飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北方領土問題は再び”冬の時代”に逆戻り!

2009年07月10日 10時52分03秒 | Weblog
 9日、イタリアのサミット会場で行われた日露首脳会談では予想通り、北方領土問題で進展がなく、今後の見通しもないまま終わった。このところのロシア側の動きを見れば結果は明白であり、理由なく日本側に期待感を持たせた日本政府の失態といってもいい。

 こうなった理由は大きくいうと2つに集約される。第一は、麻生首相の「北方領土不法占拠」発言、議会の改正北方領土問題等解決促進特別措置法成立と、相次ぐ日本側の対応が強硬姿勢と受け取られ、ロシア議会や国民の反発を呼んだからだ。こうした事態を利用して北方領土返還阻止勢力が動いた面もあるが、日本側が「これまでと方針は変わっていない」といい続けるだけで十分な説明を行わなかったため、ロシア側に間違ったメッセージが伝わったことは明らかだ。

 第二は、最近の日本の政局をみていれば麻生政権は死に体同然で、ロシア側がとても国家の根幹に関わる領土問題を解決できる力はないと見たことは十分想像できる。このこと自体は日露双方にとっての不幸ともいえ、「日本の政権が磐石なときはロシア側が弱体化し、逆にロシア側がいいときは日本側がだめということの繰り返しだった」(日本外務省)という事情もある。

 ロシアの有力紙コメルサントは10日付けの新聞で「今回は日露首脳会談が行われないとの見方が日露間で出ていたが、結局行われた」と書いており、ロシア側から今回は会談をやめましょうという打診があったのかもしれない。それほどロシア側は冷めていたといえよう。

 ところが、日本外務省高官は「今回はロシア側がボールを返す番だ」と強調し、大きな期待感を振りまいていた。これに乗った形のマスコミもマスコミだが、日本側の”外交べた”を露呈したことは明白だ。

 この結果、麻生政権での領土問題の解決はもうなくなった。あとは総選挙後の新政権が引き継ぐことになるが、今予想されている選挙結果では民主党政権となることが有力視されている。だが、民主党政権になれば当分政権基盤が弱い状態が続き、領土問題を提起するまでには相当な時間がかかるだろう。残念ながら北方領土問題は当分の間”冬の時代”に入ることは避けられない。