窓をあけたら、あまりに空がきれいなので、見とれて。
雲が流れて空がひらき、橙色のまどかな月が澄み渡る。
墨絵のような雲に月光がにじみ、散ってゆき、しずかにしずかに月の面。
和泉式部の歌。
暗きよりくらき道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月。
あらためて味わうと、彼女の心の深さが切実に感じ取れる。
ダイレクトすぎて、危うく「演歌」の世界かな、とさえ思う。
暗きよりくらき……和歌にしても、ちょっとくどい表現と感じるけれど、彼女の人生を思えば、たたみかける歌言葉が生きてくる。
式子内親王ならば、
しづかなる暁ごとに見渡せばまだ深き夜の夢ぞかなしき
こちらは抒情と祈りのあわいに、ゆとりがある。この方は、たぶん一生きよらかな女人だったのだろう。伝説はさておき。その心と歌は。
嵐の後で、今夜の月光、和泉式部が仰いだ月もこんな光だったのかと思う。
口をつくまま。