ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ペルセポリス』

2007-11-05 23:32:29 | 新作映画
(原題:Persepolis)

-----これフランス映画ってホント?
どう見てもキャラクターの顔が違うんだけど…。
「うん。監督のマルジャン・サトラビがイラン出身
(共同監督のヴァンサン・パロノーはフランス人)。
これは彼女自身の自伝的グラフィック・ノベルのアニメ化。
そうそう、『オフサイド・ガールズ』のオリジナル・ポスターも
マルジャビが手がけたらしい」

----へ~っ。才能豊かニャんだね。
ところでこの映画、どんな内容ニャの?
「一言で言えば、イラン現代史。
物語は現代のフランス空港オルリーからの回想で始まり
1979年の主人公マルジャン(通称マルジ)9歳の時へと飛ぶ。
彼女の死んだおじいちゃんは王家の血を引く共産主義者。
そして両親は自由主義思想を強く持つ。
しかもオジさんはアナーキスト。
そんな彼らの下で育っただけにマルジも反骨精神が旺盛。
映画は、このマルジの目を通して不安定に揺れるイランの国情を綴っていく」

-----えっ?でも彼女の成長史でもあるんでしょ?
「うん。こんな国にいてはいけないと、
両親はマルジをオーストリアのウィーンに留学させる。
そこで彼女はデカダンな学生たちに囲まれながら自分も堕ちていく。
母国の苦しみを思い罪悪感に苛まれながらも
享楽的生活を送る彼女は、
最後はほとんどホームレス状態。
このあたりは、観ていてかなり辛かったね」

----でも、イランの政情ってよく知らないからニャあ。
「この映画は、そこが実にコンパクトにまとめてある。
パーレヴィ王朝がいかにしてできたか、
そしてどのようにして崩壊したか、
代わりに生まれた革命政府の実態とは?
あるいはイラン・イラク戦争勃発と
戦争が長引いた理由。
その後の政府の実態など、
何も知らなくてもすぐ理解できるように
かなり分かりやすく説明してくれる。
しかもそれが多感な女性の目線で描かれるものだから、
ある意味、目から鱗だったね」

-----どういうこと?
「たとえばイランでは
女性が家族以外の男性の目に触れないようにと
チャドルを身につけさせられているよね。
そのため、ぼくなんかには
イランの女性の表情をうかがい知ることができず、
彼女らはじっと服従しているように見える。
でも、ちょっと考えれば分かることだけど、
自由を制限されることを好む人なんて
そうそういるわけはない。
この映画では、そんな締め付けに対する若者の素直な反発や
当局に隠れながら青春を謳歌する姿が描かれる。
一部、思想信条に傾倒している人は除き、
若者の異性への興味や欲望、また自由への渇望は世界万国共通ということを
改めて思い知らされたね」

----ニャるほど。これは観てみたくなったニャあ。
「でしょう。
ブルース・リーとアイアン・メイデンが好きで
『アイ・オブ・ザ・タイガー』を歌って勉強するイラン女性。
それだけでも見応え十分だと思うよ」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「声優もよさそうだニャ」ぱっちり


※カンヌ国際映画祭審査員賞受賞だ度

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猫ニュー

画像はフランス・ポスターより。