渡辺謙は好きな俳優ですので、出演作は脊髄反応で観てしまいます。
最近はすっかりとハリウッドに足場を築いた渡辺謙は準主役ぐらいは普通に手にするだけのポジションにいるようで、「インセプション」でもレオナルド・ディカプリオを食うぐらいの存在感を見せてくれましたし、この「シャンハイ」でも渋い演技でアピールをしてくれています。
時代劇俳優としての渡辺謙に慣れ親しんでいた自分としてはいつかはその時代劇に戻ってきて欲しいのですが、それでも日本人が世界で活躍をする姿を見るのは嬉しいです。
シャンハイ |
ただこの「シャンハイ」が映画としての質が高かったかと問われれば、素直には頷けません。
第二次世界大戦での上海が舞台なだけに残忍な日本兵といった描写が多いのは仕方がなかったのでしょうが、それでも気に入らなかったことは確かですし、それよりも何よりもどうにも語りたいはずのテーマが見えなかったのが最大の理由です。
追い詰められた中での愛を描きたかったのかもしれませんが、それにしては登場人物の心理描写が甘すぎました。
なぜにコン・リーの演ずるアンナがあれだけ男どもを惹きつけるのかも分かりませんでしたし、渡辺謙の田中大佐のセカンドラブも意味不明です。
その流した涙に至るまでのストーリーが完全に欠落をしているために感情移入ができなかったことも痛すぎで、何より佳境とも言える場面で渡辺謙の発した日本語の英訳のいい加減さに呆れてしまったと言いますか、あれで全てが台無しになってしまったと言ってもいいぐらいです。
またキーマンでもあったスミコ、しかしただのアヘン中毒者でしかない役柄に菊地凛子である必要があったのかとも思ったのですが、なかなか仕事は選べないのかもしれません。
この映画の米国、そして中国での評価が気になります。
あまりにステレオタイプ的な日本兵の描写が「フジヤマ」「ハラキリ」の流れに乗ってしまいそうですし、中国などでは反日の格好の材料になりそうです。
チョウ・ユンファもそうですが、これだけの顔ぶれを揃えながらもこんな映画しか作れなかったのかと思うと残念ですし、先の不可解な翻訳とともに思い出のような形で締めくくったラストシーンが消化不良すぎて、とにかく行間を読め的なストーリーにはついて行けなかった自分がいます。
2011年9月6日 鑑賞 ★★★☆☆(3点)
シャンハイ速くレンタル店に出ないかなと思ってました。
歴史にはほとんと興味ない自分ですが、最大の蛮行があったあの時代だけは別で、
珍愚書「我が闘争」をはじめ色々あの時代の事を描いた本を読んだ時期がありました。最大の衝撃は「夜と霧」でしたが、オリオンさんなら当然知ってるでしょう。
話はそれましたが、上海に住んだ事のあるゾルゲを題材にした映画や真田広之の出演した「上海の伯爵婦人」等々は無条件に面白かったです。
ビデオを期待されているようなのでネタバレは避けますが、とにかくテーマであるはずの愛についての裏打ち、背景の描写が甘すぎます。
渡辺謙の涙の意味が分かった人、たぶんいないのでは(苦笑)