シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

イニシエーションラブ

2016-09-16 | シネマ あ行

ケーブルテレビで見ました。公開当時面白いと言われていましたね。というか、原作がとても面白いと言われていました。

1980年代後半、合コンで出会ったマユ前田敦子とたっくんの恋愛物語。。。。

だったはずが、、、

見ていない人にはいったいぜんたいなんのことだか分からないこの「だったはずが、、、」です。

めちゃネタバレしますのでこれから見る方は読まないほうがいいと思います。この「ネタ」がすべて。という作品なので。

ワタクシはいつものごとく、すっかり騙されてしまいました。ミステリー系では必ず騙されるタイプですし、見破ることよりも騙されることを楽しむタイプです。(と言ってトリックを見破れない言い訳をしておきます)

物語はA面から始まり、恋愛に縁のないブサイクな男たっくんが人数合わせで呼ばれた合コンで純真そうな女の子マユと出会い付き合い始め、マユに言われてダイエットを決意するところまで。

B面は(痩せてカッコ良くなったと観客には思わせている)カッコいいたっくんが東京に赴任することになり、マユとは遠恋となり東京で美弥子木村文乃と二股かけるようになるまで。

というふうに見せていき、同一人物だと思っていたたっくんが実は別の人間でマユとの交際期間も微妙に重なっているということが最後の5分で明かされます。

後から考えると「A面」と「B面」の時系列のトリックについていくつかのシーンできちんと伏線というかヒントがちりばめられていたのですね。A面たっくんとのデートを断ったマユ、ルビーの指輪をしていたマユ、それを失くしたマユ、マユの日焼けのわけ、マユの家にあった本、「男女7人夏物語」「秋物語」が始まった時期。そういうことに鋭く気付く方には簡単なトリックだったのかもしれませんね。

映画的にはA面のたっくん(鈴木夕樹)森田甘路がB面のたっくん(鈴木辰也)松田翔太に比べてあまりにもブサイクなため、いくら痩せたからってあの子が松田翔太になるわけがない、と2人が別人だと見破った人もいたかもしれません。ワタクシは森田甘路という役者を非常にうまく選んだなと思っていました。確かに彼はブサイクだけど、痩せたら松田翔太みたいになる素質の顔をしていると思ったからです。松田翔太って典型的なハンサム顔ではないと思うし。

1人だと思っていたマユの恋愛相手の「たっくん」が別の人物だったことで「なぁんだマユって二股してたんだ」っていう感想に持って行かれそうですが、B面のたっくん(辰也)のマユの扱いは中絶させた上に暴力を振るい東京では別の女性と浮気というひどいもんだったし、東京に慣れてからはマユのことを小馬鹿にしていた感じだったし、マユがA面のたっくんにいってしまっても仕方なかったような気がした。観客はB面のたっくんはA面のたっくんの未来像と思わされているわけだから、あんなに非モテ系の男がダイエットしてカッコ良くなってその態度かよって思わせるためのB面たっくんの非道さだったのかな。

あー、見ていない方にはA面だB面だってワケ分からないですね。。。ワタクシの文章力がないばっかりに、うまくこのお話のトリックを説明できなくてすみません。

ワタクシは見事に騙されてそれはそれで面白かったんですが、ただこのお話が観客や読者を騙すためだけに書かれたものだということがちょっともったいないなと感じました。この物語に登場する人たちは勝手にそれぞれの日常を送っているだけで、別に誰も誰かに騙されたりとかはしていない。(二股や浮気以外は)登場人物の中に読み手と混じって騙されている人物という視点がもうひとつあれば、もっと面白かったような気がするのですが。どうやってそれやるねん?と言われてしまうとワタクシの頭では分からないのですが。

物語の舞台が80年代後半なので、懐かしいカルチャーがばかばか登場してその時代を知っている者としては楽しいです。エンドクレジットで「80年代図鑑」があったのも映画的な面白さとしては良かったと思います。