飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

露特殊治安部隊、人権団体を事務所から強制的に追い出す!

2013年06月23日 15時34分06秒 | Weblog

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プーチン政権は欧米から資金援助を受けて活動している非政府組織(NGO)への締めつけを強化しているが、22日未明、ロシアの有力な人権団体「人権擁護」(ポノマリョフ代表)の事務所に特殊治安部隊を派遣し、職員らを強制的に追い出した。この騒動で職員数人が負傷した。

インタファクス通信などによると、22日午前2時頃、モスクワ市内の「人権擁護」事務所に特殊治安部隊「オモン」が突入した。当時、事務所にはポノマリョフ代表ら職員8人がいたが、特殊部隊は代表らを踊り場まで引きずっていき、階段から突き落とした。このため職員らはアスファルトの道路に投げ出され、数人が救急車で運ばれたという。

検察庁は21日午後、事務所に検察事務官を派遣し、事務所から退去するよう要求した。事務官は室内のコンピュータを差し押さえ、ドアのカギを取り替えて事務所の賃貸契約期間が切れたことを宣言していた。

今回の治安当局の強制的な退去に対し、ルキン連邦人権問題全権委員は「当局のやり方は横暴で、連邦憲法に違反している。法律家と協議して対応策を決めたい」と語り、法的手段に訴える可能性を示唆した。

プーチン政権の主導により昨年11月、欧米の資金供与を受けて民主化や人権擁護に携わるNGOへの規制法が発効した。当局が「政治的」とみなした団体に「外国のエージェント」として登録させ、財源や活動報告を義務付けている。登録をしていない団体に対しては最高50万ルーブル(約150万円)の罰金、悪質なケースには2年間の禁錮が課される。

検察当局は今年2月からNGOに対する抜き打ち検査を実施しており、すでに欧米系の人権団体「アムネスティ・インタナショナル」支部など、数百団体を捜索して書類の提出や団体の登録を要求している。

こうした検査により、ロシアの三大世論調査機関のうち、中立系のレバダ・センターが登録を迫られるなど、「外国のエージェント」の認定枠が予想以上に広がっている。さらに、知名度の高い人権団体「人権擁護」が強制退去させられる事態が発生したため、リベラル派からの批判が高まっている。

すでに欧米諸国がこうしたプーチン政権の強権的手法を厳しく批判している。今年9月にはサンクトペテルブルクでプーチン大統領主宰のG20首脳会議が開催されるが、世界各国の批判がさらに強まることが予想される。今月、英国で開かれたG8サミットでも、シリアへの対応を巡るロシアの「異質性」が指摘されており、このままではG20首脳会議の開催すら危ぶまれかねない事態となろう。(この項おわり)