ずっとあこがれていたこと。
書の道へ。
新緑に囲まれた閑静なお稽古場。
前回見学、実習は初めて。お道具ひととおりそろえていただく。
むかしむかし、祖母に筆を持たされたのは遠い記憶。
いろいろな書道具などは、実家を片づけるときに整理してしまった。いまさら惜しんでも、と大鉈ふるった。あとで母にずいぶんうらまれたが。
あらためて、ああ、文箱のあれこれ、など思い出すが仕方がない。先生のおすすめのもの、初心者としていただく。
先生は気さくな親しみやすい方。てきぱきと指導される。
文鎮は、金色のお猿さんのをいただいた。いかにも中国ふうの。
墨を磨る。
先生のご好意で金色の「菊萬世」を使わせていただく。
いいにおい。なつかしい。落ち着いた澄んだ墨の香りを呼吸すると、それだけで心が筆のなかに入ってしまいそう。
先生の腕のうごき、からだの流れ、無駄なく、リズムに乗って、添削の朱筆をふるわれる。
わたしはひらがなからはじめる。
小さい頃のことなど、すこしたずねられる。祖母に習ったのは子供の頃で……あまり覚えていないんです、とおこたえしたけれど、先生はなにか納得された様子。
午後の二時間半、あっというまに過ぎた。しあわせな時間。
今日、歩き出したあたらしい道。一生続けたい。