ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『サラの鍵』

2011-10-18 00:14:16 | 新作映画
(原題:Elle s'applelait Sarah)



----これって、去年の東京国際映画祭で話題になった映画だよね。
「うん。周りで観た人のほとんどがベストとして推していた。
それを裏付けるかのようにこの作品は、
最優秀監督賞と観客賞をW受賞している。
さあ、どんな映画だろうと思って臨んだわけだけど、
なるほどこれは、いわゆるナチスの迫害を題材にした映画」

----えっ?でもフランスが舞台だよね。
「うん。
実はフランスでもナチス占領下でユダヤ人狩りは行なわれていた。
ぼくは、その昔、
ジョセフ・ロージー監督がアラン・ドロンを主演に撮った
『パリの灯は遠く』でその事実に愕然とした記憶がある。
あの映画は、
同一名のユダヤ人と間違われた男の物語。
76年度フランス・アカデミー賞作品賞、監督賞、美術賞を受賞している。
ただ、本作は、95年に当時の大統領シラクが
フランス国家がユダヤ人迫害に加担していたという事実を認めた後だけに、
その衝撃の大きさは推して知るべし。
本作でも、フランス当局がユダヤ人狩りを行い、
水もトイレもない屋内競技場に収容される」

----トイレも?
それって不衛生だよ。
「うん。実際に周囲は異臭が立ち込めたらしい。
みんなそこかしこで用をたすワケだから…。
さて、物語はこの収容の犠牲となったあるユダヤ人家族の長女、
10歳になる少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)を中心に進んでゆく。
彼女は、まさかそんなことになるとは思わず、
弟を助けたい一心で弟を納戸に隠して鍵をかける。
自分たちがすぐに帰れないことを知ったサラは、
弟のことが気になって仕方がない。
だって、何日も競技場に閉じ込められているわけだから。
競技場から臨時収容所に連れてこられたサラは脱走を決意。
自分を解放してくれた少女と、ともに鉄条網のすき間から逃げようとするが…」




----ニャるほど。
これは言い方は悪いかもだけど、
スリリングな映画だね。
「うん。そこがいわゆる声高に反ナチを語る映画とは一線を画している。
さらに巧いのは、
この事実が、現代のアメリカ人ジュリア(クリスチャン・スコット・トーマス)によって
明らかになること。
元より、このフランス警察によるユダヤ人逮捕に関心を持ち、
取材を進めていたジャーナリストの彼女は、
偶然にも、自分たちが住もうとしていた家が
かつてサラたちが住んでいた家だと言うことを知る。
やがてジュリアは、
サラが心に深い傷を負い、
それは一生離れることがなかったという事実を知る。


さて、ここまでだと、
反ナチ映画にとどまるんだけど、
この作品がぼくの興味を引いて止まなかったのは、
彼女の取材により、
それまでその事実を知らなかった人々を中心に、
多くの人たちを巻き込んでいくこと。
ジャーナリストの真実追求は時として
“知らない方が幸せだった”人を
平穏な生活から引きずり出すこともある」





----ふむ。確かに。
「映画というのは
こういう糊シロ部分から別のものが膨らんでいく。
ぼくはそれがオモシロいと思う。
戦争反対とか、平和が一番とか、
人権派何よりも大事ということ、
確かにそれはいまだに実現されていないだけに
言い続けていくのは重要だとは思うけど、
みんながみんなそれをやっていては画一的。
表現としての広がりは望めない。
この映画は、(ちょっとネタバレになるけど)、
自分の取材がもたらした結果に煩悶するジュリアが
最後にその相手と和解に至る過程が感動を呼ぶ。
ある程度の想像が付いたとはいえ、
このラストは巧い。
永遠に心に残る名シーンだね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「話題になるのはそれだけの理由があるのニャ」ぱっちり


※ほんとによくできた映画だ度

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画像はスペイン・オフィシャル・ギャラリーより。