数日前、ラジオから「じーんせい楽あーりゃー苦ーもあーるーさー」という中年以上の人にとってはごくお馴染みの歌が流れてきた。中年以上の人にとってはごくお馴染み、テレビ時代劇『水戸黄門』の主題歌だ。主役の水戸光圀が東野栄治郎であった頃から私は観ている。助さん格さんが誰だったかは思い出せないが。
黄門さまは「カッ、カッ、カッ」と高笑いし、弱きを助け強きを挫き、悪者たちを懲らしめ、罪なき人々に平和をもたらす。黄門さまの目に映る「強き」とはたいてい悪代官とか悪徳商人で、「弱き」とはたいてい真面目な百姓や長屋の貧乏人であった。
黄門さまのセリフで覚えているものがある。自らも杖を構えながら言う「助さん、格さん、懲らしめてやりなさい」、そう言って悪者どもをやっつける。もう一つ、「百姓は国の宝」という言葉も記憶に残っている。子供の私にもその意味することは理解できた。生きるに食料は最も大事なもの、それがあるから侍達も殿様も生きていける。よって、それを作っている百姓は国の宝である、と黄門爺様は言っているわけだ。
TPP交渉が大詰めに来ているらしい。日本国は米を守ろうとしているが、どこまで守れるか今のところ不確定。外国から安い米が入ってきたら日本の米農家はやっていけないと不安を抱いているとのこと。日本国には米を作る農家がいなくなるかもしれない。実際そうなるかどうかも不確定だが、そうなる恐れは十分にあるのだろう。
私は「米を作っても売れない」という状況にはならないと思う。「生業が稲作だと、食っては行けるが生活は非常に苦しい」ということにはなるかもしれない。稲作だけではなく、他の農業、野菜や果物も、そして酪農も、日本国では儲けるには厳しい生業となるかもしれない。農業では結婚して子供作って・・・なんてできないかもしれない。
日本の農業がそういう状況になった場合でも、私はきっと自給自足独り芋生活を続けているだろう。結婚して子供作って(は当然、旅行から、外での食事、高い衣服などの贅沢まで含めて)ということを考えなければ何とか生きてはいけると思っている。
毎日頑張って働いて、何とか収穫できた野菜たちは、私の費やした時間と労力に比べてずっと安い価格でしか売れないとなっても、現在の物価が続くとして、年間40万円(目標は60万円)前後の売り上げがあれば、何とかやっていけるはず。
例えば、畑の畝全部に、秋はレタス、冬は タマネギ、春はゴーヤーだけを栽培したとしたらそれぞれ1400個程は収穫できる。1個100円で全部売れたとして計42万円となる。最低限の収入はこれでクリアー。畝立てしている箇所は畔部分も含めて全体の約三分の一、他の三分の一は果樹園、及び薬草園となっている。そこからいくらか収入があれば目標の60万円に達するという計画。達成できるかどうかは期待と不安が半々。
目標が達成できたとしても年間たった60万円の収入、これでは税金は払えない。私みたいな人間が増えると国は困るだろう。国から見ると私のようなものは不要な者となる。しかし、私から言わせれば私は「無抵抗生力」だ。国に抵抗はしないが生きる力はあるということ。「無抵抗生力」は、国にとっては役立たずかもしれないが、国土にとっては大いに役立つと思う。何しろ農地を守っているのだ。農地は国の宝だと思う。
記:2013.12.6 島乃ガジ丸