風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場こけら落 鳳凰祭三月大歌舞伎 昼の部(3月26日)

2014-03-28 00:28:14 | 歌舞伎

今月はまず夜の部を鑑賞し、その後にバレエが3本連続で入っていたため、昼の部は千穐楽での鑑賞となりました。
『対面』は今回はパスで。昨年2回観ているので、しばらくはいいかなと。。。
ちなみに4階で幕見を待っていたら橋之助さん@五郎の声が聴こえてきたのですが、やっぱり高音で(これってそういうものなの…?)、昨年6月の海老蔵のトラウマを思い出しました。。。

※幕見


【身替座禅】

最高

菊五郎さんの右京と、吉右衛門さんの玉の井。
これ以上の配役は思い浮かばない完璧なニン!(と言われても吉右衛門さんは嬉しくないかもしれないが^^;)
芸の色気は経験による自由と余裕から生まれるものなのだなぁ、ということを再確認しました。

右京@菊五郎さん。
大好きな遊女の花子(はなご)さんが上京してきて、もうルンルン♪
会いに行きたい!でも奥方“山の神”は怖~~~~い。。。
こういう役の菊五郎さん、だぁ~~~~~い好き(*^_^*)
めっちゃニン!
がんばって抜け出して、廓で存分に遊んだ後、酔っぱらってご機嫌でご帰宅な花道の右京さん。耳の下に紅をのせて、耳もほんのりピンク色。いいねぇ。The 歌舞伎役者!
四階席からもわかるこの華と色気こそ、なによりも歌舞伎役者に大事なものに思えます。
はたして数十年後に菊ちゃんがこの色気を出せるだろうかと思わず考えてしまい、先日の弁天小僧を観てしまった今では出せる気が全くしないのが悲しい・・・・

玉の井@吉右衛門さん。
んもうカワユイカワユイカワユイ(>_<)
「一夜でござりまするぞ。二夜はなりませぬぞ」
旦那さんのこと、本当に愛しちゃってるんだよねぇ。
ふすまを被ってコクンって頷いたり、ぶんぶん首振ったり、足をばたばた鳴らしたり、かわゆすぎる。。。
面白いだけじゃなく、なんかほろりとする切なさも感じちゃって、二人の間に夫婦の妙を見たよ。
また玉の井さんが引き連れている腰元二人(壱太郎&右近)が若くて美人なものだから、三人並んでいる光景が可笑しくて!

菊五郎さんも吉右衛門さんもウケを狙わない自然な演技で、なのに面白い。品もある。
やっぱりあなたたちは世界遺産

それと、又五郎さんの太郎冠者がこれまた最高で。
右京に脅され、玉の井にも脅され。
でも絶対に玉の井の方をより恐れてるよね、笑。
そしてこの作品が舞踊劇であることを思い出させてくれたのも、又五郎さんでした^^;
舞踊のような振りはほんのちょっとだけなのに、キッパリと美しい動き。お見事。

また、松羽目物のシンプルな舞台上に広がる黒の小袖と橙色のふすまが、はっとするほど鮮やかで。
これは三&四階席だからこそ堪能できた光景ですかね(たまにはこういうこともないと)。
ただのドタバタ劇だけじゃない、こうして視覚的な美しさでも感動をくれる歌舞伎は日本の誇り!


【封印切】

上方役者による上方和事。
正直あまり期待していなかったのですが(藤十郎さんの演技は私の好みには濃すぎることが多いので…)、嬉しい意味で裏切られました。

なにより、藤十郎さんの忠兵衛が素晴らしかった!
まずは、お若い!あまりにお若いので、花道の出では一瞬翫雀さんかと思ってしまいました。
残念ながら前半はほとんど台詞が聞き取れなかったのだけれど(本当に)、それでも舞台の上にいたのは忠兵衛以外の何者でもなかったのが不思議だった。
役者の貫録をいい意味で見事に消し去って、観ている方がハラハラしてしまうような愚かさと愛らしさを備えた忠兵衛という人間そのものでした。
舞台の上に散らばる小判。
この黄金色が美しければ美しいほど、悲しさが増すこの効果の素晴らしさ。。。
もうさぁ、歌舞伎ってホント凄いよね。これで「庶民の芸能」なのだもの。江戸の庶民ってどれだけセンスあるの。。。
藤十郎さん、泣いてたなぁ。こういう役への入り込み方も、時代物ではしつこく感じるときもあるのだけれど、上方和事では胸に迫る。。。
花道のあの表情。引き返せないところに来てしまった人間の、もう前に行くしかどうしようもない、それ以外に道のないあの表情…。忘れられません。
この方はやっぱり扇雀さんや翫雀さんがまだまだ追いつけない域に達していらっしゃるのだなぁ、と感じた封印切でした。
山城屋!ブラボーです!

