風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

ブロムシュテットのマーラー、ネルソンス&シャハム&ボストン響のチャイコフスキー

2022-11-11 23:14:39 | クラシック音楽

交響曲第9番はマーラーの最高傑作だと思います。この作品でマーラーは人生、そして音楽に別れを告げているのです。今の時代にぴったりの作品だと思います。命に別れを告げる音楽だからです。地球上の全ての命に別れを告げる可能性が今、あります。核戦争になれば全てが終わりです。この楽曲を書いたときマーラーはまだ50~51歳、重い心臓の病を抱えていることを知っていました。長くは生きられないことも知っていました。だから、これは彼の別れの曲です。歌詞を伴わずとも音楽を通して巧みに終わりを告げています。

(しかしこの曲は悲観的な音楽ではない、とブロムシュテットは言います。)
悲劇と同時に幸福を描いた曲だからです。愛にあふれた曲で、最後に愛するすべてのもの、そして人生に別れを告げているのです。マーラーの交響曲はすべて愛情に満ちています。彼は人生を愛していました。オーケストラを愛し、作曲することを愛し、音楽で自己表現できることを愛していました。そうした能力があることに感謝していました。私たちも、そうでなければならないと思います。人生に別れを告げることになるかもしれない、危険で不穏な時代に私たちはいます。でも私たちには音楽をはじめ、幸せを感じさせてくれるものがたくさんあります。それを多いに楽しみ、他の人たちに伝え、分かち合いましょう。

(ヘルベルト・ブロムシュテット NHKクラシック音楽館 2022年11月6日放送)

遅ればせながら、先週末放送されたEテレのクラシック音楽館をようやく見ました。
ブロムさん、2日目だけでなく1日目も、最終楽章を終えたときに涙を浮かべられていたな…。テレビで見て、胸につけたリボンが青と黄のウクライナカラーだったことを知りました。上記インタビューの核戦争云々という部分も、ウクライナ戦争を意識した言葉ですよね。

会場で演奏を聴いたときも感じたけれど、ブロムさんはやはりこの曲を「死」と結びつけて解釈されていたのだな。そして人生や、この世界への愛。
ヤンソンスさんの”Love song to life and mortality”、”Hymn to the end of all things”に通じる解釈。
ヤンソンスさんのマーラー9番をサントリーホールで聴いてから今月で6年、亡くなってもうすぐ3年。
「脳(brain)はラトビア人、心臓(heart)はロシア人」と仰っていたヤンソンスさんが生きていたら、今のロシアとウクライナの状況をどう感じたのだろうか。ゲルギエフはいま、どう感じているのだろう。

ヤンソンスさんといえば、ネルソンスがボストン響と来日中ですね。昨日は京都、今日は大阪、週末は東京。
私は今回は行きませんが、前回のこのコンビの来日で最高に感動したシャハムとのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏(2017年11月7日サントリーホール公演より)を下に貼り付けておきます。前回2日間行ってこのコンビのメインプロ(マーラーとショスタコーヴィチ)にはあまり感動できなかったのだけれど、この協奏曲は明るくスケールが大きい素晴らしい演奏でした。
しかし今このチャイコフスキーの演奏を聴くと、涙が出てくるな…。音が幸福感に溢れているから猶更。この頃はロシアとウクライナがこんなことになるなんて想像もしていなかった。まさかこんな世界に再びなるとは…。と思うこと自体、日本人である私の平和ボケの証拠ですね。2014年にはクリミア併合は行われていたのだから(例の署名問題もその時のこと)。
早く平和な世界が戻ってほしいです。両国ともにあまりに命が失われすぎている…。




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