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柔道は「御家芸」と言ってきた日本だが、ロンドン五輪では男女とも不振で、金メダル獲得の目標達成は難しい情勢だ。日本とは対照的に好調なのはロシア勢で、早くも金メダル2個、銅メダル1個を獲得した。いずれも日本勢を破っての快挙だが、日本にとっては思わぬ“伏兵”にやられたというのが本音だろう。
柔道の種目は大会2日目の28日から始まり、60キロ級の平岡拓晃選手に金メダル第1号の期待がかかったが、決勝戦で日本の期待を打ち砕いたのがロシアのガルスチャン選手。それも「技あり」の判定に異議が出され、一本に訂正された後味の悪い敗戦だった。
30日の男子73キロ級では、中矢力選手が順調に勝ち進んだが、またもや決勝で日本の金メダルを阻んだのがロシアのイサエフ選手。この日は女子57キロ級で松本薫選手が日本初の金メダルを獲得、男子の敗戦ショックは幾分やわらいだが、日本にとっては惜しい金メダルを逃した。
さらに、31日の男子81キロ級で中井貴裕選手は準々決勝で敗戦。敗者復活戦で勝ち上がり、3位決定戦に進んだが、ここで日本の銅メダルを阻んだのが、またしてもロシアのニフォントフ選手だった。3位決定戦の取り組みは偶然とも言えるが、3回もこうしたことが続くと「ロシア憎し」の気分が日本国内に広がらないとも限らない。
今回のロシア勢の快進撃は、ロシア人にとっても「予想外の勝利」。なにしろ、五輪でメダルが取れたのは、アフガニスタンへの侵攻で西側がボイコットした1980年のモスクワ五輪以来というので、ロシアのメディアは連日、自国選手の快挙に舞い上がっている。柔道躍進の理由についてロシアの専門家は、招致したイタリア人コーチの指導が良かったことを上げているが、それに加えて巨額の報奨金についても触れている。
今回のロシア政府からの報奨金は、金メダルだとなんと400万ルーブル、ドルにすると100万ドル、円に換算して約8千万円である。銀メダルで250万ルーブル、銅メダルでも170万ルーブルもらえるのだ。このほか、選手の出身地やスポンサーからも賞金や賞品が出る。ちなみに、金メダルのガルスチャン選手には外車(メルセデス)と60平方米のアパート、同じくイサエフ選手には3000万ルーブル相当が贈られるという。
さすがにロシア国内からも「報奨金が多過ぎる」との批判が起きているが、ソ連時代の「国家丸抱え」とは違い、今の時代は選手を続けていくのは至難の技だけに、「そのぐらい払っても当然だ」と擁護する声も少なくない。日本も、金メダルが取れないと嘆く前に、アスリートをもっとサポートする方法を考えたほうがいいのではないだろうか。(この項おわり)