シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

筑波海軍航空隊

2017-01-18 | シネマ た行

太平洋戦争時、筑波海軍航空隊に所属した神風特攻隊のドキュメンタリーです。

生き残った方たちへのインタビューを交えながら、当時の隊員の日記や写真など貴重な資料が綴られていきます。

なんかね、何度か書いていると思いますが、このブログを書き始めたころと全然情勢が変わって来てしまっていますね。いまはこういう作品を語るのも、ものすごく不安定な気持ちで書かないといけなくなっている気がします。ブログを始めた10年以上前なら、「もう二度とこういうことを起こしちゃいけない。戦争をしちゃいけない」とその決意を固めながらも、この国のその地盤は固く揺るぎないものであると信じていました。でもいまは違う。権力者が「戦争を繰り返さないために」次々に打ち出してくる政策はどう見ても戦争したくてたまらない狂人のよう。この作品のようなドキュメンタリーでさえ、もしかしたら憧れのまなざしで見る者が増えているのでは?と感じてしまう。

特攻隊員は学徒動員で集められた学生たちの中でもエリート中のエリートでした。間違いなく日本を担う大きな役割を果たしたであろう優秀な学生たちの命をこの国は特攻隊員として奪いました。彼らには選択肢というものは存在しなかった。家の名誉、学校の名誉、村の名誉、様々なものを背負って彼らは死んでいきました。

そして、ここに証言を残している生き残った隊員は、自分が生き残ってしまったことに生涯苦しみながら生きていく。「戦争なんて勝った方も負けた方も誰も得なんかしない」そう言う元特攻隊員の木名瀬信也さんはいま現在のこの国をどんな気持ちで見つめているのだろう。

ワタクシの中で意外だったのは柳井和臣さんが語っていた、特攻隊員になったからにはすでに覚悟が決まっていて、死に対して割り切っていたというものだった。特攻隊員は出発の直前まで死の恐怖におびえていたと思っていた。でも、柳井さん曰く、特攻隊員には選択肢がない。だから悩まない。ということだった。生きるか死ぬかではなく、死ぬしかない。それが特攻隊員だったのだ。人間の心理とはそういうものなのか…

どのように感じるかは人それぞれだと思いますが、こういう作品は見られる機会も少ないというのも残念なところです。