タイトルマッチ |
馬が絡まない岡嶋二人です。
人さらいの岡嶋、とは聞きようによっては微妙すぎますが、馬だけではなく誘拐ものも得意としているだけのこともあって、数日間の攻防をテンポよく描ききっています。
ボクシングの元世界チャンピオンの生後十ヶ月の息子が誘拐をされて、その義弟で世界タイトルに挑戦をする選手にノックアウトで勝てとの脅迫状が届くところから話が始まります。
誘拐事件は金品の受け渡しが一番に犯人逮捕のチャンスであるところでの意外すぎる要求に翻弄をされる当事者と警察、手に汗握るスリリングな展開が見事でした。
作者はボクシング経験者らしく、その心理状態を上手く表現できていることがよいのでしょう。
実際にそうなのかは分かりませんが納得できるだけの描写ですし、そしてその心の動きが実のところ一番のテーマなのかもしれません。
ミステリーとしては序盤からあっけなくその動機を明らかにしてしまったことから複雑なものとはなりえず、誰が犯人かに焦点が絞られます。
いろいろなところに伏線をまき散らしすぎた感もありましたが、かなり据わりのいい落としどころではあります。
そして人のいい警察官がやたらと印象的だった、そんなタイトルマッチでした。
2013年8月15日 読破 ★★★★☆(4点)