飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアの空港自爆テロ犯人は「チェチェンとは無関係」とプーチン首相!

2011年01月27日 10時47分59秒 | Weblog
 ロシアの首都モスクワのドモジェドボ国際空港で24日起きた自爆テロ事件の犯人は、当初予想されたチェチェン共和国のテロリストではなく、周辺地域のテロリストの可能性が強まっている。捜査当局は27日、ロシア出身の容疑者の顔写真を公開し、全国に指名手配した。

 指名手配されたのは、北カフカスに隣接するロシア南部・スタブロポリ地方を拠点にするテロ組織「ノガイ・バタリオン(ノガイ大隊)」の一員。ロシア生まれのビタリー・ラズドブトコ(32)で、イスラム教の原理主義ワッハーブ派の信者とされる。このテロ組織は昨年秋、治安当局に急襲され、仲間が逮捕、死亡したことから今回、報復に出たのではないかとみられている。

 これより先、プーチン首相は記者団に「私が得た情報によると、今回のテロはチェチェン共和国とは関係ないようだ」と語っている。このため犯人は、チェチェン周辺地域に住むイスラム系のテロリストとの見方が出ていた。

 爆発は空港ターミナル1階の国際線到着ロビーで起きたが、死亡した35人の中に手配された容疑者に似ている人物がみつからず、捜査当局は逃走中とみている。容疑者は昨年10月から行方がわからず、親戚はゲリラ組織に殺害された可能性があると話していたという。

 爆発により死亡した35人の身元はすでに確認され、このうち8人が外国人と判明している。外国人の内訳は、オーストリア人2人、タジク人2人、ウズベク人、ウクライナ人、ドイツ人、英国人各1人となっている。

 メドベージェフ大統領は、空港の警備が甘かったなどとして空港警備責任者ら4人を解任し、さらに調査を進めて責任者を処罰するとしている。年末の下院選、来年春の大統領選を視野に入れ、責任追及が自分に向かわないよう、「トカゲの尻尾切り」をする方針である。

 だが、ロシアの世論は秩序維持に敏感なだけに、今回の空港テロで大統領の支持率はかなり下がる可能性がある。すでに昨年暮れの赤の広場でのサッカーファンによる暴動の影響で大統領の支持率が下がっているとの報道もある。今回の事件でさらに下がると、大統領の再選に黄信号が出ないとも限らない。

 大統領は事件後のテレビインタビューで、来年の大統領選への立候補について「すべては今後の状況次第だ。私は年内に立候補するかどうか決めるが、国家にとって国民にとって正しいと判断すれば立候補する」と述べた。自ら立候補するかどうかを決めると明言したのは異例で、本腰を入れて再選問題に向き合う意思を内外に示したといえる。

 一方、再度大統領職に戻るかどうか注目されるプーチン首相は、当分の間、大統領の「お手並み拝見」となろう。テロ事件など安保・治安問題は大統領の直轄事項だからで、メドベージェフ大統領に対処能力がないと見切れば大統領の立候補を断念させ、自ら立候補することになる。両者の今後のせめぎあいを注視したい。
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