飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

NHKスペシャル「プーチンの子供たち」は情緒的過ぎる!

2009年03月23日 23時50分08秒 | Weblog
 「プーチンの子供たち」というタイトルのNHKスペシャルが23日夜、全国放映された。「プーチンのロシア」と銘打った4回の特別企画の最終回で、軍人養成学校に長期間カメラを入れ、生徒たちの家庭まで取材した力作だ。しかし、「復活する”軍事大国”」というサブタイトルをつけている割には軍事大国の全体像が見えず、情緒的な描き方が目立った。

 今回のシリーズでは、ロシアの金融危機、ロシア正教、グルジア戦争、そして軍事大国化が取り上げられている。どの回も、大統領から首相に降格したプーチン氏が今も実権を握っているとの見方から「プーチン主義」なるものを描いているようだ。この見方自体は間違っていないと思うが、いずれもテレビの特性からか、現場ロケが大半で、ロシア全体についての説明や、他国との比較などの解説が少ないという印象が強かった。

 とくに最終回は、「軍事予算が8年間で5倍に増えた」「100万人の軍人をすべて志願兵にする計画」などと説明しているが、軍事予算はソ連時代と比べてどうなのか、米国などよりも多いのか、軍人100万人は他国より少ないのか、などの説明がなく、全体像がつかみにくかった。その一方では「米国と並ぶ軍事大国を目指している」、あるいは「(空軍は)冷戦時代さながらの緊張が続いている」などと解説し、ロシアの軍事大国化をやたら強調している感じがする。

 ところが実際には、ロシアの軍事予算は米国の10分の1程度であり、人員兵力も中国の225万人、米軍の150万人などに比べて少ないのが実態だ。ロシアが今、ソ連崩壊で失った軍事力を復活させつつあることは確かだが、脅威を強調しすぎるのはどうかと思う。やはり客観的な数字を示して説明しなければ、いたずらに恐怖をあおることになりかねない。

 世界の国々の状況を克明に取材して、われわれ国民に現実をきちんと教えてくれるのは、いまや資金力の豊富なNHKしかできないことだ。それだけに、正しく客観的に報道していただきたいものだ。
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