雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ワン・モア

2012-04-28 20:10:31 | 
桜木 紫乃
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-11-29

桜木紫乃著"ワン・モア"を読みました。
第1話がちょっと重苦しい話で先がどうなることかと
思いましたがあとはがらっとかわってほのぼのとした
話になっていきます。

"十六夜"
柿沢美和、北海道加良古路島の診療所に来て1年半です。
92歳で意識混濁が続き生死を5年さまよった
女性患者がいました。
来るのは孫が一人のみ。
その孫に安楽死を頼まれました。
死亡の後、まったく面倒を見なかった子供たちから
殺したと非難されました。
誰も味方になってくれませんでした。
島で妻のある元有望だったスイマーで、現在漁師を
している男と付き合っています。
それを隠していません。
そのため島の人たちから疎んじられています。
美和はそれを淡々と受け入れ暮しています。
友人の滝澤鈴音から個人病院を引き受けて欲しいと
電話が入ります。

"ワンダフル・ライフ"
滝澤鈴音37歳、個人病院を開業して3年です。
肝臓癌に侵されています。
開業を望んだのは母です。
病院を建てる時に辛抱強く要望を聞いてくれたのが
ハウスメーカーの志田拓郎です。
彼と結婚しましたが、離婚しています。
残された日を拓郎と過ごしたいと鈴音は望んでいます。

"おでん"
佐藤亮太はトキワ書店の店長です。
遅く帰宅すると家の前に前にアルバイトをしていた
美しくスタイルのいい坂木詩織が立っていました。
同棲している男に暴力を振るわれ逃げてきたのです。
コンビニのおでんを持っていました。
翌日亮太は詩織を美和のいる病院へ連れて行きました。
詩織を何日か家で過ごさせました。
亮太は女性と付き合ったことがありません。
詩織に対してどう対応していいかわかりません。
リタイアした両親のいっしょに住もうという申し出に
彼女を連れていきます。

"ラッキーカラー"
看護師の浦田寿美子は鈴音が病院から引き抜いた
人です。
病院時代に癌で入院していた赤沢に退院時5年経って
元気だったら迎えにくるといわれました。
鈴音は拓郎といっしょに暮しています。
飼い犬のリンは5匹の仔をまもなく生みます。
5年が経ち赤沢から寿美子へ手紙がきます。

"感傷主義"
美和、鈴音の高校の同級生で放射線技師の八木が
中心の話です。
元歌手の米倉レイナが開いているスナック"レイナ"に
よくいきます。
レイナがもう一度歌手としてやってみたいと打ち明けます。
美和は緩和ケアを排除し鈴音の治療を開始しています。
美和は鈴音、拓郎の家の部屋を借りています。
酔いつぶれた八木を家に連れてきます。
鈴音の犬が生んだ子犬はそれぞれもらわれていきました。
そのうちの一匹を八木は押し付けられます。

"ワン・モア"
拓郎の父親が再婚すると連絡してきます。
家を離れるというので拓郎は鈴音を伴って荷物を取りに
行きます。
拓郎が鈴音と再度暮らすようになったいきさつが
語られます。
最期の場面は庭でお花見しながらのバーベキューの
場面です。
子犬をもらったのは前の話に登場した人たちです。
彼ら、彼女らがお花見に集まります。

やさしい気分になる話でした。
ほとんどの人たちがパートナーといっしょになり
幸せになりました。
中心人物でありながら美和だけはパートナーを
得られませんでした。
2話目からは理解者がいるようになったし仕事に
打ち込めて冷たい目に気をはっている部分が
なくなっていきました。
助け合いながら生きていく、いいですね。

だけどもこの本の中で唯一不幸せなのは島で
会った元スイマーです。
1話目だけがちょっとひっかかる話です。