ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『世界で一番美しい夜』

2008-04-10 12:14:10 | 新作映画
----この映画2時間40分もあるんだって?
ちょっと体力と気力とを要しそうだね。
「うん。ぼくも観る前はそう思っていたんだけど、
ある意味、計算がなされていて意外にすんなり観られる」

----計算?
「まず、冒頭のワンエピソードが
切り絵によるアニメーション。
そこで語られるのは
文明を捨て退化した男が火を発明するお話。
まずこの掴みによって
この映画が壮大なホラ話であることを示唆する。
続いて語られる本篇の構成が、
日本一出生率が高い村として
内閣総理大臣から表彰を受けることになった
“要村”の女子中学生が
その発端を語るというもの。
しかもその中で、さらに各人物の過去が語られる。
パゾリーニの『アラビアンナイト』を思い出したね」

----で、どういうお話が展開されるの?
「それは観てもらった方がいいかも。
それよりも、
まずはこの映画に出てくるヘンテコな登場人物たちを紹介しよう。
主人公は罠にはハメられてこの村に左遷された水野一八(田口トモロヲ)。
島には、同じくここに流された
彼の先輩(佐野史郎)や後輩(松岡俊介)に加えて、
欲求不満の村長(大河内浩)、
ロリコンで古代文明オタクの校長(神戸浩)、
旧弊的でサディステックな宮司(若松武史)、
年齢800歳と噂される老婆(角替和枝)、
フォークを熱唱する漁師(三上寛)、
あまりにも頭が良すぎて白痴扱いされている少女(美知枝)、
船に住んで過激派と噂される謎の男(石橋凌)、
そしてスナックの美しいママ(月船さらら)と
外国人従業員(江口のりこ)……」

----ニャるほど。そんなに多くの人たちが絡むんじゃ、
お話はややこしくなりそうだ。
「でしょ。
これは誰もがすぐに気づくと思うけど、
キャラ設定、物語の構造などは天願大介監督の父である
故・今村昌平の『神々の深き欲望』を思わせる。
ただ、あそこまでの土着的猥雑なエネルギーはここにはなくて
同じく“セックス”が重要なテーマの一つとなりながらも
もっとポップに描かれる」

----えっ。これってセックスの物語ニャの。
「うん。
田口トモロヲの言葉を語れば
『ピース・レボリューション・ファンタジー』。
これはスチールも公開されているから
喋ってもいいことだとと思うけど…。
クライマックスはアントニオーニ『欲望』、
いまの人には『パフューム ある人殺しの物語』と言った方が分かりがいいかな。
あと、『11′9″01/セプテンバー11 日本篇“おとなしい日本人”に繋がるところも。
ただ、全体的にどこか軽いんだなあ。
よく言えばポジティブではあるんだけど、
これがやはり世代の違いなのかも…。
でもタイトルの意味はなるほどと思うよ。
たった一日でいいから、
全世界の子供たちがほんとうに安心して
ぐっすり眠れる夜…」

----ほんとうに、そういう夜がくればいいよね。

           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも安心して寝るのニャ」もう寝る

※『神々の深き欲望』は必見だ度
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