風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『椿姫』 パリ・オペラ座バレエ団 @東京文化会館(3月22日マチネ)

2014-03-23 22:41:18 | バレエ




一日たっても興奮冷めやらず頭がぼー……としておりますが、がんばって感想書きます。
結局行っちゃいました、、、椿姫。
だって、、、ど~~~っしても我慢できなかったんですもの(>_<)!
この世界↑を生で観たかったんですもの!
行かないと一生後悔しそうだったんだもの!
直前にヤフ〇クで定価で譲っていただき、人生で初めて舞台チケットに25000円払いましたよ。
でも本当に行ってよかった。。。
この世界で最も美しいもののひとつを観ることができた。。。
舞台の上だけ完全に別世界だった。19世紀のパリ以外の何物でもなかった。


【第一幕(ヴァリエテ座)】

マルグリット役のオレリー・デュポンは、大輪の花のような美しさで、まさに“椿姫”。
周囲に男達をはべらせる姿は一幅の絵のよう。

そしてアルマン役のエルヴェ・モロー。
このアルマンならそりゃあマルグリットも落ちるわ~~~と心の底から納得。。
以前DVDで見たときはアルマンがただの世間知らずの坊ちゃんに見え、奔放に男達を手玉にとってきた高級娼婦がこの青年に“恋”するものかなぁ…?と感じたのだけれど、今回は違いました。
モローのあの色気…あの翳…フランス映画から抜け出てきたよう。
あんたこれまで何人の女を泣かせてきたのさ?的なアルマン(じゃないとあんな魅力でるわけない!という意味で)は、原作的には違うのかもしれませんが、日本に絶対にいないレベルの美男を3時間生で見られて幸福でした。。。

マルグリットの部屋でのパ・ド・ドゥ。
「ちょ、スカートたくし上がりすぎでは…っ」なリフトも、連続足に口づけ場面も、もう我慢できませんって感じなこれまた服たくし上げての首筋に口づけ場面も(これDVDで見つからないんだけど…)、若いアルマンのマルグリットへの想いの激しさが伝わってきてよかったぁ。

そしてつくづくS席でよかったと思ったのが、この作品は美味しい場面がことごとく上手の端っこで行われるから。
Rサイドのエコノミー席でも買っていようものなら、悔やんでも悔やみきれないところだった…。
舞踏会に出かけたマルグリット(@舞台中央)を部屋で一人待つアルマン(@上手)。
ごろんと寝そべったり、本を読んだり。そして時々思い出したようにマルグリットがくれた椿を眺めて、嬉しそうに微笑むの(>_<)!私、この繰り返しを24時間見ていても飽きない自信ある!
だってモローが美しすぎて…。額にぱらって落ちた前髪を無造作に掻き上げる仕草まで美しい。。。
すみません、私ここは舞台をほとんど観ずにアルマンばかり観てました。。。

田舎へ出掛けるマルグリットをマントを翻して追いかけていく姿も、黒のマントが超絶似合う。


【第二幕(田舎)】

真っ白なポスターのあの場面ですよ!
美しい。。。美しすぎる。。。
最初はこの演目はガルニエで観たいって思ったけど、東京文化会館でよかった。舞台の上だけ完全に別世界になる奇跡を目の当たりにすることができた。
この種の美しさは日本のバレエ団にはムリだろうなぁ・・・。
舞台セットが白い籐の椅子とテーブルだけというシンプルさも素晴らしい。

首飾りを投げ捨てて公爵との関係を絶った後の、二人のパ・ド・ドゥ。
下した髪が愛らしいオレリー。
ほんの僅かな、二人の幸福な時間。。。

アルマンのパパン役は、ゲストエトワールのミカエル・ドナール氏。
DVDで観たときにとても好みだったので、同じ配役で嬉しい!
当時より歳をとられたせいかオレリーを持ち上げるのが少々重たそうだったけれど、そんなことはどうでもよろし。
このパパンが、もう本っ当にいいのよぉ~~~泣。「息子と別れてくれ」って言いに来たのに、マルグリットに対する理解と愛情もしっかりとあって。このパパンの前では、マルグリットも小さな少女のよう。
地面に丸く蹲ってしまったマルグリットの頭にパパンがそっと手をのせる場面、大好き。仕草に深い優しさが感じられて…。
パパン、大人なんだよねぇ。。
だけど息子の将来ために、一線は決して譲りません。

