シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

スナイパー連続狙撃犯

2006-07-07 | シネマ さ行
2002年10月にワシントンDC近郊で実際に起こった連続無差別狙撃事件を追った作品。作品の始まる前と後両方に「この作品は事実を基にしているが脚色している」といった注意書きが2回も出る。この映画は事件の翌年に作られたものだし、実際の犯人の動機などがよく分からない状態であったこともあり、被害者や遺族、周辺住民への配慮だったのだろう。それにしても、翌年の映画化というのは随分早いもんだと思った。

お話は犯人を捕まえる側の警察、FBI、行政当局を中心に描かれているので、この犯人の心理だとか動機はあまり詳しくは語られず、その辺りに少し物足りなさも感じたが、これは実際の犯人の動機などが本当によく分からないという部分もあり、それを勝手に作り上げるわけにもいかないからある程度は仕方なかったんだろう。その犯人に脅かされる住民たちの恐怖感というのもイマイチ表現しきれていない部分もあったと思う。

しかし、物語の中心である警察署長チャールズS.ダットンの焦り、怒り、哀しみというものは十分に伝わってきたし、彼を取り囲む人々との摩擦や協力体制というものもうまく描かれていたと思う。馬鹿なマスコミの姿もきちんと描かれていた。(それでも馬鹿なマスコミは反省などしないだろうけど)

それにしても、実際のこの事件はあまりにも不可解で、テレビでニュースを見たときにはまたイカレた白人がやってるに違いないと思ったんだけど、(実際、こういう類の事件の犯人像のプロファイルは世界を支配しているつもりの白人の男と考えるのが定説だ)まさか、黒人が、(しかも一人は17歳という)捕まるとは思ってもいなかった。(誰かの犯行を隠すために黒人を犯人に仕立て上げたのだと主張する人もいるくらいだ)ワタクシはまったくプロファイルに当てはまらない黒人が逮捕されたことにもの凄くゾッとしたし、アメリカの犯罪史がまたまた悪い意味で進化してしまったと感じた。そして、それは他人事ではないということにも恐ろしい思いがした。

ワタクシの理解の範疇を超えていたこの事件の映画ということで、犯人の動機など何か新しい事実を知ることができるかと思ったが、その点については何も解決されないままだった。実際、分かっていないということなのだろう。そういう部分を抜きにして犯人追求に必死になる警察署長の姿にとても感銘を受けたし、犯人が分かっているのに最後まで緊張感を持って見ることができた作品だった。マイナーなのでレンタル屋でも探すのが大変かもしれませんが、もし見つけた方はぜひどうぞ。