飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ベラルーシの大統領をロンドン五輪に行かせないのは欧米のイジメだ!

2012年07月26日 11時34分47秒 | Weblog
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英国オリンピック委員会は25日、ベラルーシのルカシェンコ大統領のロンドン五輪出席を拒否した。大統領は欧米への過激な発言と国内の人権軽視で、米国などから「最後の独裁者」とも呼ばれ、国際的に孤立しているが、五輪への出席まで認めないのはいかがなものか。欧米の陰湿なイジメとしか思えない。

インタファクス通信によると、ジューコフ・ロシア五輪委員長がツイッターで明らかにした。「オリンピックの価値と伝統はどうしたのか。オリンピックの時はギリシャでは休戦したことを小学生でも知っている」と英国五輪委員会を批判した。首都ミンスクの英国大使館もこの情報を確認したという。

ルカシェンコ大統領は熱烈なスポーツ愛好家で、ベラルーシ五輪委員長も務めている。とくにサッカーとアイスホッケーが大好きで、現在は14年のアイスホッケー世界選手権のミンスク開催に全力を挙げているが、欧米の反応は冷淡で早くも開催を危ぶむ声が出ている。

ルカシェンコ大統領がそれほど欧米諸国に嫌われているのも、これまでの言動が過激だったからだ。ヒトラーを「彼のおかげで(ドイツは)残骸から立ち直った」と賞賛したり、昨年のリビアへのNATOの軍事介入を「ナチスより最悪だ」と批評したり。今年3月にはベラルーシを「独裁国家」と批判した独外相を「同性愛者になるくらいなら独裁者のほうがましだ」とやり返した(独外相は同性愛者を公言している)。

ルカシェンコ氏は1954年、ベラルーシの農村で生まれ90年、国営農場支配人から最高会議代議員選挙に立候補して当選。汚職追放運動で有名になり、94年の大統領選で圧勝し、初代大統領に就任。それ以来、大統領を4期18年間続けている。ソ連崩壊後も共産党の政策を実行し、市場経済に逆行しつつも経済危機を乗り切り、工業生産の回復などに一定の成果を上げている。

 大統領は最近、欧米への接近を強めているが、相変わらず歯に衣着せぬ発言で欧米諸国を怒らせ、EUへの入国を禁止されている。その一方で、ベラルーシを取り込もうとするロシアに対し「ギャングどもに我々の国を売り払いなどしない」などと発言、ロシアにも距離を置こうとしている。欧米とロシアとの間の微妙なバランスをどうとるかが難しいところだ。

 こういう状況の時に、欧米がロンドン五輪への出席をボイコットすれば、ルカシェンコ大統領をロシア側に追いやってしまいかねない。スポーツ好きな大統領だけに、気分良く五輪に出席させてやれば、欧米にさらに傾かないとも限らない。欧米はこんな時こそ、イジメのような政策を改めるべきではないか。(この項おわり)