飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

2011年の日本外交:菅政権は東アジア重視の政策を推進せよ!

2011年01月10日 10時56分04秒 | Weblog
 鳩山前政権は「対等な日米関係」とともに「アジア重視」を日本外交の中心にすえたが、菅政権は「対等な日米関係」も「アジア重視」もないがしろにしている。そして米国主導の「環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定」(TPP)加盟に向けて突っ走っているようだが、それでいいのだろうか。

 鳩山前政権が打ち出した「東アジア共同体構想」はアジア重視の具体化の柱だったはずだ。言い換えれば、日米関係とバランスを取るためのアジア重視の表れだった。東アジア共同体構想が東南アジア諸国連合(ASEAN)各国から歓迎されたのも、アジアで米中の存在感と均衡を取りながら、アジアとの関係を深めていこうという日本側の姿勢が評価されたからだ。

 アジアの中でも東アジアは南シナ海、東シナ海などの海洋交易路でつながり、人口32億人の経済圏となっている。このアジアの活力を日本経済に取り込むとともに、友好関係を高め、中国に脅威を感じている人々と連携することは日本にとってプラスになる。日本が国連安保理常任理事国入りするためにも、アジア諸国の協力は欠かせない。

 今大きな論議を呼んでいるのは、日本が「環太平洋」と「東アジア」のどちらの組み合わせを取るかだ。菅政権は今年6月をメドにTPPに参加するかどうかを検討するとしているが、ヤミクモに「環太平洋」に向かっているというのが実態だろう。

 私の友人の篠原孝農水副大臣は、こうした菅政権の姿勢に対し「TPPは国の形をゆがめる」と自身のメールマガジンで警告を発している。民主党屈指の農政専門家である篠原氏によると、TPPに参加すると10年以内にすべての物品の関税をゼロにしなければならず、農林水産業は約5兆円の生産減になるという。現在約8兆円なので、生産は半分以下に減るというのだ。由々しき問題である。

 問題はそれだけではない。TPPは米国の対中封じ込め策の一環であり、これに加盟すると日本が米中の対立に巻き込まれることになる。今いたづらに中国と事を構えるようなことはすべきではない。米国に忠義立てするあまり、国の進路を誤らせるようなことは慎むべきだ。

 日本はまず、東アジア諸国と関税などの柔軟な自由貿易協定(FTA)を結び、そのネットワークを広げながら、アジア各国と友好・協力関係を広げていく方法をとるべきだ。最近の一部メディアの論調に乗って「バスに乗り遅れるな」とばかり、TPP加盟に向かって猛進するべきではない。
 
 菅政権がこうした軽挙妄動をするのも、きちんとした国家戦略がないからだ。じっくり検討し、国家百年の計を立ててから実行に移すべきだ。今年は卯年。ウサギのように長い耳で情報を把握し、慎重に行動すべき時だろう。
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