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ウクライナ東部の戦闘は、ウクライナ政府と親露派武装勢力との合意により6日未明(日本時間)から停止された。今後、拘束された戦闘員や兵士らの相互解放が行われ、真の解決に向けた交渉が始まる段取りだが、欧米側は依然としてロシアへの不信感が強く、追加制裁を構えてロシアに圧力をかけている。ロシアにもウクライナを全面支援する米国への不信感が根強く、このまま全面停戦に向かうとは思えない状況だ。
今回の停戦交渉は事実上、プーチン大統領のイニシアチブで進められた。ということは、親露派勢力がロシア軍の支援を受けて各地で攻勢を強め、ウクライナ軍を追い詰めたことから停戦がまとまったといえる。つまり、プーチン大統領の外交的、あるいは軍事的勝利ともいえるものだ。
これに対し、オバマ大統領は5日のNATO首脳会議後の会見で「(合意を)親露派が実施し、ロシアが(軍事)介入を止めるかどうかは過去の経験からすれば懐疑的だ」と述べ、露骨にロシアへの不信感を示した。EU側はこの日、ロシアに対する追加制裁で合意したと発表、停戦に対するロシアの出方をみて制裁を発動するかどうかを決める方針だ。
米国やEUからすれば、ウクライナ東部の戦闘はロシア軍が8月に入って「軍事介入」(ロシアは否定)してから激化し、ウクライナ軍の敗色が濃くなったということになる。それだけに、親露派勢力、さらにその裏で糸を引くロシアがすんなり手を引くとは思えないのだろう。
一方、ロシア側にも欧米への不信感が強く残っている。ウクライナ紛争の発端ともなった親露派・ヤヌコビッチ政権への反政府デモを扇動し、政権打倒にまで追い込んだのは米国ではないかという疑いがあるからだ。米国務省職員がキエフで暗躍していたとの情報もあり、ロシア人の反米感情はかつてなく高まっている。
こういう状況からロシア側が攻勢に出れば出るほど、プーチン大統領の支持率がアップし、それを背景に大統領はさらに強気に出るという悪循環になっている。逆にオバマ大統領は口ではロシアを強く批判するが、実力行使が伴わないこともあって大統領の支持率はさらに下がるという傾向にある。
双方がこういう不信感に陥っていては、やっと停戦にこぎつけても、どちらかが破って再び泥沼に落ち込むということになりかねない。欧州では米露が再び全面対決する「新冷戦」への不安が広がっているという。欧米、ロシア双方とも、この停戦を大事にして最終的な政治解決につながるよう努力して欲しい。(この項おわり)