アルマンのために、身を引く決意をしたマルグリット。別れの手紙を残して、一人パリへと帰ります。
手紙を読んだアルマン、ショック!
ここで舞台をのたうちまわるように踊る姿は、マルグリットに対する怒りというよりも、深く深く傷ついているように見えました。
ぼっろぼろになって踊るモロー。なんて美しい。。。(すみません、見惚れてました・・・)
こんなになるほど一人の女性を愛せるなんて。。。
いいなあ、こういう恋愛。。。
一生に一度してみたい。


【第三幕(シャンゼリゼ)】

ここのオランプのピンクの冬服、すっごい可愛い^^
DVDではマルグリットの気持ちもわからず当てつけるようにオランプとイチャつくアルマンが子供過ぎて腹が立ったのだけれど(でもステファンはこの原作どおりのアプローチがいい意味で似合っていた)、今回はもう少し大人な恋愛の一場面のように見えた。マルグリットだって自分を愛しているはずなのにこんな風になってしまって、イラつくアルマン、みたいな。

オランプとのベッドシーンも色っぽくて。。。
このシーンでこんなに素敵だったら、次のシーンは一体どうなっちゃうの(><)!冷静に見る自信ない!とこのときは何気に不純な期待でいっぱいだったのだけれど。
――とんでもなかった。
不純な気持ちなんて起こる隙もないほど、二人の姿が美しすぎて。。。。。。

黒のパ・ド・ドゥ。
もうここからラストまでは舞台の空気があまりにも濃密で、呼吸するのも忘れて見入ってしまいました。
熱いのに澄んでいて、激しいのに切なくて、官能的なのに純粋で……。
“愛”がそのままカタチになって目の前にあった。
ただただ美しくて、涙が出た(今もこれを書きながら思い出して泣いてます…)。
アルマンを訪れないではいられなかったマルグリットの想い。
そんなマルグリットを全身で愛するアルマン。
このときだけは過去も未来もなく、躰だけじゃなく、心も本当に一つになっていたのだと思う。
そしてモローの息づかいも、汗で濡れた前髪も、セクシーすぎて…(あ、また不純の虫が…)。
でも本当に二人とも、服の乱れも髪の乱れも、そのまま全てが完璧な美の形でした。

上手で重なって眠る二人は、ただの若い恋人たちのように無垢であどけなくて…。もう本当に切ない…。
そんな二人にしのび寄る、マノンとデ・グリューの影。
先に目を覚ますマルグリット。彼女はマノンの幻を見、アルマンの元を去ります。
このオレリーの表情に、このとき彼女は本当に覚悟を決めたのだと思いました。愛するアルマンを道連れにせず、一人で死んでいく覚悟を。

眠るアルマンの傍らで踊る、デ・グリューの幻。
やがて目を覚ますアルマン。
一瞬嬉しそうな笑みを見せて(これすごい切なかった…。DVDのステファンは見せていませんでしたが)隣を見ると、そこにマルグリットの姿はなくて。
このときに、アルマンも一つの答えを出したのだと思います。
もう本当に駄目なんだなと悟ったような、自らの想いに決着をつける覚悟を決めたような。怒りだけじゃない、哀しい表情に見えた…。
ゆっくりと舞踏会に出かける準備をするアルマン(肌蹴たシャツに気だるげにネクタイを締める仕草がセクシー…)。舞台上手にいるアルマンの心が客席の私のところまで伝わってきて、胸が苦しくなった…。
舞踏会でマルグリットを強引に引き寄せて、渡す札束。
痛い……。ここの二人の擦れ違いは、本当に胸が痛い……。
アルマンから札束を渡されたマルグリットの悲痛な慟哭。
でもマルグリットからは見えなかったけれど、このときアルマンもまた傷ついていたのだと思う。下手のアルマン、必死に気持ちを抑えていたけれど、見ているのが辛くなるような表情をしてた…。

