冲方丁著"天地明察"を読みました。
大和暦を作った渋川春海の伝記といった本です。
現実に存在した人なんですね。知りませんでした。
暦の重大性を説かれてもピンときません。
だってカレンダーは生まれた時から歴然としてそこに
存在するものでしたから。
びっくりしたのは江戸時代の初期に日本独自の科学が
発達していたことです。
明治になって西洋文明が押し寄せてくるまで何もなかった
ように感じていました。
今でいう数学も天文学も進んでいたのです。
それらがどこかへ押しやられて西洋からやってきた
学問に取って変られたように感じます。
この本は読みやすいです。
春海が気難しい人ではなく、誰もが好きになる
明るい人に描かれているので入っていきやすいです。
春海は二十歳そこそこでいろんな人たちに見出され
援助され期待されます。
保科正之、水戸光国、老中の酒井、北極出地の観測隊で
1年以上共に過ごした建部昌明(途中で病気)、伊藤重孝、
和算の関孝和などなどたくさんの人に囲まれています。
800年使ってずれてきてしまった暦を正確なものに
するための観測と計算に取り組みます。
暦というものがこれほどまでに大事なものだとは思いも
よりませんでした。
自信満々で最初に考えたものは中国の暦をもとに作成
しましたが誤差が出て春海を失意させます。
しかし中国と日本との緯度の差に気づき日本独自の
暦を作成します。
暦を発表するのが権力の象徴になっていておいそれと
変えられないものです。
朝廷がうんといってくれないと切り替えられません。
ああでもないこうでもないとのらりくらりとして
変えさせようとはしません。
春海は碁打ちの家の生まれです。
いろんな手を打って廻りをかため朝廷の許可を得る
ことに成功します。
こうして新しい暦が使われることになりました。
江戸時代に学問に生きた人々を知ることができる本です。
数学の質問を絵馬に書いて掲げ、解いた人が答えを書き
つけるということをしていたということは聞いたことが
あります。
とても楽しそうです。
学ぶということを楽しんでできるなんていいですね。
関孝和とのエピソードや後に春海の妻になったえん
とのエピソードなど楽しめる部分は沢山あります。