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天使と悪魔、ダ・ヴィンチ・コードなどのシリーズで名高い、ダン・ブラウンのデビュー作です。
学者とヒロインという組み合わせはどこかロバート・ラングドンを思い起こさせますし、これがその第一歩だったのかもしれません。
暗号解読にかかる罠、騒動、倫理観など、これが1998年の出版と考えれば時代を先取りした洞察力はさすがで、新刊と言われても違和感はないのではないかと思います。
さすがにオチがあれでしたが謎解き、アクションがふんだんに盛り込まれていますから映像化もあってよいのではないかと、でもまずはロスト・シンボルでしょう。
あまりにご都合主義な偶然が多すぎる、などの批判も一部にはあるでしょうが、そうでなくとも日本人ならではの不満もあります。
いろいろと取り上げてくれるのは嬉しいのですが、なぜにその名前なのか、どこから引っ張ってきたのかが分からないようなエンセイ・タンカドは欧米人からすれば東洋な響きになるのかもしれませんが、トクゲン・ヌマタカもそうですし、モノグラムはあれど主要な人物だけに作者はともかく出版社がチェックをできなかったのかと思ってしまいます。
漢字や宗教などについても同様で、まあ日本人も異文化に対する理解はあれですが、作者に了解をとって翻訳の際に手を入れられなかったのかと思わざるをえません。
システム、あるいは機密データを管理する最高責任者としての判断も稚拙すぎで、実際の現場からすれば失笑ものとも言えます。
それはさておき、主人公とヒロインが心の繋がりはあれど全編を通してほぼ別行動だったのが面白く、それでいてテンポがよくそれを感じさせない不思議な作品でした。
2015年7月21日 読破 ★★★★☆(4点)