飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領、ウクライナ東部の独立容認に方針転換か?

2014年09月01日 14時53分24秒 | Weblog
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   長期化するウクライナ紛争でプーチン大統領は8月31日、ウクライナ政府に対し、東部地域の国家化を和平協議の議題とするよう求めた。親ロシア派武装勢力が支配し、「ノボロシア」(新ロシア)と呼んでいる同地域の独立を容認する意向と受けとれるが、大統領報道官はその後、国家化には言及していないと否定した。ロシア側は「軍事介入」を背景に東部分離をゴリ押ししてくる可能性があり、紛争は大きなヤマ場を迎えつつある。

   プーチン大統領は31日の国営テレビ「第一チャンネル」のインタビュー番組で、ウクライナ政府はルガンスク州とドネツク州の「義勇軍」指導者と幅広い協議を行い、地域住民の法的権利を保障するため、東部地域の国家化についても触れるべきだと語った。大統領が東部の将来について「国家」という表現を使ったのは初めてである。

   大統領は現在、親ロシア派武装勢力を「ノボロシアの義勇軍」と呼んでいる。これらを重ね合わせると、18世紀末にロシア帝国が征服し、「ノボロシア」と命名した黒海北岸部地域にならい、東部地域をウクライナから分離させ、国家として確保する狙いかもしれない。大統領はこれまで、ウクライナを連邦制国家に移行させ、東部を連邦共和国にしてロシアの発言権を確保する意図とみられていたが、ここに来て方針を転換した可能性がある。

   ただ、プーチン大統領のテレビ発言後、ペスコフ・ロシア大統領報道官は「大統領は東部地域の地位について言及したわけではない。ウクライナ側と包括的な協議をするよう述べただけだ」と釈明した。親ロシア派勢力の独立を容認したと受け取られることを避けようとしているが、あの慎重な大統領がロシアで最も視聴率の高いテレビで不注意な発言をするとは考えられない。

   米国やEUは、ロシアが東部地域に装甲車や対空ミサイルなどの兵器とともに軍部隊を徐々に投入していると非難している。こうしたロシアの手法はクリミヤ半島を独立・編入した時のやり方に似ている。これまでプーチン大統領は東部の独立を否定してきたが、EUや米側が経済制裁を強化し、さらにNATO軍を動員する構えを見せているため、東部を独立させることもやむを得ないとの判断に傾いたのではないか。

   一方、ウクライナも「後戻りできない地点に達しようとしている」(ポロシェンコ大統領)とみて、ロシアとの「全面戦争」まで視野に入れている。この状況をどこかで食い止めないと、それこそ百年前の第一次世界大戦の二の舞になりかねない。今こそ国際社会は事態を真剣に受け止め、全面的な和解工作を進めるべきだ。(この項おわり)




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