飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアの双頭政権は未曾有の金融危機を乗り切れるか?

2008年12月29日 14時47分39秒 | Weblog
米国発のサブプライム・ローン危機の影響は少ないと見られていたロシアだが、ここにきて「来年は過去9年間で最悪の年になる」(クドリン財政相)と危機感が高まっている。早くも鉄鋼、自動車産業などで工場閉鎖やレイオフが始まっているうえ、輸入車の関税引き上げで反政府デモが起き、社会不安が募っている。来年はさらに経済が悪化するのは確実だ。今春成立したメドベージェフ大統領・プーチン首相による双頭政権は、この危機を乗り切ることができるだろうか。

クドリン財政相は27日のテレビ・インタビューで、来年の国家予算は520億ドルから865億ドルの赤字になるが、積立基金からの取り崩しでカバーできるとの見通しを示した。ただ、原油価格がさらに下がった場合は支出を調整する必要があるが、減らすことはないと述べ、公的機関の従業員と年金生活者に対し、心配しないよう呼びかけた。

だが、今月15日に行われた世論調査機関の調査によると、6割以上の人が将来に不安を抱いており、「経済は相当悪化する」と考えている人が9割にも上っている。さらに、75%の人が地域で失業者が増えると予測している。

とくにロシアで心配されているのは、ウラルの鉄鋼都市マグニトゴルスクのように、一都市に一つの産業あるいは工場しかないところが全国で700ヵ所もあることだ。その産業や工場が破綻したら、その都市全体の住民が食べていけなくなるからだ。日本で言えば日立市などの「企業城下町」がそれにあたる。これは、一つの産業や企業に特化した旧ソ連の産業政策の結果といえるが、現政権も有効な解決策を持っていないのが実態だ。

さらに、各地で失業者が急増している現状に国民の我慢も極限に達しつつあるという見方が強まっている。それを示唆する数字がロシアの政治エリートらの支持率調査だ。11月中旬に実施した調査では、プーチン首相の支持率は79%だったが、11月下旬の調査では68%にダウンした。メドベージェフ大統領も56%から39%に下がっている。わずか1週間に10%以上も下がった原因は経済の悪化しか考えられない。とすれば、12月にはいってからさらに下がっているのは間違いないだろう。

現政権は、大統領を中心とする国際リベラル派と、プーチン首相を中心とする国家経済介入派のバランスの上に成り立っている。今回の危機で、シロビキと呼ばれる旧KGB出身者らの経済介入派が勢力を強めているとされる。経済危機対策に失敗すればプーチンがメドベージェフを切り捨てる可能性もある。だが、経済が破滅的になればプーチン自身に国民の批判が向かうことも考えられる。いずれにしろ、今回の危機を乗り切れるかどうかに現政権の成否がかかっている。
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