
シェイクスピアの有名どころの作品はだいたい読んでいるんですが、なぜかこの「ヴェニスの商人」は読まずにきてしまったんですよねー。この映画も公開当時から気になっていたものの10年近く経ってしまいました。
中世のヴェニス。ユダヤ人はキリスト教徒から差別を受けていた。
主な登場人物は、
ヴェニスの商人アントーニオジェレミーアイアンズ。
その友人バサーニオジョセフファインズ。
ユダヤ人高利貸のシャイロックアルパチーノ。
バサーニオが結婚を望んでいる娘ポーシャリンコリンズ。
バサーニオはポーシャに求婚するためアントーニオに借金を申し込む。アントーニオの財産は航海中の船の上にあり現金を用意できない。アントーニオは普段ユダヤ人で馬鹿にしているシャイロックの元にお金を借りに行く。いつもの恨みを果たそうと利子の代わりにお金を期限までに返せなかったらアントーニオの肉1ポンドをもらうと言うシャイロック。
バサーニオはポーシャへの求婚に成功するが、アントーニオの船は難破。借金の期限が切れてしまったアントーニオはシャイロックに肉1ポンドをよこせと裁判を起こされてしまう。富豪のポーシャが借金の肩代わりを申し出るがシャイロックはもう期限が切れているとお金を頑として受け取らない。
男装し法学者に扮したポーシャが再三慈悲を請うがそれを拒否するシャイロックに、法律上はシャイロックが正しく肉1ポンドを取れと判決を下す。喜んでアントーニオの肉を切ろうとするシャイロックに「肉1ポンドは取っても良いが、契約にない血は1滴たりとも取ってはならない」とポーシャは言い、シャイロックはあきらめざるを得なくなる。
反対にシャイロックはアントーニオを殺そうとした罪で全財産を没収されかかるが、アントーニオの慈悲で財産の半分を駆け落ちしたシャイロックの娘ジェシカズレイカロビンソンに譲り、死刑判決の代わりにキリスト教に改宗することで許される。
それと同時にバサーニオとポーシャの恋のさや当て話も進行して、悲痛なシャイロックそっちのけで、金銀鉛の箱のうちから正しいのを選べばポーシャと結婚できるだの、ポーシャがバサーニオにあげた指輪を法学者(ポーシャだとバサーニオは気づいていない)にお礼としてあげちゃったりとちまちまと若い2人のアツアツっぷりを見せつけられる。
シェイクスピアのお話っていうのはだいたい元ネタがどっかにある場合が多いのでこの肉1ポンドとかいうよくできたお話も別にシェイクスピアが考えたわけではないんだろうけど、全体的な話の雰囲気としてはもうザ・シェイクスピアという感じ。だってこれ喜劇なんですよ。こんだけシャイロックが悲惨な目に遭うってのにね。シャイロックは血も涙もない冷血人間みたいに言ってるけど、彼は契約書を守り通そうとしただけだし、だいたいお金返せると思って安請け合いしたアントーニオが悪いんじゃんよーって思うんだけど、やっぱりこれ当時のイギリスで公演されたわけだから、キリスト教は善、ユダヤ人は悪みたいに描かれてて、それを民衆が拍手喝采したってわけなのかなぁ。
それでもシャイロックが「ユダヤ人には目も手も感情も情熱もないって言うのか?病気も違う、薬も違うって言うのか?」(本当はもっと長いセリフですが)と言うシーンはハッとさせられた人も当時でもいたかもしれない。実際シェイクスピアがどう思いながらこのお話を書いたのかは今となっては分かりませんけどね。
バサーニオとポーシャの話もシェイクスピアらしくて良いですね。法学者に化けたポーシャがあんなにしつこく指輪をくれって言うから断腸の思いで仕方なくあげたのに、それを後で責めるんだからまったくズルい女だよねー。でも、恋は盲目と言うかなんというか、シェイクスピアの世界では万事丸く収まってしまうのですよ。
誰かが別の誰かに化けてっていうのもシェイクスピアでは多いですね。これは映画で見るとどうしても「いやいやいや、ばれるやろ」と思ってしまうのですが、やはり当時は舞台の上でそもそも男性ばかりが演じていたわけですから、この変装っていうのもよく使えるカラクリのひとつだったんでしょうね。
映画としてはアルパチーノ、ジョセフファインズ、ジェレミーアイアンズという豪華な顔ぶれが素晴らしく見ごたえのある作品に仕上がっており130分という長さを感じさせません。
どうしても現代風の目で見るとシャイロックが一人可哀想に映ってしまうのですがねー。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます