![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_do.gif)
アンナさんは06年10月7日、モスクワの自宅アパートで射殺され、捜査当局は取材活動に絡んだ事件と見て捜査。今年6月に殺人罪で3人、職権乱用と強要罪で元連邦保安局(FSB)職員1人の計4人を起訴したが、殺人の実行犯は特定されたものの起訴されなかった。
これまでの審理で、新事実や新証言が次々に明るみに出た。まず第一に強調したいのは、実行犯とされる人物がFSBの工作員だった疑いが強まったことだ。殺人罪の被告が住んでいたアパートから運転免許証が二つ見つかった。ところが、二つの免許証には同じ顔写真が張ってあり、所持者の名前は別だった。つまり、一つは実行犯の名前であり、もう一つは偽名だったのだ。実行犯はFSB職員と一緒に活動していたとの証言もあり、今回の事件後、偽名のパスポートで海外へ逃亡した可能性が高いとみられている。
二番目は、殺人罪で起訴された被告のおじが法廷で証言し、殺人を依頼された際、200万ドルが支払われたと聞いたと暴露した。この男はウクライナのビジネスマン殺害を企て懲役15年を言い渡された人物だが、「この話は捜査グループの一員から聞いた」と証言したという。
三つ目は、起訴された元FSB職員は、アンナさんの住居を確認し、その地区のチェチェン人の世話役に教えたことが判明した。第一の事実とあわせてみると、FSBがこの殺人事件に深く関わっていることが浮かび上がる。
以上の事実から、この事件は誰かがFSB関係者を使ってアンナさんを殺害した「請負殺人」であることがはっきりしてきた。問題は殺人を依頼した人物が誰かだ。ロシア政府は事件当初、英国へ亡命した政商のベレゾフスキー氏が黒幕とみていたが、起訴状では同氏の名前はなかった。では、いったいだれなのか。この裁判の進展によっては、その人物の名前が明らかになる可能性もある。
このように、裁判が面白くなってきたのは、司法改革を熱心に進めているメドベージェフ大統領の影響かもしれない。裁判が活気付き、裁判官や司法関係者が公正な裁判を行えば、シロビキなどの武闘派高官による強権政治が暴かれ、ロシア社会が変わるかもしれない。