飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

殺害されたポリトコフスカヤ記者の裁判から目が離せない!

2008年12月16日 22時18分03秒 | Weblog
チェチェン紛争でロシア当局の住民弾圧を告発した女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが何者かに殺害されてから約2年。この事件に関連して4人が起訴され、いまモスクワの軍事裁判所で審理が続けられている。殺人の実行犯は起訴されず、いつものように事実が究明されないまま終了するかと見られていたが、新証拠や意外な証言が飛び出し、とんでもないことが起きそうな展開になってきた。

アンナさんは06年10月7日、モスクワの自宅アパートで射殺され、捜査当局は取材活動に絡んだ事件と見て捜査。今年6月に殺人罪で3人、職権乱用と強要罪で元連邦保安局(FSB)職員1人の計4人を起訴したが、殺人の実行犯は特定されたものの起訴されなかった。

これまでの審理で、新事実や新証言が次々に明るみに出た。まず第一に強調したいのは、実行犯とされる人物がFSBの工作員だった疑いが強まったことだ。殺人罪の被告が住んでいたアパートから運転免許証が二つ見つかった。ところが、二つの免許証には同じ顔写真が張ってあり、所持者の名前は別だった。つまり、一つは実行犯の名前であり、もう一つは偽名だったのだ。実行犯はFSB職員と一緒に活動していたとの証言もあり、今回の事件後、偽名のパスポートで海外へ逃亡した可能性が高いとみられている。

二番目は、殺人罪で起訴された被告のおじが法廷で証言し、殺人を依頼された際、200万ドルが支払われたと聞いたと暴露した。この男はウクライナのビジネスマン殺害を企て懲役15年を言い渡された人物だが、「この話は捜査グループの一員から聞いた」と証言したという。

三つ目は、起訴された元FSB職員は、アンナさんの住居を確認し、その地区のチェチェン人の世話役に教えたことが判明した。第一の事実とあわせてみると、FSBがこの殺人事件に深く関わっていることが浮かび上がる。

以上の事実から、この事件は誰かがFSB関係者を使ってアンナさんを殺害した「請負殺人」であることがはっきりしてきた。問題は殺人を依頼した人物が誰かだ。ロシア政府は事件当初、英国へ亡命した政商のベレゾフスキー氏が黒幕とみていたが、起訴状では同氏の名前はなかった。では、いったいだれなのか。この裁判の進展によっては、その人物の名前が明らかになる可能性もある。

このように、裁判が面白くなってきたのは、司法改革を熱心に進めているメドベージェフ大統領の影響かもしれない。裁判が活気付き、裁判官や司法関係者が公正な裁判を行えば、シロビキなどの武闘派高官による強権政治が暴かれ、ロシア社会が変わるかもしれない。
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