扇雀さんの梅川。
若い娘らしさが少々足りなく感じましたが(傾城なんだけど、恋する乙女の初々しさは欲しいというか…)、しっかりしたお姉さん風なところは、子供のような危なっかしさのある藤十郎さんの忠兵衛とお似合いでした。
すごくいいなと思ったのは、最後の花道の引込みの直前。
「嬉しいやら、悲しいやら、夢のようじゃわいなあ…」
梅川の心情が滲み出ていて、とても雰囲気がありました。

翫雀さんの八右衛門。
雰囲気と台詞回しが現代風?で上方の嫌味~な男のネチっこさはイマヒトツに感じられましたが、ハキハキした台詞はストレスなく聞くことができました(とくに今回はこういう方は貴重…)。
この八右衛門も、封印を見てしまった後の花道の引込みがよかったなぁ。
今回は役者さん全員、花道の引込みが素晴らしかった。

そして、秀太郎さんのおえん。
藤十郎さんとの掛け合いでは台詞が聞き取れないときもありましたが(引きずられちゃいました^^;?)、もう本当にこの方は上方演目に必須。。。
なにかあるんですよね、秀太郎さんって。上方の空気というか。今回のおえんも、綺麗ごとだけじゃない廓の裏側に生きる人間の強かさもちゃんと持ち合わせながら、深い情がある。そして、この世界の人間のなまめかしさも。
最後に一人舞台に残って「お近いうちに」と忠兵衛を見送る表情、すんごくよかった。。。おえんは忠兵衛が二度と戻らないことは知らないんですよね。だからといってアッサリと「またね」的な感じでは幕は閉まらない。この絶妙な空気感。松嶋屋!
あ、そうそう。秀太郎さんの演技とは関係ありませんが、裏座敷でおえんが手にしていた蝋燭が電動式だったのはちょっと興醒めでした。どうして本火にしなかったのかしら。。。

そしてもう一人の松嶋屋。我當さんの治右衛門。
これがまた素晴らしいのよ。。。廓をまとめる男の重みと迫力があって。治右衛門ももちろん綺麗なだけじゃない世の中の表も裏もしっかり知っている人。娘同然の梅川だけど、身請け金を用意できなければ忠兵衛にやるわけにはいきません。でも八右衛門のような腐った男にもやりませんよ。そういう人だから、廓をまとめられるのだと思います。
忠兵衛と八右衛門が言い合いをしている間、舞台下手でおえんと作り上げる雰囲気といったら。。。いいもの観ました。松嶋屋!

ここまで来ると・・・・・・・・・“もう一人の松嶋屋”の不在が惜しまれて惜しまれて。。。。
はやく松嶋屋三兄弟の揃った舞台が観たい(>_<)!!!

最後に、観客について。
まったく笑うところじゃないところで笑いが起きていて、カオスでした。。。今更ですけど。。。でも千穐楽でこういう感じになっちゃうのは珍しいな。。。
忠兵衛の最後の「さようなら」で笑いって、あり得ない…。
初見の私でもわかるけどなぁ。。。


【二人藤娘】

最初の真っ暗闇に吃驚。自分の手さえなんにも見えない。
ここまで真っ暗にしたのは昨年の『将門』以来?
大人だけど子供のように楽しくてワクワクしました。今後「安全性の問題が…」とか言い出す輩が出てこないことを切に祈ります。

と、始まりは非常にワクワクしたのですが、明るくなってからは、、、うーむ。。。
玉さまも七之助も、とっても綺麗。あり得ないほど綺麗。なんですけど……。
このお二人、決定的に合わないような。。。。。
お互いがお互いの個性を弱めてしまっているような……。昨年5月の菊之助との『娘二人道成寺』では、そういうのは殆ど感じなかったのですが。
もしかしたら、今回のお二人はタイプが似ているせいかもしれません。どちらも、どこか現代的な美しさ。
七之助が一人で踊るときがあるのですが、そのときの方が伸び伸びと七之助らしく踊っているように見えました。表情も色っぽくて、でも可愛らしくもあり、よかった。
でもきっと今回は、玉三郎さんの七之助に芸を受け継ぎたい、という気持ちを汲むべきなのでしょう。

玉さまは、相変わらず衰えを知らぬ美しさでしたが、“この世のものじゃない”感は今回は少々薄め…?
でも、ときどき藤の房の間からチョコンと顔を覗かせる愛らしさや、お酒に酔ったときの色っぽさ+可愛らしさは無類。
玉三郎さんにしか作り上げられない世界というのが確かにあるのだな、ということを改めて思い知りました。

何回かある衣装替えの中では、特に赤の振袖が華やかで艶やかで素敵でした。客席からも溜息と歓声が上がってた。
二人ともが最高に似合いますね。
今更ですが、63歳で赤の振袖を違和感なく着こなす玉さま、奇跡!

と、なんのかんの思いながらのあっという間の22分。
そしてふと気付いたのですが、私、本気で二人が男性だということを忘れて観ていました。。
本当です。本当に忘れていたんです。
これまで何度もこの二人の女方は観てきたはずなのに。
やはり恐るべし、歌舞伎の女方。。。


怒涛のこけら落としも今月で終了!
本当に、本当に、本当~~~~っに良い一年でした・・・。
歌舞伎の楽しさをいっぱい教えてもらった。
大御所の皆さんも、中堅の皆さんも、花形の皆さんも、若手の皆さんも、その他諸々の方々も、心からありがとうございました
ラストは超キュートな人間国宝コンビで〆!日経新聞さんより。

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