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褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 木靴の樹(1978) まるで絵画を観ているようです

2015年08月30日 | 映画(か行)
 19世紀を代表するパルビゾン派の画家であるジャン=フランソワ・ミレー。『晩鐘』、『落穂拾い』などで知られる画家だが、まるで彼の絵画が動いているような錯覚を起こす気分になりそうな映画が今回紹介する木靴の樹。ミレーが多くの作品で農民の働く姿を描いているが、本作も19世紀前半のイタリアの農村が舞台で何組かの農民たちの暮らしが描かれている。
 ここに描かれている農民たちは地主に搾取されまくっている小作人達。彼らの生活は極貧とも言えるものだが意外に悲壮感がない。彼ら小作人同士の間には協調性があり、音楽があり、祈りがある。今や現代社会は楽して金を儲けようとする拝金主義が蔓延り、日本においても子供をしつけられない親が増えてしまい、隣人との関係が疎遠になってしまった結果、凶悪な犯罪事件が起こったりする。すっかり正しきモラルが崩壊してしまった現代に生きる我々に、労働の尊さ、家族のあるべき姿、この世の中を支配するのは決して金持ちではなくて農民であることを教えてくれる有りがたい映画が木靴の樹だ。
 物語自体は色々なエピソードの積み重ね。タイトルの木靴の樹から俺なんかは『木で作った靴を履いてるの?』なんてことを想像したが、そんなこともこの映画を貫くテーマでもなく、小さなエピソードの一つに過ぎない。しかしながら、最後はこのタイトルが観ている我々に響いてくる設定だ。

 
 さて、貧しいながらも自らの境遇を決して蔑むことなく、力強く生きる農民たちの姿を描いたストーリーとはいかなるものか。
 北イタリアの農村において。バティスティ(ルイジ・オルナーギ)一家など何組かの家族が地主のもとで小作人として働いている。しかし、農地、住みか、農具、家畜、そして川の辺の木々に至るまで地主の所有物のなかで、収穫の3分の2が地主にむしり取られていて、小作人達の生活は非常に貧しい。
 ある日のこと、子だくさん貧乏のバティスティ家だが、働き手が欲しいにも関わらず6歳になる息子ミネク(オマール・ブリニョッリ)は神父の勧めもあり往復12キロもある学校へ通わせることにする。しかし、ミネクは学校からの帰りに履いていた靴を壊してしまい、家にたどり着いたミネクの足は痛々しい。そんな息子を哀れに思った父親のバティスティは彼のために地主所有の木を伐採し、靴を作ってやるのだが・・・

 実は本作はプロの俳優は使わず地元の素人を使い、撮影も人工照明を一切使わず自然の光のみ。そんなこともあって農民たちの生きていく様子がドキュメンタリータッチで描かれている効果が表れ、リアリティに溢れる映画になった。収穫の様子、豚をするシーン、農民たちの生活などリアルそのもの。そして色々なエピソードは心が暖まるのもあり感動的。なんだか奇跡的なことが起こったり、チョッと笑えるシーンもある。そして大地、信仰、家族など色々と考えさせられる。しかしながら、ラストシーンはけっこうな驚きの結末でアリャ!となってしまうように心地良さが無いが、それでも農民たちの逞しさはなぜか希望を感じさせる。
 比較的ストーリーは淡々と進むのに3時間というのはちょっと長い。俺の場合だが昔に映画館で観たことがあるのだが、その時は3時間の上映時間の殆んどが睡魔との戦い。この映画を観る前のアドバイスとしては睡眠時間をたっぷり取ってから観るのが良いだろう。
 何かとモラルが狂ってしまったような日本だが、本作を観れば古き良き日本人が持っていた価値観を感じることができる。カンヌ国際映画祭の最高の賞にあたるパルム・ドール賞に輝くなど名作として知られている作品。イタリア映画の名作に興味がある人、貧しい生活に我慢ができない人、3時間の長時間に耐えられる人、良い映画を観たいと思っている人には映画木靴の樹はお勧めだ。

木靴の樹 [DVD]
ルイジ・オルナーギ
東北新社


木靴の樹 Blu-ray
ルイジ・オルナーギ,フランチェスカ・モリッジ,オマール・ブリニョッリ,カルメロ・シルヴァ
紀伊國屋書店


 監督はイタリア映画伝統のネオリアリズモを継承するエルマンノ・オルミ。ルトガー・ハウアーを主演に起用した聖なる酔っ払いの伝説がお勧めです。

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