ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『火垂るの墓』(実写版)

2008-04-15 23:32:58 | 新作映画
----この映画って確かアニメになかった?
「うん。高畑勳監督のジブリ作品だね。
『となりのトトロ』と併映されたこともあって。
知らない人はいないくらいに有名。
実写化には相当な勇気がいったんじゃないかな」

----でも、それでも映画化したわけだ。
「そうだね。
当初は『紙屋悦子の青春』が遺作となった
黒木和雄監督で企画が進行。
彼を師と仰ぐ『誰がために』の日向寺太郎監督が
すべてを引き継いだということらしい」

----お話は、神戸空襲で病身の母を亡くした兄妹が
西宮の遠い親戚宅を訪ねるものの、
冷たい仕打ちに耐えきれず、
2人で防空壕の中で生活する……
確か、こんな感じだったよね。
「そう。
高畑勳版は、情感たっぷり。
また、当時5才11ヶ月だった白石綾乃の
節子の声が観る者の涙を誘った」

----そうだったよね。
フォーンも、いつ観ても泣いちゃうもの。
今回も、やはりボロボロになりそう。
「う~ん。
ところが、これが最初から最後まで
徹底したリアリズムで押し通しているんだ。
泣かせようという意図はあまり感じなかったね」

----へ~っ。でもそれも一つの見識ニャのかも。
「そうだと思うよ。
原作の舞台である兵庫にオールロケ。
木村威夫監修による見事な美術と相まって
あの時代をその空気感に至るまでリアルに再現している」

----それは一見の価値ありだね。
「木村威夫の存在は相当に大きかったみたいだ。
『戦争体験者にとって、
あのときのことを再現しても意味がない。
再現ではなく、表現するんだ。
体験の有無は関係ない』
こう言って、彼は
映画化にプレッシャーを感じる日向寺監督を励ましたらしい」

----「再現ではなく、表現」。う~む。名言だ。
俳優はどうだったの?
「今回も節子を演じた女優が素晴らしい。
演じているのは畠山彩奈。
撮影当時、まだ5歳だったようだけど、
果たして彼女に死の意味とか本当に理解できているのか…。
おそらく、自分の役の状況を把握しないまま演じているんだろうけど、
そこがかえってリアルな4歳の少女・節子を生み出している。
『ポネット』でヴェネチア国際映画祭で主演女優賞を最年少受賞した
ヴィクトワール・ティヴィソルを思い出したね」

----そうか。彼女の役も母の死と直面していた。
「この映画、他にも驚くようなキャスティングがなされていて、
まず2人の母親役に7年ぶりの映画出演となる松田聖子。
目立ちたがり屋のイメージが強い彼女が
顔をほとんど包帯で覆い隠して被災者を演じている。
そして圧巻なのが意地悪なおば役の松坂慶子。
普通、こういう汚れ役は、
顔からして鬼婆風の作りをするものだけど、
彼女はもとよりそういうタイプではない。
でも、観ていてぶん殴りたくなるくらい憎たらしい。
ある意味、松坂慶子の底力を感じた映画だったね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でも悲しいお話だよニャ」悲しい


※思ってたのとかなり違う、端正な映画だ度
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