雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

月澄みぬむらさめ過ぎぬ残りなきかなしみゆゑに美しい夜

2008-05-20 21:41:17 | Weblog

 窓をあけたら、あまりに空がきれいなので、見とれて。


 雲が流れて空がひらき、橙色のまどかな月が澄み渡る。


 墨絵のような雲に月光がにじみ、散ってゆき、しずかにしずかに月の面。


 和泉式部の歌。


    暗きよりくらき道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月。


 あらためて味わうと、彼女の心の深さが切実に感じ取れる。

 ダイレクトすぎて、危うく「演歌」の世界かな、とさえ思う。

 暗きよりくらき……和歌にしても、ちょっとくどい表現と感じるけれど、彼女の人生を思えば、たたみかける歌言葉が生きてくる。

 式子内親王ならば、


    しづかなる暁ごとに見渡せばまだ深き夜の夢ぞかなしき


 こちらは抒情と祈りのあわいに、ゆとりがある。この方は、たぶん一生きよらかな女人だったのだろう。伝説はさておき。その心と歌は。


 
 嵐の後で、今夜の月光、和泉式部が仰いだ月もこんな光だったのかと思う。


 口をつくまま。


 

 

 

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夏笛のしのびに透(とほ)る夕べさらに雫も残るこよひ星月

2008-05-20 19:07:53 | Weblog

 夕映というほどでもないけれど、西の空、うっすらと茜いろ兆してうつくしい。


 明日は晴れるだろうか。


 

 今日、学んだこといろいろ。

 パセリを洗って、きちんと水を切り、ビニール袋にいれて冷凍しておく。

 凍ったまま、袋の上からもみほぐすと、ぱらぱらとパセリがみじん切りのようにほぐれる。

 わたしは、けっこうお料理好きで、自分でも上手だと思っていたけれど、じつは穴だらけの無手勝流だったとわかるこの日ごろ。


 きっと見かねてサポートしてくださっているこの方、いろいろこまやかな智恵を教えてくださる。うれしい。


 母にお料理をならったわけでもなく、自分で見真似、それから椿さんに要所は教えてもらって、いろいろちょこちょこ作っていただけだったから、あちこちへんてこな「目分量」。

 勘の良さを、椿さんは何よりもだいじにしていた。

 戦後、まだ十代の頃、彼は魯山人の使い走りみたいなことをしていたそうだから、男の流儀でおおざっぱなんだろう。

 たまに作ってくれる椿さんのお料理はおもしろかった。

 魯山人の思い出ばなし、仕方噺なども含めて。

 おもしろかったけれど、自分で作ったほうがおいしいと思った(ゴメンナサイ。


 

 いろいろ慣れないことが多くて困惑すること多いけれど、真っ向に叱り飛ばすでもなく、さりげなくカバーして下さる方たちの心づかい、ありがたいと思います。

 小松菜をゆがき、根元のちいさな若葉をていねいに水に放して色どめし、サラダに使ったりする、とか。

 鶏の皮つき腿肉をいためるときは、皮目を下にして焦げめをつけ、あぶらを鍋に浸み出させて、とか……。そういうこと覚えるのはたのしい。

 

 




 
 

 
 
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森の創口(きずぐち)あざやかにキリストは死なざらむ枝にかおりたつかな

2008-05-20 14:41:45 | Weblog


 嵐にずたずたになった森の枝が、吹き乱されて道路に散乱していた。


 山を迂回するバスどおりをめぐってゆっくり下ってくる。彼方にはたなびきはしる雲。そのはざまに真っ青な空が一瞬。


 ときおり、まだ名残の突風が、頭上の樹々をゆさぶって、ごおっと鳴る。


 暴風雨に痛めつけられた森の無数の切り口から、新鮮な匂いがあふれかえる。

 アカシアのような、淡い梔子のような。でなければジャスミン。

 葉っぱと花とひき剥かれた樹皮の、すがすがしくなまめいた香気。


 胸に透る森の匂いの快さは言いようがない。


 森林浴って、こういう空気を吸うことなんだろうと思う。


 癒し、という言葉。

 むざんな傷口をさらして復活したイエス・キリスト。


 
 嵐に蹂躙された緑陰を抜けながら思ったこと。


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胸うらをさらふ暴風いっさいの空白飛ばせ魂(たま)はくれなゐ

2008-05-20 08:36:48 | Weblog


 びゅっ、と虚空をつんざいて嵐がはしる。


 嵐。こころの滞りも吹き飛びそうな。


 海と空、地上をゆるがす風の咆哮。


 
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アルファポリス