オリオン村(跡地)

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原作は後にすればよかったかも

2012-12-04 23:10:28 | 映画

シリーズものは前作を観てから、原作があるものはそれを読んでから、そんなスタンスでこれまで臨んできたのですが、今回はちょっと失敗をしたかもしれません。
原作を読まなければ今ひとつ何だったのかが分からないシーンがあった一方で、しかしその原作とのイメージの違いや端折った箇所が気になってしまったのが正直なところです。
あるいはこの映画について言えば原作を読まずにフラットな状態で観た方がよかったのかもしれず、今後を考えると何とも悩ましい「のぼうの城」でした。

のぼうの城

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柴崎和泉守が受け持った長野口での戦い方が違ったぐらいで、かなり原作に忠実な作りとなっています。
それだけに145分と長丁場ながらもその全てを描ききれなかったのは当たり前の話ですし、独白のような描写が多かったので映像では難しかったのも分かります。
それでも幼馴染みである正木丹波守の視点からの「のぼう様」の将器こそがこの作品の肝心要だと思っていただけに、長親の名前を出した途端に城に入ることを受け入れた百姓や、長親を城代としたときに他の家臣があっさりと認めたときの丹波守の驚きと戸惑いをもっと前面に出すべきだったでしょう。
そしていい味を出していたものの野村萬斎の見せる鋭い表情のシーンがあまりに多すぎで、これでは「のぼう様」ではありません。
原作を読んでいなければあるいは能ある鷹は爪を隠す、のように違和感が無かったかもしれませんが、そこが最後まで引っ掛かってしまいました。

もちろん原作を離れれば、かなり楽しめた作品です。
正義感あふれる爽やかな石田三成を上地雄輔が、冷静沈着かつ剛胆な大谷吉継を山田孝之が見事に演じていましたし、やはり榮倉奈々はイメージが合いませんでしたが思っていたよりも悪くはなく、佐藤浩市に山口智充、成宮寛貴にお久しぶりの鈴木保奈美もしっくりきていました。
さすがにTBS開局60周年記念作品だけのことはある豪華なキャストで、エンドロールを見るまではナレーションが安住紳一郎であることに気がつかなかったのは不覚と言えば不覚でしたが、そのエンドロールで現在の忍城の遺構や正木丹波守が開基となった高源寺やその墓を紹介するところなどは一本とられた感じです。
水攻めのシーンはハリウッド映画に比べればチープながらもそれなりの迫力はありましたから、公開を一年ほど遅らせたことも頷けます。
ただ「この男の奇策、とんでもないっ!」をキャッチコピーにした時点で原作とはベクトルが違ってしまったのだなと、そんな気がする久しぶりの時代劇の映画でした。


2012年12月4日 鑑賞  ★★★☆☆(3点)

 

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5 コメント

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お返事 (オリオン)
2012-12-09 23:33:14
普段からエンドロールは最後までしっかりと観るのですが、今回はアドバイスをいただいたので普段以上に腰を落ち着けて最後までスクリーンに集中をしていました。
仰せの田んぼのシーンで小学生が歩いているのを見て「?」と思ったのですが、その後の史跡紹介にはなるほどと唸らされました。
ああいったのはいいですね、NG集とかだと興ざめをしてしまいますが、史跡巡りをしてみたいと思わせる手法だと思います。
模擬天守にいくつかの遺構としての門もあるようですから、いつかは行ってみたいです。
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エンドロール (ぎんなん)
2012-12-09 21:48:26
以前、映画の最後のスタッフロールを全部観てきてくださいねと書き込みをした、ぎんなんです。

のぼう様が石田三成に、田を元に戻すようお願いし、三成もそれを快諾し、兵が田を直すシーンがありましたね。そのあと、画面いっぱいに田んぼが出てきて、ああ、元通りになったのだな、よかったね、のぼう様。などと思っていたら、それがなんと現代の田んぼの映像だったのに、びっくり&感動しました。他にも、寺や道路案内などの現代のものが映され、ああ、歴史は脈々と続いているのだなと、じーんとしました。それをぜひ見逃さず感じてくださればなぁと思って、この前書き込みしました。

原作が先か、映画が先か、という話は難しいところですね。
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お返事 (オリオン)
2012-12-06 01:29:56
>ちゃさん
悩ましいですね、当たりのときもあるし、外れのときもあります。
今回も読んでいてよかったと思えるシーンがある一方で、そこを省くかとビックリしたシーンも多々ありました。
総合的には失敗したかな、といったところです。
そもそもテレビを見ないので「へうげもの」も見ていませんが、漫画の絵柄を見た感じではちょっと合わないかなとの食わず嫌いです。
いや、面食いなので(笑)

>ティックさん
そんな経緯だったのですか、知りませんでした。
そうなると脚本をベースに小説を書いたことになりますので、その肉付けは凄いと思います。
ああいった心理描写をもう少し出せれば映画もよかったのですが、難しいことは理解しています。
水攻めのシーンは水の押し寄せるところよりも、沈んでいく城があまりにミニチュアチックだったのが残念と言えば残念でした。
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Unknown (ティック)
2012-12-05 19:48:09
この作品に関しては、「忍の城」という脚本ありきの作品だったのだが、映画化にあたってスポンサーが集まらなかった。
原作がヒット作じゃなきゃスポンサーが集まらないなら、小説化して名前を売ってしまえばいい、という逆転の発想から出来上がった作品だそうです。
だからどちらが原作かと言われれば、映画が原作なのかもしれません。

確かに面白いんですが、映像がちょっとチープですよね。多分水攻めのシーンはもっとダイナミックに表現されていたんでしょうが、津波の影響で泣く泣くカットしたためなんか中途半端になってしまいましたね。
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ご覧になりましたか (ちゃ)
2012-12-05 08:13:07
 私も原作-映像の後先問題にはいつも悩まされます。前回の原作の解説の時、映画感想のコメントを書かせていただきましたが、その時のお返事を見て、今日のようなご感想をもたれるのではないかと何となく想像されました。私はまだ原作を読んでいないので、暮れの休みあたりに読んでみようかと思っています。後先逆になったオリオンさんとどんな感じ方の違いがあるのやら。
 ところでオリオンさんは「へうげもの」はご覧になっていますか。私はNHKアニメを見始めたのは15回を過ぎてしまってからなんですが、今同時併行で原作のまんが読んでいます。アニメは原作に忠実なので、モノクロの原作の茶器をカラーのアニメ映像でどう表現するのかという新しい楽しみ方を発見しました。もしご覧になっていなかったら、オリオンさん好みの作品かと思いますが。
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