風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場こけら落 鳳凰祭三月大歌舞伎 夜の部(3月11日)

2014-03-27 21:00:25 | 歌舞伎




こんにちは。
職場の「エレベーター」という文字が「エルヴェ」に見えてしまう重症患者なcookieです。 ※?な方はここ参照

さて、今月の歌舞伎座は、夜の部→昼の部の順で行ってまいりました。勧進帳以外は、どの演目も初見です。

夜の部は、3月11日に行きました。
チケットをとったときは意識していなかったのですが、必然的に3年前のその時間のことを思い出しながらの鑑賞となりました。
毎年この日は、ただこうしてこの日を迎えていられること、それ自体に感謝しています。
観客の方々も、おそらくは役者さん達も、皆それぞれに何かを思わないではいられない日だったのではないかな。。

※3階B席


【加賀鳶】

思いのほか楽しめました

幸四郎さんの道玄。
最初のうちは「幸四郎さんは悪人を演じても心底悪人には見えないな~。どこかいい人に見えちゃうな~」と思っていたのですが、話が進むうちに、ああ道玄はこれで正解なのだな、と。どこか愛嬌がある悪人。幸四郎さん、ぴったり

そして秀太郎さんのお兼との掛け合いが楽しくって。
今月昼の部とともにつくづく感じたのが、秀太郎さんという役者の貴重さでした。この風合い。
秀太郎さんって“役者の花”とでもいうようなものがあるのですよねぇ。

ところで今回、幸四郎さんを観ていて、初めて吉右衛門さんを思い浮かべました。今までも逆はあったのですけれど。やっぱりこのお二人、兄弟なのですねぇ。ふと見せる表情がよく似ていらっしゃる。
同じように、秀太郎さんを観ながら、初めて仁左衛門さんと重なりました。演技のタイプというか、表情や仕草が同じだなあ、と。なんかほっこり(*^_^*)

梅玉さんの松蔵も爽やかで素敵でしたが、あまりニンなお役ではないような?


【勧進帳】

時しも頃は如月の、如月の十日の夜。 月の都を立ち出でて・・・・・

この長唄、情緒があって大好きです。毎回聴き惚れる。。。
一行が京を発った如月十日は、現在の暦では三月下旬。先々月の山科閑居につづき、季節感バッチリ。
松竹さん、今後もこの調子でお願いします(って5月にまた勧進帳ですか…。そうですか…)。

吉右衛門さん@弁慶。
出の瞬間から、姿は見えねど(3階なので…)その朗々とした台詞にうっとり。。。吉右衛門さんの台詞回し、本当に好きだなぁ。。。
そして、吃驚するくらいの熱演。
最初からこんなに飛ばして最後までスタミナもつのかなと思ったら、もった。ブラボー!

義経を打つ場面の自然さ(ほぼ迷いを顕しません)、義経の前でのしょんぼり具合、そして何より素晴らしかったのが「弁慶の運命」が常に背後に感じられたこと。特に後半は、この人はこれから義経を守って死んでいく運命にある人なんだな、ということがじんわりと伝わってきて何ともいえない気持ちになりました。もちろんこの勧進帳の段階ではそれは未来にすぎなく、本人達は知る由もないわけですが。でも、決して予想ができない未来でもないのですよね。現実化しつつある未来。これは逃避行なのですから。それでも可能な限りその未来に抗おうとしている、そんな姿がこの弁慶からは見えてくるのです。こんな弁慶を見たのは初めてでした。

とはいえこの弁慶、確かにこれまで観てきた中で最も私のイメージに近い弁慶ではあったのですが…、理想的ドンピシャ!からは本当に僅かに、ほんの1mm程度、ずれていたのでございます……。贅沢な話なのはわかってるんですけど!
ちょっと、熱すぎた。というか感情を出し過ぎ?の割には時々妙に冷静で。
インタビューによると、今回吉右衛門さんは演じ方を変えられたのだとか。もしかしたら私の好みは以前の演じ方の方だったのではないか、という気がしております(観てはおりませんけども)…。

