インスタレーション)

12月27日 (土), 28日 (日) 六本木SuperDeluxe
Antigone Dead People/Small Wooden Shoe + dracom
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