舞台が暗転して、パパンの胸に飛び込むモロー、違った、アルマン。さっきまであんなに俺様だったくせに、このギャップに思わず胸きゅん…。
そしてここからが号泣のフィナーレですよ。すでに号泣してますが。

舞台左右から洪水のように襲ってくる二人の想い。
病の悪化したマルグリットは、青白い顔色を隠すために頬紅を真っ赤に塗り、真っ赤なドレスを着て、初めてアルマンと出会った夜と同じ『マノン』を観に出かける。
降り注ぐショパンのメロディ。
彼もまた、19世紀パリの社交界を煌びやかに彩り、肺病で若くして世を去った作曲家でした。

死の淵に立ったマルグリットが最期に見たマノンの幻が切ない。
マルグリットはアルマンに別れを告げたことを後悔しているわけでは、決してないと思います。
でも、本当は寂しかったんだと思う。本当はマノンのようにアルマンに縋りつきたかった。抱き締めてほしかった。
でも、決して道連れにはすまいと決めた。
そして、一人で死んでいった。
なんて、誇り高く、強く、深い愛情だろう。自分よりも相手の幸福のために、あえて自分が悪になるなんて…。

でも、遺されたアルマンはどうなのだろう。
彼はマルグリットと一緒に最後までいられた方が幸福だったのじゃないか、と思ってしまう。たとえ将来に傷がつこうと。
こんなに激しい恋愛をしてしまって、彼は残りの人生を生きていけるのだろうか。特にモローのアルマンは、アル中とかになって後を追って死んでしまいそう…(舞踏会でもお酒ぐびぐび飲んでたし)。
願わくばマルグリットとは全く違うタイプの家庭的な可愛い奥さんをみつけて、温かい家庭を築いて、でも心の奥の奥の部屋にはマルグリットとの思い出があって…的な幸福な人生を歩んでほしい(映画とかでよくあるあれ)。マルグリットのためにも。


カーテンコール。
最初に幕が上がった瞬間から、オレリーは感極まった表情で涙をためていました。
まだマルグリットの気持ちが残ってるのかな?と思ったのだけれど、後から知りましたがこの日が彼女がパリオペで椿姫全幕を踊る最後だったのですね。ルテステュとシアラヴォラが引退なのは知っていましたが、彼女も引退が間近なことは知りませんでした。今日の舞台、観られてよかった。
数えきれないほどのカーテンコールと、文字どおり総立ちのスタオベ。
モロー、泣き笑いのオレリーの頭を抱き寄せて、オデコにちゅって。
うわぁ…、なんて絵になる二人…。
この二人の椿姫が映像で残っていないことが本当に残念だけれど、だからこそ生で観ることができてよかったです。
舞台って本当に儚いものですね。。。

最後に。
ピアノの生演奏が嬉しかった!まさかこの作品を生ピアノで観られるとは思ってもいなかったので、感動しました。
衣装もどれもセンスがよく、ライティングも品があって、もう完璧(このセンスを熊哲にも見習ってほし…)。
マノン役のローラ・エッケ、プリュダンス役のサブリナ・マレム、ガストン役のクリストフ・デュケンヌ、その他脇の方々も皆さん素晴らしかったです。
アニエス×ステファン、イザベル×マチューも、お金があったらぜひ観たかった。特にステファン、パンフで見るといい感じに男臭く成長していたし^^。3人の公演を全部通った人の気持ちが、よくわかります。

ああ、この世でもっとも美しいものを見てしまって、しばらく現実に戻れそうにありません。。。いや、戻りたくありません。。。
でも戻らねば。
急がないと歌舞伎座が千穐楽を迎えちゃう!こちらも日本人にしか作り上げられない世界!
もう少しだけ待ってて吉右衛門さん、菊五郎さん、玉さま~~~~。


※追記 インタビュー(chacott):エルヴェ・モロー

Comments (6)
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