STRAWBERRY FIELDS FOREVER
海風がふきぬける。かすかに、潮のかおり。
それとも青葉の匂いだろうか。
午後、風がつよまる。たばねた髪は刹那ふきあげられ、帽子が飛んだ。
頂点に太陽。周囲の桜並木、緑蔭さやぐ。
藤井常世さんの銘歌が脳裏をかすめる。
身を刺すは若葉のしずく木莵(ずく)のこゑいま抱かれなば匂ひたつべし
格調のある歌風の方と思う。さわやかな……女歌。
五月の熱情。
さつき晴れ。
雨も曇りも、きらいなおてんきはないのだけれど、この五月の爽やかさ。
学生時代、民俗学を少し学んだ。この時期、田植にはうらわかい少女たちが豊作を祈って、最初の苗……早苗……を植えた、と。
それを早乙女。きれいな澄んだ響き。
彼女たちは「赤いおべべ」の盛装をまとうて、水田に降り立った。
訪れる穀霊を向かえる神の嫁として、ハレ姿。
そんなことを思い出す。
朱色。かげりのないあかるさ。
躑躅、さつき、まばゆい初夏に。