飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシア絵画の高揚期を伝える国立トレチャコフ美術館展

2009年05月25日 11時19分24秒 | Weblog
 遅ればせながら先日、渋谷東急文化村で開かれているロシア国立トレチャコフ美術館展を見てきました。特派員としてモスクワ駐在中に何度か見に行きましたが、改めて鑑賞し「忘れえぬ女」(原題は「見知らぬ女」)をはじめ、ロシア革命前のロシア人を描いた肖像画に見とれました。

 人気のある展覧会だけに入場者が多かったものの、絵画と絵画の間のスペースに余裕があったので割合ゆっくり鑑賞することができました。個人的にはレーピンやシーシキンの風景画が好きなのですが、今回の展示作品の中では、チェーホフ、トルストイ、ツルゲーネフら文豪の肖像画が目立っていました。(ドストエフスキーの肖像画がなかったのが残念ですが)これらの肖像画を見ていると、作家の内面が浮き上がってくるような精神性を強く感じました。

 そのほか、取材旅行中のシーシキンの肖像画、レーピンが自分の娘を描いたもの、セロフが描いた同僚らしい人の肖像画などが印象的でした。いずれもリラックスした、あるがままの様子を描いていて、その人の人間性がよく分かるような気がしました。日本で肖像画というと、一張羅の洋服を着た、堅苦しいものが少なくないだけに、ロシア人のおおらかさを見た思いがしました。

 ロシアでは19世紀半ばからロシア革命に至る時代は、ドストエフスキーやトルストイらの文豪が輩出し、文学が花開いた時期ですが、絵画の世界でも写実派や印象派の画家が活躍した時代であることを改めて実感しました。この芸術性は旧ソ連時代に封印されたわけですが、今もロシア人に脈々と伝えられているに違いありません。今回の展覧会を見て、その思いを強くしました(この展覧会は6月7日まで毎日開催しています)。
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