ロンドンでテロ組織掃討作戦の指揮を執るキャサリンパウエル大佐ヘレンミレン。大佐の上司フランクベンソン中将アランリックマンはイギリス政府の人たちに作戦の承認を取る役目をしている。
アメリカ・ネヴァダ州にはドローンの操縦士・スティーブワッツアーロンポールとキャリーガーションフィービーフォックス。
アメリカ・ハワイ州には顔認証をするための兵士。
この作戦の現地であるナイロビには現地スタッフジャマファラバーカッドアブディ他数人がいて、鳥や虫の形の超小型ドローンを操縦。
ナイロビのとある家にイギリス軍が追っているテロ組織が集まっていた。その中にはイギリスやアメリカからテロ組織に参加したメンバーもいる。ずっとこの組織を追ってきたパウエル大佐だが、ここまで敵に近づけたのは初めてのことだった。この千載一遇のチャンス、しかも組織は今まさに自爆テロの準備を進め、アメリカからやってきた若者に自爆ベストを着せている。
ドローンの映像を見ながら、アメリカ軍兵士のキャリーガーションは何かを発見する。一人の現地の少女がこの組織が集まっている家のすぐ外でパンを売っているのだ。すぐにパンを全部買い占めて少女を家に帰してしまおうという作戦が取られるが現地の兵士にスタッフが見とがめられてあえなく失敗。テロ組織が自爆テロに向かう時間が刻々と迫る。たった1人の少女を救い、自爆テロを起こすのをみすみす見逃すのか、それとも多少の巻き添えは仕方がないとあきらめるのか。あ~アメリカのテレビシリーズ「NCIS:LA」あたりなら、最後の最後に少女は助けられるんだろうけど、この作品ではそう簡単にはいかない。
はっきり言ってストーリーとしてはテロ組織を爆撃するのに邪魔な一般人少女をどうするか?というそれだけのお話。たったこのワンイシューで、ここまで緊迫感を持って物語を引っ張れるってすごいなぁと感心してしまいました。ロンドンの基地、政府の会議室、ネヴァダ、ハワイ、ナイロビと通信ですべて繋がっていて、そこにいるすべての人がただ一点に集中している。それぞれの思惑や信念、立場などが入り乱れて一秒たりとも画面から目が離せない構造になっている。一緒にいないけど、ヘレンミレン、アランリックマン、アーロンポールなど役者陣の演技合戦とも言える。
そこに持ってきて、この可憐な少女の家庭の環境もさりげなく挿入してきているのが、非常にうまい。それはこの少女に感情移入させて観客の同情を買おうというものではなく、この子の父親が自由な考えを持っていること、少女はその自由な考えに基づいて幸せに暮らしていること、でもそれがこの国の体制に反していることを端的に説明してみせているのが見事。
こんな決断誰だって下したくない。どっちに転んだってベストな結果というものはない。所謂キャッチ22的な状況とも言える。政府の人間は決断をたらい回しにし、軍の人間は爆撃できるように被害予想に手を加える。何が正しいのか誰にも分からない。
結論をばらしてしまいますが、最終的に大けがを追った少女を病院に運んでくれたのは、現地の組織だったわけで、結局は少女は命を落としてしまい、この自由な考えを持った父親も復讐に燃えるあまり、反米、英組織に入ってしまったりしないだろうかと暗澹たる気持ちで映画館を出ることになった。
オマケ亡くなったアランリックマンが大画面に映ったときなんだかドキドキしてしまいました。もっとずっと彼の演技を見ていたかったな。