飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

福島原発事故がチェルノブイリ事故と異なるという3つの理由!!

2011年03月20日 10時12分14秒 | Weblog
 東京電力福島原発の事故は原子力施設事故の国際評価尺度で国内最悪の5とされ、史上最悪のチェルノブイリ事故の7に迫った。今後さらに事態が悪化すればチェルノブイリ事故のような恐ろしい事態になるのだろうか。政府や学者は「チェルノブイリとは違う」というが、なぜか詳しい説明は聞いたことがない。

 こんな不安を抱いている人が多いのではないだろうか。かくいう筆者も科学には疎いので、なぜチェルノブイリ事故のようにならないか、分からなかった。そこで新聞記事やネット記事を調べていて「goo」ウエブサイトでナショナルジオグラフィックニュースを見つけた。

 このサイトに「福島原発事故、二大事故との違い」という記事があり、それを読んだら疑問が氷解した。福島原発の事故と1979年の米スリーマイル島原発事故、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故の比較を分かりやすく説明していた。その概要をご紹介したい。

 記事ではまず、以前の二大事故と福島原発事故と大きく異なる点を3つ上げている。第一は、原子炉の種類が違う点だ。福島原発は沸騰水型軽水炉、スリーマイル島は同じ軽水炉だが、加圧水型だった。両方ともそれぞれ自己制御性を備え、炉内の温度が上昇すると自然に核分裂反応が弱まり、出力が減少するという。

 ところが、チェルノブイリは黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉で、温度が上昇すると出力が上がり、さらに温度が高まるため原子炉の暴走が生じやすいという。この型はチェルノブイリ事故の後、危険な原子炉とされ、現在はほとんど残っていない。

 二番目は、事故原因で、スリーマイルとチェルノブイリはともに機器の欠陥と人為的な操作ミスが重なったとされている。とくにチェルノブイリの場合は、原子炉の動作試験が行われていて、計画自体に不備があった上、実施時にも複数の規則違反があったとされる。このため予期しない運転出力の急上昇により蒸気爆発を起こし、原子炉のふたが破損、溶融した燃料と蒸気が反応してさらに激しい爆発が起こり、炉心も溶融し建屋もろとも爆発炎上したという。

 三番目は、放射線漏れについてだが、福島原発はスリーマイル島と同様に原子炉には燃料被覆管、圧力容器、格納容器の3種の壁で放射能漏れを防いでいるが、チェルノブイリは格納容器がない設計だった。さらに減速材として黒鉛を使用していたので、黒鉛の火災が原因で放射性物質が上空に舞い上がり、原発から150㌔離れてた場所まで高濃度で汚染されたという。

 以上のように、福島原発はスリーマイル、チェルノブイリの事故を教訓に多いに改善されてきていて、かなり安全性が高いはずだった。今回は政府や学者がいう「想定外の津波」で冷却装置が流されるなど、予想を超えた被害が今回の事故につながったということのようだ。

 そうだとすると、なぜ政府も学者ももっと丁寧に説明してチェルノブイリ事故のような悲惨な大事故にはならないと国民を説得しないのだろうか。ただ「安全です、安全です」と繰り返すだけでは国民は「何か隠しているのでは」と疑心暗鬼に陥り、かえって不安感が増すことになりかねない。

 「人生において恐怖すべきことは何もない。あるのは理解すべきことのみである」。これは放射能を発見したマリー・キュリー夫人の言葉だと浜矩子同志社大教授が19日付けの毎日新聞「時代の風」で書いている。まだ事故が今後どうなるか予想もつかないが、この言葉を信じて事態を冷静に見守りたい。
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