飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

日本の対露制裁対象者に日露、エネルギー関係者含まれず!

2014年05月16日 15時00分21秒 | Weblog

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   ウクライナ東部の緊張緩和措置として日本政府は4月下旬、ロシア政府関係者ら23人へのビザ(査証)発給を当面停止する追加制裁を決めたが、この中に日露関係者、エネルギー関係者ともに含まれていないことが分かった。プーチン大統領の今秋の訪日を控え、対露関係の悪化を防ごうと、ロシアに最大限の配慮をしたとみられる。

   日本政府は23人の名簿を発表していないが、日露外交関係者によると、制裁対象者23人の中には「ロシア文化フェスティバル」のロシア側組織委員長であるナルイシキン下院議長や石油大手のセチン・ロスネフチ社長らは含まれていない。この2人はプーチン大統領の信頼が厚い最側近の人物で、米国やEUによる渡航禁止対象者に入っている。

   その半面、ウクライナ紛争の過程で国会の解任決議を受け、ロシアに亡命したヤヌコビッチ元ウクライナ大統領が含まれていることが判明した。ロシア側も「なぜこの人物が含まれているのかわからない」と首をひねっている。日露関係者やエネルギー関係者をすべて除外したことから、員数合わせのため名簿に滑り込ませた可能性もある。

   今回の制裁措置についてロシア側関係者は「露日関係者は制裁の対象になっていないので、具体的な影響はない。ただ、今回の制裁は露日関係全体の雰囲気に影響を与えていることは間違いない」と述べ、日本側の措置を「非常に残念だ」と受け止めている。

   また、ウクライナ紛争が日露間の平和条約交渉に影響するかどうかについてロシア側関係者は「歴史的に見てもクリミア半島と北方四島は違うので、平和条約交渉には関係しないと思う。もちろん、クリミア半島のロシア編入で愛国主義が強まり交渉が難しくなるという人もいるが、そんなに関係はないと思う」と語っている。

   今回の日本政府による対露制裁は、米国やEUに歩調を合わせて形だけの制裁を行ったという印象が強い。ロシア側にも足元を見られており、ほとんど効果がないといっても言い過ぎではない。むしろ、米国やEUとの違いが目立ち、逆効果になる恐れもある。

   その裏で、安倍政権は谷内正太郎国家安全保障局長を密かにモスクワに派遣し、プーチン政権との協議を続けている。たとえロシアがウクライナ紛争で孤立しても、対話は続けるべきだ。いくら日米同盟が重要だからといって、米国の言いなりになってはいけない。(この項おわり)