折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

久々に読書の楽しさ面白さを満喫~加藤 廣著『求天記』

2011-07-21 | 読書
昨日のこと。

台風と言うことで、外歩きもままならないと思い、雨風が強くならないうちに読む本を探しておこうと久しぶりに図書館に行き、物色中に見つけたのが加藤 廣が書いた『求天記―宮本武蔵正伝』。

デビュー作『信長の棺』から始まり『秀吉の枷(かせ)』『明智左馬助の恋』と続く「本能寺三部作」で、読者を『あっ』と言わしめ、戦国史に新境地を開いた作家・加藤 廣。

この作家は、宮本昌孝、海道龍一郎と並んで小生が最も好きな時代劇作家の一人である。

その加藤 廣が今度はあの剣聖と謳われる「宮本武蔵の生涯」に挑んだのだ。

歴史上の一場面にあっと驚く新たな光をあて、一気に読ませるのはこの著者の真骨頂。いかなる武蔵像を立ち上げたのか、期待して読んだが、まさにその期待に違わず486ページと言う大作であったが、借りてきたその日のうちに一気に読み終えてしまった。

                   加藤 廣著『求天記―宮本武蔵正伝』(新潮社)


その構成だが、第1部「武人武蔵」、第2部「武将武蔵」と言う章立てで、第1部ではおなじみの佐々木小次郎との巌流島の決闘を、第2部で今まで等閑視されてきた武蔵の後半生をクローズアップしている。

佐々木小次郎との決闘のからくりは、いかにもこの著者らしい新解釈が施されていて、その考察力には大変興味をそそられたが、本書の見どころ、読みどころは

「これまでの武蔵像は、忽然(こつぜん)と現れ、忽然と消えていくイメージだったでしょう? 巌流島の後の話はあまり書かれてこなかった。でも彼は実際に生き、生活した。何を考え、なぜ、どこへ行ったのか、史料という限定の範囲で想像し、書き上げました」

と著者が述懐しているように、戦が終わり、三十歳を超え、保身の時代へと移り変わる世に「無用の長物と化した自分」を意識し、虚(むな)しさを抱え込む剣の天才が、迷い、悩み、あがきながらも、新たな可能性を求めて彷徨する姿を細川忠利、水野勝成、真田信繁(幸村)と言った武将や紹琨、愚堂といった高僧との出会いを通して、この作家らしい、大胆な想像を交えながらいきいきと描きだした後半生にあると言えるだろう。



午前10時半に読み始めて午後11時半まで、一心不乱に読みふけり、読了。

この所の暑さで全くと言っていいほど遠ざかっていた読書だが、台風のお陰で一念発起、久々に読書の楽しさ面白さを満喫、充実した気分を味わった次第である。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