この映画の存在を知ったときから絶対に見に行こうと思っていた作品です。ナチの残党が南米チリに作ったカルト施設。チリのピノチェトの独裁政権下において、この施設は拷問施設としても利用されていた。この施設に反政権派として拘留されてしまった恋人ダニエルダニエルブリュールを助けるためにレナエマワトソンも潜入する。
ナチ、ピノチェト、カルト、などワタクシの興味のある分野が揃っていて、しかも大好きなエマワトソンが出演しているということで見に行くぞと決めていました。
レナはCA。ドイツからチリへのフライトでチリでの滞在中はそこにいる恋人ダニエルと過ごす。ダニエルはチリで政治活動をしていてアジェンダ大統領を支援しているが、レナの滞在中に軍のクーデーターが成功してしまい、大統領派のダニエルは軍に連行されてしまう。
ダニエルの連行された先を調べたレナは「コロニアディグニダ」(尊厳のコロニー)という宗教施設に連れて行かれたということを突き止める。ダニエルの政治仲間はそこに連れて行かれたらもうどうしようもないという態度だったし、国連の人権委員会はそこの実態は知っているけど、どうにも手出しできないといった感じだった。そこでレナは覚悟を決めそこに単身乗り込んでいくことに。
パウルシェーファーミカエルニクヴィストというナチスの残党が教祖であるこの団体に潜入したレナ。この宗教団体に救いを求めに来た女性という設定で入っていく。
一方ダニエルは軍関係者から酷い拷問を受けたあと、この宗教団体で暮らすことを強要される。ダニエルは少し知恵遅れのふりをして相手の出方を探ることにした。
この団体では女性と男性は別れて生活し、女性は日々農場に出て働いていた。男性もダニエルのように工場のようなところで働いているようだったが、基本的に女性は随分虐げられている感じだった。男性は教会で座って教祖が死者を蘇らせる儀式に参加していて、女性はその様子を地下室に集まって直立して放送を聞かされるだけだった。男女を分けることで噴出するであろう不満を解消するためか、女性はたまに男性の集会に呼ばれ、そこで淫らな悪魔を追い出すとか言って、みんなからボコボコにされるのだ。男性の性欲を押さえたり解消したりするのに、この暴力行為は効果を発揮していたのだろう。
だいたいこういう教祖様というのは性に走るか暴力に走るかというパターンが多いが、シェーファーは小児性愛者でそもそもドイツで少年への性的虐待で手配されていた輩がチリに来て教祖になったらしく、このコロニアディグニダでも少年たちばかりを集めてハーレムを作っていたようだ。その分女性に対しては暴力的な方向に走っていたらしい。暴力的と言えば、個人への暴力の他に戦車を含む大量の武器も持っていたらしい。
男性だけの集会をこっそりと覗きに行ってダニエルを見つけたレナは、男女が一緒になる非常に珍しい「行進」(ピノチェト大統領の歓迎式典だった)で自分もここにいることをダニエルに知らせることができた。ここで無言でしっかりと手を握り合う2人に再会のドキドキとばれたらどーすんのーっ!というドキドキのダブルのドキドキを味あわされた。
このシーンだけじゃなくてもう全編ドキドキしっ放しでした。とにかくレナが酷い目にあったらどうしようと気持ちで不安がいっぱいでした。あの我らがハーマイオニーが薄汚い小太りのおっさん(教祖)にじっとりと抱擁されたり、鼻血が出るまで殴られたりするもんだからもう見ていられない。と、ついついエマをハーマイオニーと重ねて見てしまう。彼女が全力疾走するシーンもあ~ハーマイオニーの走り方や~とか思ってしまったり。とにかくエマワトソン(ハーマイオニー)ファンには心臓に悪いシーンばかり。でもエマファン目線で言わせてもらうと、前半のCAのユニフォームや60年代の服装をしているエマはめっちゃ可愛かったー。そんなデレデレ目線で見られるのは前半のほんの少しだけですが。
レナとダニエルの脱出劇は最後の最後、レナの同僚のパイロットが管制塔の離陸中止命令を無視して飛んでくれるまでハラハラドキドキでした。この2人のことについてはフィクションらしいので見終わってからそれを知って、なぁんやとちょっと思ってしまったのですが、登場シーンの少ないこのパイロットとレナの絆については前半にきちんと伏線が敷かれてあったので納得することができました。
このコロニアディグニダについては実はいまも全容ははっきりとは分かっていないようです。ピノチェト政権時代の行方不明者自体もはっきりと全容が分からない状態でそのコロニアディグニダはその一翼を担っていたということです。死の天使と呼ばれた悪名高いヨーゼフメンゲレもここにいたのでは?とウワサされているようで、この施設の特徴を考えれば彼がいたとしても不思議はないでしょう。映画の中でもダニエルはサリンの実験で殺されかける寸前でしたし、拷問の他にも人体実験も行われていたようです。
カルトが時の政権と利害が一致してしまうという最悪の事態に陥ったのがこの集団だったということなのでしょう。あー怖い。