菊五郎さん@富樫。
こちらも声がよくて、聞き惚れる。今回は聞き惚れる勧進帳だなぁ。
菊五郎さんの富樫って独特ですよね。他の純粋まっすぐ系の富樫と違って、「簡単には騙されまいぞ」的な。これはこれで嫌いじゃありません。
でも昨年4月のときも思ったのですが、富樫って一度目の引込みで「く…っ」と顔を上げて涙をのむじゃないですか。これは型なので仕方がないですが、菊五郎さんの富樫のタイプはここで泣いたりはしないように思うのですよね…。そういう感情的な心の動かされ方はしなさそう、というか。
この富樫は冷静に状況を理解し、納得し、自らの命をかけて義経を通し、たとえそのことで死罪になろうと最期まで淡々と死んでいきそうな気がするのです(お、なんかカッコイイ)。
そういう富樫なので、吉右衛門さん弁慶が熱い分、ときどき弁慶を見る目が「こいつ随分熱くなってんなぁ」と眺めているようにも見えてしまって…^^; 私の心の目のせいだと思います。。。

藤十郎さん@義経。
この弁慶とこの富樫に釣り合いのとれる義経は、この方しかいないでしょう。
気負いのない自然な演技が心地よかったです。
藤十郎さんのこの風合い、つくづく貴重ですねぇ。

さて、あちこちのレビューで絶賛されている上記三人のアンサンブルですが、実は私はあまり感じることができませんでした。。。ここで嘘をついても仕方がないので正直に書きますが。。。
人間国宝三人のバランスは完璧でしたが、演技のアンサンブルという意味では少々一方方向に感じられました。それぞれが、それぞれの弁慶、富樫、義経を演じているような。。。
相乗効果という点では、昨年の海老蔵×愛之助×孝太郎さんの方が圧倒的に感じられたのが正直なところです(海老蔵弁慶が基本的には好みでなかっただけに一層)。我ながら不思議ですが。
吉右衛門さんの弁慶&仁左衛門さんの富樫の組み合わせだと、最高にそれを感じられる気がするのだけれど、いかがなものでしょうね。

あ、あと四天王(東蔵さん、扇雀さん、歌六さん、又五郎さん)が、とてもよかった。
特に歌六さんと又五郎さん。
四天王って意外と重要かつ難しい役なんだなぁと今回感じました。リアルに演じすぎては品がなくなるし、といって緊張感や若さはなければならないし。ただ座っているだけでそういう空気を出さなければならないのだから、大変だ。

以上、本当に素晴らしい勧進帳ではありましたが、世間の殆どの方々の「号泣!!!」という感動ほどには達せなかったことは、本当に残念でございました。。。本当に。。。
個人的には昨年十月の吉右衛門さんの知盛の方が、遥かに感動をもらえました。。。


【日本振袖始】

楽しかったです♪

米吉(稲田姫)、カワユイ。若くてお肌も真っ白で綺麗なお姫様。古風なお人形さんのようで、人身御供がぴったりでした。といって白痴っぽいわけではなく、賢そうな雰囲気もあって宜しいです。
玉さまの年齢不詳な美と並ぶと、それぞれが効果的に引き立って、舞台上の美しいこと美しいこと。

玉三郎さん(岩長姫)。
玉さまって素で連理引きができそう、笑。
3階席にも伝わるオーラは圧倒的で、やっぱり変わりのいない女方なのだなぁとしみじみ。
次々と壺の酒を飲み干す様はもはや人間ではなく。

勘九郎の素盞嗚尊。
勘九郎は綺麗ですね~。動きがとっても綺麗。
今回は白塗りの化粧もカッコよかった!いつもこれくらい作り込むといいと思うのだけれど。

後半、玉さま(八岐大蛇)がお疲れ気味に見えたのは、勘九郎が元気一杯だったからだろうか。。。心配です。。。

舞台セットも、民間伝承のお伽話を視覚的に観ているようで楽しかった。
玉三郎さんは、妖しくも悲しい横笛の音がとても似合う。
ときどき歌舞伎で聴きなれない楽器の音が下座から聴こえたけれど、あれは胡弓でしょうか?筋書を買っていないので確かめられません。。


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