私は、大学卒業以来40年以上を国際政治学者として、また歴史家として国際政治や国際秩序の歴史を勉強してきました。平成24年の春に大学を去るに当たって自分なりの結論といいますか、今後背負っていかなければいけない学問上の大きなテーマだと思ったのは、「国際政治と日本の心」はどうすれば両立できるのだろうかということです。これほど難しいものはありません。 . . . 本文を読む
バターン半島を制圧した日本軍将校は、勝利の美酒に酔う暇はなかった。米比軍合わせて実に7万を超える兵士が続々と投降してきたからである。それはまた「バターン死の行進」という悲劇の始まりだった。予想だにしなかったおびただしい数の捕虜を、日本軍はバターン半島南端からサンフェルナンドまで移動させねばならなかったのだ。ところが日本軍には捕虜を護送するだけのトラックがない。したがってその移動は、徒歩以外に方法がなかったのである。 . . . 本文を読む
8月15日は先の大戦の戦没者を慰霊する日である。戦没者数およそ310万人、そのなかで未帰還遺骨の概数は100万柱以上に上る。戦禍がもたらした犠牲に言葉を失う。なぜ開戦は回避できなかったのか。回避できなかったとしてもなぜ早期に戦争を終結しなかったのか。犠牲者数を最小限にとどめることはできなかったのか。以下では日米開戦から戦争終結までの時期を対象として、これらの疑問を考える。 . . . 本文を読む
両陛下の靖国神社への行幸啓に何の支障もない環境を用意し奉るのが政府の責任だが、爾来歴代の内閣はこの重大な責務を怠り続けた。宮内庁の如き弱体な官庁の責任は敢へて問ふ気にならない。罪は政府中枢の懈怠(けたい)にあり、又対日戦争で痛めつけられた旧敵国の怨恨(えんこん)と悪意を毅然として遮断する策を執れなかつた外務省の怯懦(きょうだ)と不見識にある。政府や外務省の弱腰の究極の原因は所詮70年間我が国の知識人の心性を毒し続けた東京裁判史観による責罪意識である。 . . . 本文を読む
日韓関係を揺るがす重大事態が近く出現するのではないか。韓国の最高裁判所(大法院)が、日本企業を相手に韓国人徴用工らが起こした裁判で、日本企業の敗訴を確定する判決を近く下す可能性が高まっているからだ。現在、最高裁では三菱重工を相手にした2件の裁判と、新日鉄住金を相手にした1件の訴訟が係争中だ。2012年5月に最高裁小法廷が1審、2審の原告敗訴判決を「日本の朝鮮統治は違法な占領」などとして破棄する差し戻し判決を下した。13年7月、釜山とソウルの高裁で原告逆転勝訴判決が下され、三菱と新日鉄が最高裁に再上告した。 . . . 本文を読む
好きと嫌いとは理性以前のものだ。それだけに、そこには「相性」が強く作用する。評論家の山本夏彦は、俳優の長谷川一夫と都知事であった美濃部亮吉とは「全く相性が悪い」という。どんなふうに相性が悪いのか。 . . . 本文を読む
地域によっては41度を超える異常な暑さの中、政府は7月、2030年および2050年を見据えた第5次エネルギー基本計画(第5次計画)を閣議決定した。30年の満期を迎えた日米原子力協定も自動延長した。こうした中で国の原子力委員会は、新たな指針で「プルトニウムの保有量を減少させる」と公表し、岡芳明委員長は現在保有量が47トンを超えるプルトニウムへの懸念を示した。 . . . 本文を読む
【日下】 誰もいわないけれど、原子力発電は別の意味で計り知れないほどのメリットを秘めています。それについて一言、申し上げますと、原発を稼働させてできる使用済み核燃料のなかにプルトニウムがふくまれているのはご存じのとおりです。そのプルトニウムを再処理によって取り出し、二酸化プルトニウムと二酸化ウランを混ぜてMOX(モックス)燃料をつくる。それをウラン代替燃料として使うのを「プルサーマル利用」と呼んでいます。九州電力の玄海原発や四国電力の伊方原発などではすでに本格運転が実施されています。 . . . 本文を読む
最後に強く指摘しておきたいのは、平和に馴れた日本人はなかなか気づかないけれど、国家間における「戦争」はなにも武力戦だけではないということです。経済戦、情報戦、文明戦、思想戦……と、どれも戦争なのです。それが世界の常識です。 . . . 本文を読む
現代ジャーナリズムのなかで最もつまらぬものの一つに「人物論」がある。実に浅薄皮相で内容の空疎なものが多いが、論ぜられる人間や論ずる人間の浅薄皮相というよりも、それ以前に人間というものが容易に理解できないためであろう。しかし、その人間像が否応なしに鮮烈にうかびあがってくる時期がある。それは乱世だ。疾風怒涛の時代である。 . . . 本文を読む