天正十二年のクローディアス |
井沢元彦の短編集です。
全7篇ですが連作ではなく、それぞれが独立をしています。
葉隠の欺瞞、名探偵信長、黒田官兵衛の謎解き、埋蔵金の守り主、果心居士の悪戯、宮本武蔵の迷い、暗号と常識、そのテーマに関連性もありません。
おそらくは掲載雑誌も別々だったものがまとめられての一冊ではないかと、個々はなかなかに面白かったものの、まとまりに欠いていたのがもったいなくもありました。
タイトルにもなっている「天正十二年のクローディアス」は、沖田畷の戦いにおける龍造寺隆信、鍋島信生をハムレットに模して、作家と編集者の会話の形で進んでいきます。
その中で「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」、で名高い葉隠の欺瞞を暴いてく、為政者の都合のよさが浮き彫りとなっていきます。
ただ作家がレクチャーをするような展開がもう一つだったかなと、本筋とはあまり関係のない話が挟むことでテンポがよくありません。
この中では宮本武蔵の焦り、老いへの怖れ、が我が身に照らし合わせて読めば印象深かったかなと、人は気持ちの生き物です。
2015年8月20日 読破 ★★★☆☆(3点)