なんとも衝撃的なタイトルである。この作品のチラシを初めて見たときタイトルにまず驚き強く惹かれ、これが実話をベースにしていると知り、絶対に見に行こうと思った。
中学校1年生の担任サワコ宮田亜紀が妊娠したことを知り、ミズキ小林香織を中心とする女子5人のグループは「先生を流産させる会」を結成する。それはミズキの「先生、セックスしたんだよ。キモくない?」という一言に端を発していた。
第二次性徴を迎える思春期の女の子たちが性に対して持つ戸惑いや嫌悪感というものは実際に存在するし、その嫌悪感が妊娠した教師に向かうというのも分からなくはない。しかし、それが「先生を流産させる会」にまで発展するには、普段からのミズキのサイコ性と思春期の女子たちのある意味明るい残酷性の合わせ技のような気がした。結局のところ、ミズキのサイコ性がなければ、ここまでの事態に発展することはなかったんじゃないかなぁと思わせる作りだった。
思春期の女子の揺れ動く危うい感情をどう表現しているのか、そして、それにどう教師が対応していくのかということを楽しみに見に行ったワタクシとしては、ちょっと期待外れなデキだったと言わざるを得ない。
たった62分で描くのだから、フミホの母親がモンスターペアレントであることなどは、物語の軸からは正直どうでもいいことだった。それよりももっと女子5人グループのリーダーに引っ張られて加速していく感じや、その中の力関係、ミズキの家庭環境などを描いてくれたほうが良かった。
サワコ先生を演じた宮田亜紀という女優さんがドスの効いた声で生徒たちに喝を入れる姿は良かったけど、ちょっと演技が白々しいところがあるのと、クライマックスでミズキに流産させられながらも、フミホの母親から殴られそうになるミズキをかばう姿はとても印象的だったが、その後「先生を流産させる会」の象徴である女子5人がお揃いでしていた指輪をミズキの指から外すときの大げさな演出にはなんか学芸会レベルの匂いがして安っぽく見えてしまった。あと、サワコ先生が生徒を殴るシーンも大げさな効果音のわりに完全に顔から手が離れたところで振りかざされているのが見えてこれも学芸会レベルでした。もっとリアルに撮る方法があるのでは?
映画を見たあとに実際の事件は女子によるものではなく男子のグループだっということを知りました。事件の動機も顛末も映画とはかけ離れています。その事件を知った内藤瑛亮監督が設定を女子に変えたということだったんですが、確かに「女vs女」というのが激しく描かれた作品だったと思います。「先生は先生である前に女なの」とサワコ先生も言っていましたし、「女は気持ちの悪い生き物なのよ」なんてこともミズキに言っていました。ここはもう好みの問題になってしまいますが、ワタクシはその前面に押し出された「女vs女」な部分があまり好きにはなれませんでした。「先生は先生である前に人間なの」だったら良かったんですけどね。それだと、グループを女子に変えた意味が薄くなっちゃうかな。でも、サワコ先生には同じ女としてよりも人生の先輩として、ミズキに向き合って欲しかった気がします。ちょっとキレイ事ですかね。
実際の事件では、教師は給食に異物が混入されても気づかず体調の異変もなく、イスのねじがゆるめられても映画のサワコ先生のように転んでしまうこともなかったそうですが、結局この男子グループは何の咎めもなく済んだそうです。実際の被害はなかったとしても「先生を流産させる会」などという物騒な会を作っておいて何の咎めもないなんてね・・・
最新の画像[もっと見る]
- 否定と肯定 7年前
- オリエント急行殺人事件 7年前
- 奇蹟がくれた数式 7年前
- 怒り 7年前
- ドリーム 7年前
- ヘイトフルエイト 7年前
- AMY エイミー 7年前
- ジャングルブック 7年前
- 帝銀事件 死刑囚 7年前
- THE FORGER~天才贋作画家 最後のミッション 7年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます