オリオン村(跡地)

千葉ロッテと日本史好きの千葉県民のブログです
since 2007.4.16
写真など一切の転用、転載を禁止します

虚けの舞

2014-02-11 21:33:55 | 読書録

虚けの舞

講談社

このアイテムの詳細を見る

一般的には知名度があまり高くはない武将、北条氏規と織田信雄が主人公です。
そして華々しい戦国期の活躍を描いているのではなく、逆に没落後のその存在の虚しさ、血への責任がメインテーマとなっています。
血脈にこだわる自分からすればその武家としての命題への問いかけが重く、また最後の勝者は誰だったのかを深く考えさせられました。

天賦の才に恵まれながらも四男という立場から大家の舵取りを担うことができずに全てを失った氏規、兄の信忠が不慮の死を遂げたおかげで天下人にもなれる天運に恵まれながらもそれを生かすべくもなく落剥した信雄、この言葉が全てを表しています。
あるいは溢れんばかりの酒があっても枡が小さければ意味がない、も言い得て妙でしょう。
才能があっても運がなければ宝の持ち腐れとなり、運があっても才能がなければ指をくわえて眺めるばかり、それはどの時代、どの社会でも同じです。
氏規、あるいは信雄の「敵」であった豊臣秀吉は才能に恵まれ、また運にも恵まれたことで天下人となり、一方で氏規はその無謀さが分かっていながらも家中での発言力の弱さから秀吉の小田原攻めを避けることができず、信雄はその無能さから掌中の珠を取りこぼしました。
しかし侮蔑、屈辱にまみれながらも耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ氏規、信雄は小藩ながらもその家を保ったのに対して一時の栄華に酔った秀吉は結局は僅か二代で家を潰し、血脈を絶やさないという意味での真の勝者がどちらだったかは歴史が答えを出しています。
小田原攻めに際して韮山城で対峙をした氏規と信雄、この好対照な武将の組み合わせとフラッシュバックな展開も見事で、なかなかに胸に響く虚けの舞でした。


2014年2月11日 読破  ★★★★☆(4点)

この記事についてブログを書く
« 今年も頑張る | トップ | さあ紅白戦 »