A Challenge To Fate

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【Disk Review】ネイト・ウーリー『KNKNIGHGH〜アラム・サローヤンの為のミニマル・ポエトリー』 クリス・ピッツィオコス

2017年07月08日 01時04分33秒 | 素晴らしき変態音楽


KNKNIGHGH (MINIMAL POETRY FOR ARAM SAROYAN)
Nate Wooley


Clean Feed CF434CD $ 13.90

Nate Wooley trumpet
Chris Pitsiokos alto saxophone
Brandon Lopez bass
Dré Hočevar drums

All compositions by Nate Wooley 2016, fourwordseamusic (BMI)

Recorded October 29th, 2016 at Oktaven Studios, Mt. Vernon, NY by Ryan Streber | Mixed and Mastered by Ryan Streber
Produced by Nate Wooley | Executive production by Pedro Costa for Trem Azul | Design by Travassos

フリージャズに擬態したNYハードコアジャズ来るべきもの

NYハードコアジャズ界のベテラン・トランぺッター、ネイト・ウーリーの新カルテット:クリス・ピッツィオコス(as)、ブランドン・ロペス(b)、ドレ・ホッチェヴァー(ds)の初アルバムの登場である。ウーリーの超人的なトランペット技巧によるソロ作品や最近のピッツィオコスの新時代ファンク作品に慣れた耳には、再生スイッチを押すと飛出すあまりにオーソドックスなフリージャズに一瞬戸惑う。間違って60年代前衛ジャズの未発表CDをかけてしまったかと。そう、確かにピアノレス二管カルテット編成はドン・チェリー、チャーリー・ヘイデン、ビリー・ヒギンズからなる『ジャズ来るべきもの』時代のオーネット.コールマン・カルテットと同じ。こじんまりとしたスタジオで一発録音された温かみのある音質の臨場感は、5,60年代のモダンジャズ全盛期の香りを色濃く放っている。

しかしウーリーによる物哀しいテーマとシンプルなコード進行を軸に展開されるインプロヴィゼーションは、各自が培っていきた豊潤な音楽要素を封印してはいるが、ピッツィオコスの痙攣吃逆トーンやウーリーの物音アンブシャーが随所に散りばめられ、意図的なビート感の欠如を装ったウッドベースとハイハットの心許なさに翻弄され、今が何時代で、聴いているのが過去現在未来いずれであるか、確証が持てないエニグマに陥ってしまう。ウーリーによると<古典的なフリージャズカルテットの伝統のラジカルなニューテイク>。この言葉でバック・トゥ・ルーツ的な回顧主義とは無縁であることがわかる。実際筆者が今年聴いた即興音楽系アルバムの中では、最も折に触れて再生したい作品のひとつである。

Nate Wooley Quartet: Knknighgh - at Spectrum, NYC - October 18 2016



ミニマルと
ラジカリズムの
ポエトリー

アルバム・タイトル『KNKNIGHGH』は「ナイフ」と発音し、サブタイトルにあるように詩人のアラム・サローヤンに捧げられた作品。サローヤンは、パンク詩人のリチャード・ヘルが「一言詩の達人」と評するミニマリスト詩人で、ギネス認定の世界一短い詩で知られる。ウーリーはしかしサローヤンの文学性よりも、彼の詩のリズミックな感覚と繰り返しによる変容、そして個性的な音響性に惹かれたという。四つ足の「m」こそは、ネイト・ウーリー・カルテットの四人の関係性の図式化に他ならない。

▼世界で一番短い詩
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