ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

2007-03-29 10:29:33 | 新作映画
----この映画、お芝居が基になっているんだって?
「そのようだね。
『生きてるだけで、愛。』が芥川賞にノミネートされた本谷有希子という人が
旗揚げした『劇団、本谷有希子』の公演作。
その後、小説化されて三島由紀夫賞候補にもなったらしい」

----お芝居と言うと、
映画に比べて空間が閉じられている気がするけど…。
「う~ん。
確かに舞台は北陸の山間部の村、
なかでもある家が中心となっている。
この村は、どこに行っても携帯の電波が届かないというから、
確かに隔絶されてはいるね」

----ニャるほど。
で、そこで何が起こるの?
「両親の訃報を受け、
東京から戻ってきた姉・澄伽(佐藤江梨子)。
彼女は女優を目指して上京していたわけだけど、
実はこれがとんでもなく意識過剰。
自分の実力がないのに、すべてを周囲のせいにしてしまう。
その理由を、家族のとりわけ妹・清深(佐津川愛美)の犯した“罪”にあると家族をいたぶり、
清深はその姉のいたぶりに怯えている。
そんな彼女をなぜかかばう兄・宍道(永瀬正敏)。
そして東京から嫁いできた、お人好しなまでに明るい兄嫁・待子(永作博美)。
その一触即発の関係がカタストロフィに至るまでを
くすくす笑いを伴うブラック・ユーモアを交えたシニカルな視線で描いていく」

----へ~え。オモシロそうじゃニャい。
でも、監督がCM畑の人で、これが劇場用映画第一回作品……。
ちょっとそこが不安だけどニャ。
「うん。こればかりは観てみないと分からないよね。
確かにCM出身の監督の中には、
自分が作り出す一風変わった<画>に溺れたり、
その世界の独自の<間>を新しいと信じきっている監督もいるからね」

----あちゃ、厳しいことを言うね。
で、この映画はどうだったの?
「この映画にも、目を引く<画>はいくつも出てくる。
たとえば雑誌の中のインタビューされている監督・小森哲夫(土佐信道)が
動画となって動き出したり、
その監督の手紙の文字を背景に監督が文通相手の澄伽に喋ったり。
さらには、突然漫画のコマ割りになったり。
だけど、それらが映画の中に違和感なく溶け込んでいる。
つまりこれは中島哲也『下妻物語』と同じで、
その<画>がきちんとしたリズムを伴って物語を牽引していっているわけだ。
しかも深い人間洞察に基づいた物語がベースとなっているから、
スクリーンから目が離されることはない」

----ありゃりゃ、べた褒めだニャ。
話は暗そうなのに……。
「いやあ、そりゃあ暗いよ。
澄伽のキャラなんて痛すぎてへこむほど。
だけど<画>によって物語を物語れるこの語り口は賞賛したいね。
決して僕の好きなお話じゃないけど。
ヘビーでかなり残酷。『嫌われ松子の一生』もそうだったけど、
こういう内容を描くのにポップな<画>というのはありかもね。
あと、特筆すべきは役者たちのオモシロさだね。
主要人物以外は知らない俳優ばかり。
で、調べてみるとこれがみんな劇団出身。
なかでも吉本菜穂子、湯澤幸一郎の審査員コンビのリアリティは秀逸。
ほかにも谷川昭一郎、米村亮太朗、ノゾエ征爾も存在感あった」

----主演の俳優たちはどうニャの?
「佐藤江梨子が役になり切っている。
彼女の地がそうなのではないかと思えてしまったほどだ(笑)。
あと、やはり永作博美だね。
どんな不幸なことが起こってもニコニコ笑って
その身に降りかかる苦難を乗り切っていく。
でも趣味が呪いの人形作り(笑)。
彼女の演技はこの映画をビシッと締めたね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ファーストシーン、ぼくは観ちゃダメって。どういうことニャ」ご不満

※オモシロい。でも話は恐い度
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